中盤戦を終え、混とんとした人間模様に拍車がかかってきた連続ドラマ『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)。毎話ごとに明らかになる新事実に、視聴者は大いに翻弄されているが、今後の展開で注目していきたいのが、草彅剛演じる主人公・衆議院議員・鷲津亨の秘書として彼を支える私設秘書・蛯沢眞人の存在。演じているのは杉野遥亮だ。
最愛の息子が突然、瀕死の重傷を負ってしまった鷲津。事件なのか、事故なのか――困惑するなか、鷲津の恩人でもある政治家・犬養孝介(本田博太郎)から「事故として扱え」と圧力がかかる。
これまで犬養のためにどんなことでも行ってきた鷲津だったが、この理不尽な要求に断固抗い、復讐の鬼となる。犬養の懐刀であった政策秘書の虻川(田口浩正)を追い詰めると、犬養の息子・俊介(玉城裕規)、そして犬養自身も失脚させ、自身も政治家に。
そんな鷲津の力強い味方となるのが、彼の下で働いていた秘書の蛍原梨恵(小野花梨)と蛯沢だ。昨日の友が明日は敵になる魑魅魍魎とした政治の世界。そんななか、蛍原と蛯沢は鷲津のために尽力を尽くす。
なかでも兄が犬養の適当な対応により、死に至ったことで犬養を恨んでいた蛯沢は、同じ目的を持つ鷲津に対して忠誠を誓うが、ことあるごとに思いが揺れる繊細な役柄。視聴者にとって一番感情移入しやすいキャラクターであり、蛯沢の心情で物語を見ていくと、作品がよりエモーショナルなものになるという非常に重要なかつ難しい役柄を、杉野は純度の高い芝居で好演している。
蛯沢は第1話で犬養のパーティに出向き、強い不信感を抱き、“妄想”のなかで、生卵を犬養にぶつけるというインパクトある姿を見せるも、実際は何もできず――という弱めのキャラクターで登場すると、犬養の事務所で秘書として働くことになる。大学院の植物学博士課程を中退した青年は、植物の話になると場の空気を読まず熱弁を振るうなど、黒い部分は見せず、好きなものには夢中になるという純粋な面が強調される。一方で虻川からパワハラを受ける蛍原には「抗議した方がいいんじゃないですか」と心配するなど正義感の強さを見せる。