毎話新たな名シーンを生み出している金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系、毎週金曜よる10時)。
相変わらず事件は目まぐるしく展開していき、感情の忙しい金曜の夜が続いているが、感情の忙しさは、事件と絡みながら、グチャグチャで愛おしい人間の感情が丁寧に魅力的に描かれ表現されているからこそ。
先週第6話で反響の大きかった直木(佐藤健)と魚住(松山ケンイチ)の会話シーンは、泣けて、笑えて、共感できて。そのシーンごと抱きしめたくなるような、何度見ても胸を打つシーンとなっていた。
(以下、第6話ネタバレあり)
「あなたのことを好きな彼女が 僕は好きなんだ」
直木に「悠依(井上真央)のこと好きなんだろ?」と核心をつかれた魚住は、「いや…えっ?ちょっと何…」と必死でごまかそうとするも、もうごまかせない。「何で わざわざ自覚させようとするんですか しかも あなたが!」「ムカついてるからだよ!」と言い合う二人だが、直木の目は潤んでいる。
「この関係性 分かってて ピュアに好き ダダ漏れさせてんじゃねえよ!」という直木のセリフも、刺々しくは聞こえない。むしろ魚住のピュアな部分を認めているようで、ここで見せる二人の顔は、ただの恋のライバル同士の表情とは全然違って見える。
感情が高ぶり合ったかと思うと、魚住は直木に乗り移られないように目をつぶってわざとらしく横を向く。その様子はなんだかキュート。直木も「ああ ごめんごめん」と顔をしかめ、緊張の糸が少しゆるむ。
そこで魚住が告げたのは複雑な思い。直木のことだけを愛している悠依が自分は好きなのだと。
フッと笑った直木の目は赤い。笑ってから言葉を選んで発するまでのほんの少しの時間に、感情がぐるぐるとめぐっているように見える。「だから…好きなんじゃん」。言葉を発した後も、魚住を見る直木の目は優しくて寂しそうだ。
「俺は消える」という直木に、「簡単に言うんじゃないよ」と反論しながら、「悠依さんが あっ すいません 相馬さんが…」と言い直す律儀な魚住に、また張り詰めた糸を緩めてもらう。直木も「いいよ“悠依さん”で。ただし呼び捨てはなしな」と答えると、魚住が「(消えることが)怖くないの?」と聞く。二人の話す語尾から親しみが感じられ、直木と魚住の関係性がすごく縮まったシーンにも見える。