女優・モデル・ブランドプロデューサーなど、幅広い分野で活躍する鶴嶋乃愛が、1月5日より放送されているドラマ特区『あなたは私におとされたい』で主演を務めている。
今作で鶴嶋が演じるのは“ゼッタイに不倫させる女”立花ノア。共に主演を務める村井良大演じる“ゼッタイに不倫しない男”相澤直也との、理性と誘惑の攻防が魅力の作品となっている。
本作出演への思いや不倫というテーマについての考え、今後の展望などを鶴嶋にたっぷりと語ってもらった。
──鶴嶋さんにとってドラマの初主演作です。作品が決まった時の心境をお聞かせください。
初めての主演ということもあって、お話をいただいてすごくうれしかったです。不倫という、フィクションだからこそ楽しめるテーマを扱った作品なので、原作を読むまではどんな作品なんだろうと思っていたんですが、実際に読んでみたら、見たくないのに続きを見ちゃう、という原作ファンの皆さんがおっしゃる気持ちがわかるなと思いました。
露骨に過激なシーンがあるわけではなく、人間の本性と不倫との関係性をどんどん掘り下げていっているような印象を受けました。立花ノアちゃんという、魔性で小悪魔な、魅力的な女の子を演じてほしいと言っていただけたのがすごくうれしくて、精一杯、丁寧に演じさせていただきたいなという思いでした。
──不倫というテーマですが、原作漫画は楽しめましたか。
もちろん楽しかったですし、読み進める手が止まらないという気持ちはすごくわかるんですが、終始「こうはなっちゃダメだ」「こうはなりたくない」と思いながら読んでいました(笑)。
──不倫を扱う作品は、鶴嶋さんがおっしゃるようにフィクションだからこそ楽しめる部分があると思います。こういった作品が人を惹きつける魅力はどんなところにあると思いますか。
普段は、いわゆる不倫モノにはあまり興味が湧かなくて、まったく見ないんです。そういう作品で描かれる不倫は、お互いに好きで、ある意味、純愛だったりすることが多いイメージがあるんですが、今回の“あなおと”は全然違うんです。
ノアちゃんも直也さんも、別に好きなわけではないんですよね。作中でも「好きと欲しいは別物」とノアちゃんが言うように、あなおとの世界では、好きなわけではなくて、ただ欲してるだけなんだと思います。そういう、人の弱さとか孤独を暴いていくような作品なのかなと感じていて、私たちが今まで触れ合ってきたような不倫を扱った作品とは、少し違うのかなという印象を受けました。
──してはいけないことをしてしまう楽しさ、みたいな部分があるのでしょうか。鶴嶋さんは、ダメだと言われていてもやりたくなってしまうことはありますか。
私はダメと言われても、やりたいことならやるタイプだと思います。私がやりたいか、やりたくないかで決めたいですね。
例えば、私は本がすごく大好きなので、苦手だった数学の授業の時はこっそり机の下で小説を読んでいたことがありました(苦笑)。やりたいことにすごく忠実だし、集中し始めたら止まらないんです。ただ、道徳的に反することはやりたくないなと思います。
──それこそ、不倫とか。
そうですね。不倫とか、誰かの噂や悪口で盛り上がったりとか。そういうことは私の美学に反するなと思って生きてきました。
──正義感はしっかりあるということですね。
私、すごく正義感が強いんです。だから実は、ノアちゃんの気持ちが全く理解ができないんですよ。演じていて、すごく嫌悪感が生まれてしまうくらいです。
でも、カメラの前に立ってる時は立花ノアちゃんとしてしっかり生きていきたい、という思いがあるので、話が進むごとに嫌悪感が増していくのは、女優としては正解なのかなとも思っています。それはカメラの前で立花ノアちゃんとして生きられている証拠なのかなって。その分、オンオフのスイッチはしっかりと分けるようにしていました。
──それは、カットがかかった瞬間にオフになるということでしょうか。
カットがかかったら、役からすぐに離れて、お相手の村井さんと楽しくおしゃべりしていました(笑)。
そうじゃないと、自分自身が役に飲み込まれてしまいそうで怖かったんです。それほどノアちゃんというキャラクターに深みがあって、すごく魅力的だという証拠なんですけれど。
──演じている自分を見て、嫌悪感を持つってすごいことですよね。
はい。セリフや言い回しもそうなんですが、監督に「今の表情良かったよ」と言っていただけると、「あ、そんな顔してたんだ私、嫌だな」と思ったりします(笑)。そんな表情できちゃうんだ自分、みたいな。うれしいけど悲しいような気持ちです(笑)。
──共演の村井さんはどんな印象ですか?
村井さんは本当におやさしくて気さくで、こういうドロドロした作品ではありますが、カットがかかったらすぐ、楽しくお喋りさせていただいていたので、撮影期間はすごく助けられていました。
本当に明るい方で、年齢は離れているんですけれど、同世代かのように、一緒に盛り上がってくださいます。
──どんな話をしていましたか?
本当に取り留めもない話です。何が好きかとか、おすすめのご飯とか。あとはニックネームを考えたり。
──世代のギャップみたいなものはあまり感じなかったんですね。
そうなんです、まったく感じませんでした。ノリが近かったんですよね。私は村井さんのことを女子高生だと思って話していました(笑)。
──村井さんといえば、過去に『仮面ライダーディケイド』に登場する仮面ライダークウガを演じていらっしゃいましたが、鶴嶋さんも女優デビュー作となった『仮面ライダーゼロワン』でヒロインのイズを演じていましたよね。仮面ライダーという共通点については、お互いになにか話すことはありましたか?
撮影大変だったね、というようなお話はしましたね。あとは、ベルトはどんな形だったんですか、変身する時は何を入れるんですか、とか(笑)。
──鶴嶋さんは役作りのために、香水も買われたそうですね。他にはどんな工夫をしましたか。
まずは原作がある以上、ビジュアルはできる限り寄せたいなと思ったので、髪色も紫っぽい黒に染めました。立花ノアちゃんは本当に隙のない役柄で、いつでもメイクも完璧だし、香りも完璧なんです。完璧な女の子という理想像を常に保てるように、徹底していました。
あとはせかせかしないことですかね。不倫モノにありがちな、ベッドに押し倒すというような露骨な描写がないからこそ、日々の言動でどう妖艶さを出せるかを意識しました。露骨な表現をしなくてもにじみ出てしまう色気というのはなんなんだろうと私の中で考えて、せかせかした動きをしないこととか、目の動かし方などを丁寧に演じさせていただきました。
──今作の立花ノアは“ゼッタイに不倫させる女”として描かれますが、鶴嶋さんが“ゼッタイに〇〇させる女”だとしたら、なにか思い浮かぶものはありますか?
“ゼッタイに言葉づかいをきれいにさせる”ですかね。私は美しい言葉がすごく好きで、「マジ」とか「〜じゃね」というような言葉をつかっていた学生時代からのお友達も、今ではまったく使わなくなっていて、「乃愛ちゃんのおかげで言葉づかいがきれいになった」と感謝されるんです。だから私と一緒にいたら、言葉づかいがきれいになります(笑)。
──それは素敵ですね。周りの流行り言葉に引っ張られてしまうようなことはないんですか?
ならないですね。周りがどうであろうと、私は私なので。皆さんもそうだと思うんですけど、関わる人って選べるじゃないですか。一緒にいてあまりにも気になるようなお口の悪さだったら、私も距離を置きますし。やはり一緒にいて、お互いを大切にし合える人って、引き合わせあうんじゃないかなと思います。
周りの人って自分の鏡なので、自然とそうなっていくんじゃないでしょうか。だから、私とすごく仲良くしてくれているお友達で、言葉づかいが悪いような人はあまりいないかもしれません。
──2022年についても振り返っていただきたいと思っています。どんな一年でしたか。
2022年は今までで一番いろんな役に出会えた年です。まだ解禁されていない作品を含め、様々な役に出会わせていただきましたし、2023年は1月から“あなおと”という初めての主演作でスタートを切れるという素敵なことを成し遂げられたので、2023年に向けて良いスタートを残せた、素晴らしい一年だったなと思います。挑戦的な役も多くて、私にとっては、怒涛の挑戦続きの一年でした。2022年で学んだことを生かして、さらに2023年も学び続けていきたいと思っている所存です。
──先日行われたオスカー所属女優さんの晴れ着撮影会では、自分で紡いだ物語に自分で出演したいというお話もされていました。
まだ何も決まっていなくて、本当に私のただの夢なんです。もともと本を読むことがすごく好きで、詩などを書くこともすごく好きなので「こういう物語を書きたい」という案はたくさんあるんですが、それを起承転結の物語として紡いでいくという作業がなかなか難しくて。そこは本当に作家さんを尊敬する部分でもあるんですが、どういう風に繋げていけばいいのか、どういう風に物語の山場を作っていけばいいのか、など、色々と考えるのもすごく楽しいです。けど、作品の撮影に入っている時はその作品のことを考えたいということもあって、難しくもあります。
いつかは、自分で紡いだ物語の中に、私にしか演じられない役を作れたらいいなと思っています。そしてインタビューで「この役は私にしか演じられません」と言えるようになったら、素敵だなと思います。
──撮影に入っている時はその作品のことを考えたいとおっしゃいましたが、鶴嶋さんは女優にモデル、さらにはファッションブランドのプロデューサー業もされるなど、様々な活動をされていますよね。一つの物事に集中しようとすると、たくさんのことをこなすのは難しいようにも思えます。多くの活動をする上で鶴嶋さんが大切にしているのはどんなことですか?
全部を通して一貫しているのは「表現をすること」なので、私はいろんな活動させていただく上で、いつも自分のことを「表現者」と言わせていただいています。表現者として、作品の撮影中はもちろんその作品のことを考えたいとは思っていますが、例えば今回のようなドロドロした作品で、一旦目を背けたい時、嫌悪感に襲われそうになった時の帰り道などには、一旦プロデュース業の方に頭を切り替えたりするんです。色々な活動をしていることによって、逃げ道というわけではないですが、脳を切り替えられるんですよね。
違うドアがいっぱい脳の中に備わっているので、そこはうまく切り替えています。すべての活動が私の好きなことなので、女優業で疲れたらプロデュース業で息抜きして、プロデュース業で疲れたらモデル業で息抜きして、モデル業で疲れたら女優業で息抜きして、というような感覚です。
──なるほど。大変そうだと思っていましたが、鶴嶋さんにとってはたくさんの活動がかえって息抜きになることもあるんですね。
そうなんですよね。やはり作品のことだけを考えてしまうと、今回のようにディープな作品だったらなおさら、どんどん沈んでいってしまうこともあるかもしれません。私はいろんなことをやっていますし多趣味でもあるので、リラックスする場所があるのはすごく良かったなと思います。
──では最後に、ファンの方へ2023年で楽しみにしていてほしいことがあれば、ぜひ教えてください。
コロナ禍になってからお会いできる機会もすごく減ってしまっていたので、2023年はたくさんお会いできる機会を作れるようにしたいと思っています。
あとは表現者として、皆様の心の中のキラキラとした花を咲かせられるような存在でいたいなということが私の目標でもあるので、見ているだけで夢を見ているような気分にさせられる表現者になりたいなとすごく思います。そしてより身近に感じてもらえる機会を増やせる2023年にしていけたらいいなと思っていますし、私のことを知らない方にも、見つけていただけるような一年にしたいです。
取材・文・撮影:山田健史