『silent』名シーンで描かれる“過去”の意味、目黒蓮が見せる明暗と想い

TV 公開日:2022/11/17 2
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「プレゼント 使いまわされた気持ち」。
奈々(夏帆)が想(目黒蓮)に、“同じ”という手話を教え、それを想は何度か真似して二人で同じ手話をする。“お好み焼き”という手話を想が紬(川口春奈)に教え、紬が真似して二人で同じ手話をする。


「奈々と手話だけで 話せるようになるのを目標にして手話覚えた」「奈々にだけ伝わればいいから」と想に笑顔で言われた時の奈々の横顔は、恋する女の子の顔。想の心を溶かすポジションにいるような気持ちになるのも無理はない。
「18歳で難聴になって23歳で失聴した女の子」であるくらい、自分よりももっと想と同じ境遇の相手になら諦められたかもしれない。お気に入りのハンドバッグを手に持ち、スマホで通話しながら互いを探して落ち合って、横に並んで歩きながらハンドバッグを外側の手に持ち替える。そうして、手を繋いで話しながら歩くことは夢に見るほど憧れるけれど、それは恋が実っても叶わない。紬にはそれができる。湊斗と手を繋いでデートする様子も奈々は見ていたはず。


「想くん どんな声してる?」「電話したことある?」と、どんどん自分がつらくなる質問を紬にぶつけ、想には「あの子に 聞こえない想くんの気持ちはわかんないよ」と言ってしまう。聴者もろう者も“同じ”だと言っていたはずなのに。


圧巻のラストシーン。自分が見た夢と似たシチュエーションで、想からかかった電話に出て耳をあててみるが、響くのはバイブレーターの振動だけ。奈々にその現実が押し寄せ、涙がまた湧き出る。想に抱いてきた想いの深さや、夢見た憧れの強さ、叶わないつらさが、セリフも手話もないシーンで痛いほどに伝わる。「夏帆の演技」がトレンド入りするほど視聴者の心を震わせた。


そんな奈々を目の当たりにし、想はどう反応するのか。二人の様子を少し離れたところで見ていた紬(川口春奈)はこのあとどう心が動くのか。


名シーン・名演技が深い印象を残し、その思いが丁寧につながっていくドラマ『silent』。今夜の第7話もじっくりと味わいたい。


文:長谷川裕桃


前回のレビューはこちら

【第7話レビュー(第8話あらすじあり)】『silent』目黒蓮のハグシーンが回収する温かさ、視線の会話と“まっすぐ”な言葉


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