『silent』名シーンで描かれる“過去”の意味、目黒蓮が見せる明暗と想い

TV 公開日:2022/11/17 82
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奈々との出会いで光が見えたとは言え、聞こえる自分を忘れることはできない。結局、聞こえる人とも聞こえない人とも距離をとり、近づくのを恐れていた想(目黒蓮)が、「近づいてしまった今は もう離れたくないと思ってしまう」相手が紬(川口春奈)だった。想のモノローグとともに流れる過去を引き継いで、画面にそっと映り始めた紬の顔。一緒にいる想の笑顔がいきいきとしている。


この独白の流れをみると、奈々と出会ったあともやはり人と距離をとり、本当に“近づく”という感覚になったのは紬に会ってからなのではないかと思える。焼肉店で、「俺に感謝してるでしょ」と湊斗がスマホに向かってちょっと意地悪な顔をつくって言った時も、想は真面目にうなずいた。紬のことを「まっすぐ見てくる感じ。性格も」と話すと、湊斗から「“どんな人?”って聞かれたとき 好きな人のことだと その人の好きなところ言っちゃう」と言われ、次に紬と会った時には「ほんとにまっすぐ見て来るよね」とそれを実感して嬉しそうだった。第6話は想の気持ちが紬に向かっているような描かれ方。耳の病気になってから、人とずっと距離をとり続けていたのだとしたら、紬を好きで別れるという選択をしたときから、想の気持ちの方向は何も変わっていないのかもしれない。


しかし、紬はというと想と離れていた8年間の中で、湊斗と付き合い幸せな時間も過ごしてきた。第6話では紬と湊斗の過去を物語るシーンも印象的で、第5話を補完して、とても大切な思い出にしてくれたような感覚があった。湊斗(鈴鹿央士)のマンションに紬の弟・光(板垣李光人)が来て言う。


「ありがとね 湊斗君。視界に入り込んでくれて」「この3年あっての姉ちゃんだから」。それを言う光の背中、椅子から立ち上がる様子、視線をすっと上げる感じ。光がちゃんと伝えたい思いを、やさしさ成分100%の笑顔で湊斗は受け取った。


湊斗側からその過去を伝えるのは、春尾先生(風間俊介)。「この3年。すごく楽しかったそうです 湊斗君」。第5話で紬は湊斗と付き合った3年間について「居心地よかった」「この3年間 ずっと一番好きだった」と湊斗に言葉で伝えたが、湊斗が3年間について言葉にしたのは、第5話の序盤で紬に別れを改めて言うときに言った「正直 ずっと不安だった」が最後だった。紬が“ぽわぽわ”している間、湊斗は不安だけだったのか。春尾先生が紬に伝えた「すごく楽しかった」という湊斗の言葉に救われる。


主成分優しさの湊斗が、焼肉店で想から奈々(夏帆)のことを「二人で会う唯一の友達」と聞いて、「え~ 俺は? ねえ 俺は?今 2人で会ってるんですけど~」と悪態をつく様子は、もはや可愛さしかないのだが、もしかしたらこんなふうにまた想と話せることに、はしゃぐ気持ちもあったのかもしれない。「俺に感謝してるでしょ?」という問いに想がうなずいたとき、湊斗は「フッ」と笑ってしまうが、想が素直に今思っていることを伝えてくれたことが嬉しい気持ちも混じっていたのではないだろうか。想像の余白を残しながら、第5話での別れの足りないピースが第6話で補われていったように思う。


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