『silent』名シーンで描かれる“過去”の意味、目黒蓮が見せる明暗と想い

TV 公開日:2022/11/17 73
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silent」の題字を含め、まるで1枚の絵のように美しく映されるドラマ『silent』(読み:サイレントフジテレビ系)のタイトルバック。第5話では親友の傍らで涙する紬(川口春奈)の姿が、第6話では自転車を押す想(目黒蓮)の後ろ姿が映されていた。第5話でほぼ一話かけて描かれた紬と湊斗(鈴鹿央士)の別れ。その間、想にも流れていた時間がある。その想側の時間がメインで掬い取られたのが先週の第6話。
「つらい」「切ない」…放送後、そんな思いになりながら、同時にパズルが埋まっていくような一種の“気持ちよさ”が押し寄せる。それは、緻密で丁寧な脚本・演出とキャストの印象深い演技あってこそだろう。




第6話で最初に描かれたのは、想が大学生だった頃の“ただ 誰かに聞いて欲しかった”耳が聞こえない苦しさ。想を演じる目黒蓮(Snow Man)の目や佇まいからその苦しさがにじみ出る。補聴器を付けている想に、友人が急に耳元で大声で呼びかけたり、自転車に乗っていると「イヤホン ダメだから」と警官が呼び止めたり。その友人にはフットサルの誘いを断って「ごめん」と愛想笑いをして、警官には、補聴器だと説明しながらも「すいません」と謝り自転車を押して歩きだす。想の目からどんどん力がなくなっていく。自転車を押す後ろ姿はとても寂しい。この2つの日常の光景で印象的に描かれた、まだ声で話していた時の想の視点。音がなくなることが悲しい。その苦しさを静かに聞いて、「音のない世界は悲しい世界じゃない」と導いたのが桃野奈々(夏帆)だった。


就活支援セミナーでの奈々との出会いのシーン。「耳の病気が分かって それまでの友達は みんな 一方的に縁を切って」と想が明かすと、奈々が少し驚いたような表情を浮かべる。その視線に、想は不安や恥じらいの混じった表情を見せて、自嘲気味に笑って「すいません」。一瞬暗い表情を浮かべた後、「すいません 暗い話して。」とまた笑ってみせる。謝って、ごまかすように笑う。その笑いは、相手に気を遣わせない優しさでもあるだろうし、どこかあきらめたような投げやりさにも見える。そんな想の気持ちを溶かすように、奈々の表情や空気から安心感が漂う。


奈々は生まれつき耳が聞こえない。でも「幸せ」だという。セミナーの資料の隙間に奈々が書く。「音がなくなることは 悲しいことかもしれないけど、音のない世界は、悲しい世界じゃない」。想の気持ちをそのまま受け止めながら、その先の未来を照らす言葉。「悲しいこともあったけど 嬉しいこともいっぱいある」「それは、聴者もろう者も同じ」。そうやって想は、“同じ”という意味の手話を奈々に教わり、嬉しそうに真似た。おそるおそる話をして、本音を話して、未来に希望を見る。第6話の約10分を使って、想と奈々の出会いが大切に描かれた。だからこそ、“同じ”と教えてくれた奈々が「誰も分かり合えない」と言ってしまう未来が来てしまうことが切ない。


想の過去を物語るのは、想だけでない。家族もまた苦しい思いをしてきた。想の実家では母・律子(篠原涼子)が捨てようとした想のCDを「じゃあ 萌がもらう」と妹の萌(桜田ひより)が自分の部屋に運ぶ。それを律子に内緒で手伝う父。「バレたら怒られる」「浮気と一緒だ~」と明るく冗談を言って笑い合ったあと、萌がCDの入った段ボールを開けると、割れたCDケースが目に入る。泣きそうになる萌の頭を父がポンポンと優しくなで、波紋のようなピアノの音と溢れてくる萌の涙。必死でほほ笑もうとして泣くのをこらえても溢れ出る感情に、想の苦しさとそれを見て来た家族のつらさが一瞬で伝わってくる。捨てようと言った母もまた、これまで何度も同じような難しい選択をたくさんしてきたのだろう。


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