『silent』だから味わえる揺れ、目黒蓮が瞬間的に映し出す内面

TV 公開日:2022/11/10 0
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「顔見て話したい」
第2話で何度もそうメッセージを送ったのは紬だった。手話を覚えて、想とメールではなく顔を合わせて話したいと。しかし、第5話では「会って話がしたい」と想が紬にメッセージを送る。そのシーンに想のセリフはないが、メッセージを打った後に前を向いた想の目には力がこもっていた。そして「顔見て話したい」と会いに来た。その瞳はとても真っすぐで意志を感じる目。紬は春尾と話したときは「片思いになった」という言葉だったが、想には「別れた」という言葉を使っている。また少し心情が移り変わっている。でもまだ「佐倉君の顔 見て 話すのつらい」。その言葉に対して、想は言葉ではなく手話でもなく、戸惑いと苦しさと納得が入り混じったような複雑な表情だけで返事をした。



実際に通話した状態で撮影されていたことが明かされている紬と湊斗の電話シーン。紬がハンバーグを作っている時にかかってきた電話で、弟の光(板垣李光人)が気を利かせて椅子を用意してから、紬は「湊斗さあ」と話しだす。それまで「あっ…やっほー」と明るく繕い、自分は「元気過ぎる」と強がるように言い聞かせるように伝えていた紬。“ふわふわのついたピン”が100均であることを湊斗が知っていると分かっていても「そのヘアピン 100均だから」と言って捨てて大丈夫だと伝える。そんなぎこちなく繕ったような会話が、「湊斗」呼びしたところから本音で話すようになる。「湊斗の横にいるときずっと 私なんかぽわぽわしてたと思う。わかる?ぽわぽわ。好きだったよ。戸川君のこと 好きだったよ。この3年間 ずっと一番好きだった人だよ」。本音を語る中で「戸川君」と呼ぶ。このセリフの流れが、紬が本当に湊斗を好きだったことと、それを過去形にする決心をした心情の移ろいを感じる。「うん」「うん」と言って聞く湊斗は涙し、電話が終わった後も紬の好きなパンダの抱き枕の横で、自分から電話を切らない湊斗について話す光と紬の会話を愛おしそうに聞いている。「ずっと不安だった」「俺が無理」と言っていた湊斗もやはり3年間は幸せで、これからも紬と想に優しくできる未来があると信じたくなった。
ふわふわのついた紬のピンは、付き合い始めた湊斗と紬が互いを下の名前で呼ぶよう頑張ると言い合ったときの幸せな思い出のピンで、好きな人=湊斗からの威力のある「カワイイ」という言葉をもらったピンだ。湊斗の寝顔から挟まれた回想で、そのことがわかった。そのピンを湊斗はゴミ箱に捨て、次の朝を迎えた。


何か他のことに目を向けたり、突然心が変わるきっかけや瞬間が訪れるのではなく、別れを告げられた紬が少しずつ受け入れていき前を向く。「声で話せるのに伝わらない」と言っていた思いを最後にしっかり伝えて。


そうやって時間をかけて大切に描かれた紬と湊斗の別れ。二人の恋が大きくて深い愛だったと噛みしめてからのラストシーンで、想の強い決意とキラキラした目が、物語を前へと向かわせる分岐点のように見えた。


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