第8話、サブタイトルは「信じること」だった。永瀬が契約しようとしている相手が「地面師」と呼ばれる詐欺師なのではないか。登坂社長(草刈正雄)は最初「この話 信じていいと思うか?」と永瀬に問う。「信じていい」と答えた永瀬に、社長は案件を託した。しかし、結局地面師だったことが判明する。登坂社長(草刈正雄)自身も過去に地面師に騙され、その全責任を負わされた経験があった。最初から地面師かもしれないと気付いていた社長がなぜ自分に判断を任せたのか、永瀬が問うと社長は答えた。
「地面師に騙された私でも 永瀬を信じた私が責任を取れば済むことだ。永瀬。そもそもわたしは13年前おまえにかけた。人を信じるということは相手に全てをかけるということだ。裏切られたとしても それは かけた自分の責任でしかない。今更 そんなことを聞くなよ。」
ドラマでは第7話で、若かりし頃の永瀬が丁寧に描かれていた。登坂社長に助けられ不動産屋を目指すことにした大学生の永瀬は「この登坂不動産を 日本一 いや…世界一の不動産屋にしてみせます!」と社長に宣言していた。時を経て発した同じセリフには、その間に積み上げられた社長と永瀬の信頼関係の厚みがある。しかも、13年も前から社長は永瀬に「全てをかける」覚悟でいたことを当たり前のように言い、その大きな信頼を受けて永瀬はもう一度、嘘がつけない体で同じセリフを言うのだ。
第9話は、カスタマーファースト(お客様第一)の精神でひたむきに営業する月下と、悪質な手を使うミネルヴァ不動産で志をもって働く花澤の闘い。「富士山が見える」という条件で、息子夫婦と住むための物件を探す夫婦。夫婦にとって大切な存在である富士山。その希望をなんとかかなえようと頑張る月下だったが、夫婦が契約することにしたのは、花澤が提案した3年後にタワーマンションが建って富士山が見えなくなる物件だった。決め手は孫の存在。自身も子を持つ母親である花澤は、富士山が見えることよりも、子どもを育てやすい環境を重視して提案していた。花澤のこれまでの人生や覚悟も知り、月下は「私なんかが勝てる相手じゃなかった」「人間としての厚みが違う」と負けを認める。
バカ正直に永瀬は、「1000%勝てないだろうな」「覚悟が違い過ぎる」と言ったうえで、「ただ、比べる必要もないと思う」「そもそも 俺たちが向き合うのは 他の不動産屋じゃなくて お客様の方でしょ」と言って、月下のカスタマーファーストと言い続けることを肯定する。永瀬と月下のやりとりは、やはり微笑ましい。永瀬の言葉に月下の目は潤む。このドラマ、福原の潤んだ目に何度泣かされたか。それでいて、永瀬が熱すぎないことも一つの魅力だと思う。上司として淡々と部下に大事なことを伝え、「月下がバカみたいにカスタマーファーストって言い続けること 素晴らしいと思う!」と人差し指を立てて飲み屋のノリで冗談めかす。でも、「そのままでいいよ」はとても自然な口調。人懐っこい愛情ものぞく。その過不足のなさが山下智久は絶妙だ。
毎話深まる『正直不動産』の感動。その回のテーマやこれまでドラマで丁寧に描かれてきたストーリーがつながって、終盤にはその分の厚み・深みがどんどん加わっていく。永瀬の決めゼリフは、それが間違いないとハンコを押してもらったような気持ちになる。そして、第8話の社長と永瀬の会話や、第9話で永瀬が月下にかけた言葉は、視聴者にとっても救いと感じられるような温かい言葉。それが、決して押しつけがましくなく、ちょうどいい温度の芝居で届けられる。
まだまだ見ていたい『正直不動産』も今夜が最終回。NHKドラマ公式Twitterでは、最終話について「最後の1分1秒まで、これぞ正直不動産!」という番組担当のコメントも紹介されている。最終話には、第1話に登場した山崎努(「崎」はたつさきが正式)も登場する。
これまでの『正直不動産』の1シーン1シーンをたくさん思い起こしながら、最後まで味わいたい。
文:長谷川裕桃
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