「私 嘘がつけない人間なんです。」
毎話終盤でおとずれる、あの深い感動は何なのだろうか。
火曜の夜に視聴者の心を楽しく優しく温めてきたNHKドラマ10『正直不動産』も7日、ついに最終回。番組への多くの反響から、三度目の再放送や最終話翌週の特別番組の放送も決まり、視聴者からはロスの声やシリーズ化希望の声が高まりを見せている。
嘘もいとわないセールストークで成績No.1を維持していた登坂不動産の営業マン・永瀬財地(山下智久)が、“たたり”によって嘘がつけない体になってしまい、毎話決めゼリフのように「私は嘘がつけない人間なんで。」と言う。この設定が、こんなに回を追うごとに感動を深く増幅させていくなんて。ドラマの放送が始まったころは、正直なところ想像が及ばなかった。しかし、ドラマ終盤になるほど、この設定がどんどん効いてきて、ファンタジーとか特異な設定とか、そういうことではなくて、メッセージを伝えるために必要不可欠な一部分なのだと気づかされた。
第8話のラストシーンは登坂不動産の社長室。
永瀬「社長。おれこの会社入ってよかったです。必ず 日本一…いや 世界一の不動産屋にしてみせます!」
社長「本当だな?」
永瀬「私 嘘がつけない人間なんです」
聞きなれたセリフ、涙はなし。でも、もう胸アツ。
第9話は、居酒屋。ライバル会社・ミネルヴァ不動産の花澤(倉科カナ)に営業で完敗し、落ち込む月下(福原遥)に永瀬が言う。
永瀬「そのままでいいよ。月下は 必ずいい営業になる。俺が保証する。」
月下「それ 本気で言ってます?」
永瀬「うん。だって 俺 嘘がつけない人間だからさ。」
そりゃあ、月下にとっては泣くほど嬉しい言葉。
「この会社入ってよかった」「世界一の○○にしてみせます!」「そのままでいいよ」「○○は 必ずいい営業になる」…この字面だけを追っても、深い感動があるかは、それほど伝わらないかもしれない。場合によっては、相手の機嫌を取ったり、その言葉を言う自分に酔っていたり…なんてことだって考えられる。ただ、永瀬が「“たたり”によって嘘がつけない体」だということで、その余計な懸念はまず払拭される。その言葉は繕ったものではなく本音であり、永瀬の言葉の“説得力”を生む。
でも、それだけで永瀬の言葉が深い感動を生むのだろうか。