堤真一主演の金曜ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系、毎週金曜よる10時~)。10年前に事故で亡くなった妻がある日、10歳の小学生の姿で現れる。そんな特異な設定を、キャストの上質な芝居と絶妙なバランスで展開するドラマの魅力で視聴者を引きこみ、毎週ほっこり笑って、じんわり泣いて、ハラハラして…続きが気になる金曜の夜を届けている。視聴者からは「登場人物全員、演技が上手すぎる」「今はまっているドラマ」「今期1番面白い」という声も。
このドラマには不思議なバランスがある。
妻の生まれ変わりである万理華(毎田暖乃)が母・千嘉(吉田羊)に大事にされていないと知り、ピンチを察して家に乗り込み、「あなたが彼女を大事にしないなら、彼女は僕が引き取ります!!」と鬼気迫る表情で言い放った圭介(堤真一)だったが、千嘉に「はぁ??」と言われて我に返る。千嘉からして見れば、自分の娘を赤の他人に急に引き取ると言われても「?」しか浮かばないのは当然。万理華をかばおうとして余計なことを言い、万理華からも千嘉からも「もう黙って!!」「あんたは黙ってて!!」と𠮟責が同時に飛んでくる。緊張と緩和は隣り合わせ。緊迫した場面が少し愉快なことになっている。
万理華は家から追い出され、隣人からは「警察に通報しましょうか」とまで言われる事態。千嘉の方は「勝手にしろよ…」と玄関で泣き崩れる。どんより暗い展開が続くかと思えば、まずは圭介が万理華に「どんだけ空気読めないの?」と怒られ、圭介は「えぇぇぇ…。え?僕…?悪いの…僕…ですか?」。
娘の麻衣(蒔田彩珠)は万理華(ママ)がうちに泊まれることが嬉しい。ゲームをして一家団らん。
リビングに布団を敷いて3人で川の字。朝はママの味噌汁を味わって…と幸せな時間が流れる。
石田ゆり子が演じる貴恵も含め、家族の笑顔にほっこり笑って、この奇跡みたいな時間が続けばいいのにと願ってしまう。
CM前に流れる、貴恵が生きていたらこうであっただろう家族3人の幸せそうな映像に胸がキュッとなったり、いつか万理華の中の貴恵はいなくなるのだろうか…と秒針の音が気になってちょっと切ない未来を想像したりしながら、ドラマの核となる4人のほっこりする空間に身をゆだねていたくなる。切なさと癒しも隣り合わせだ。
「おかしいんじゃないの?」と千嘉は言い、神木隆之介が演じる貴恵の弟・友利も生まれ変わりは「起きない、絶対に。何度も夢に見て夢だったから。」と言い切る。友利はドラマオリジナルのキャラクターで、圭介や麻衣と同じような立場ではいるが、「都合よすぎない?もういない人ともう一度やり直せるって…。」とちょっと引いた視点を持っている。もしかしたらこの視点が、特異な設定と現実をなめらかにしていて、視聴者をおいてけぼりにしない存在になっているようにも感じる。
友利も、太陽みたいな姉を失って前に進めずにいる一人。この先新島家と絡んでいくことで、万理華たちへの感情がどう変化し、自分の人生を「もったいない生き方」ではなく前に進んでいけるのかも一つの見どころだろう。