『アバランチ』綾野剛、羽生に宿した“執念”視聴者へ届けたラストメッセージ

TV 公開日:2021/12/21 57
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昨年、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが広がり、ツイッターデモを起こしたように、一人ひとりの小さな勇気が、やがて社会を動かす風になる。たくさんの大切なことが、私たちのあずかり知らぬところでいつの間にか決められていたり。国家を揺るがす大問題でさえ、うやむやにされたまま、また別のニュースにかき消されたり。そんなことが当たり前に起こる今この時代だからこそ、『アバランチ』は一人ひとりの行動の重要性を訴えたかった。


最終回まで一貫してストーリーそのものはシンプルだった気がする。意外などんでん返しがあったわけでも、構成の妙があったわけでもない。でもそのシンプルさは、このメッセージをストレートに届けるためだったんだと思うと、なんだかとても納得できた。小手先の変化球ではなく、直球勝負。その渾身の豪速球に、最後は痺れるような気持ちにさせられた。


最終回も綾野剛は魂をぶつけるような演技で羽生誠一を生き抜いた。羽生の目は不敵なようで、実はとてもピュアだったと思う。たとえば、最終回冒頭の藤田(駿河太郎)と対峙するシーンでもそう。藤田に銃口を向けられた羽生は、絶体絶命の状況なのに、とても綺麗な目をしていた。あれは、人を信じている人の目だ。飄々としているようで、実はとても人間臭い。だから、血まみれの手でピースをする羽生を見て、どうか生きていてほしいと願う。架空の人物なのに、無事を祈って胸が苦しくなる。


その上で、久米(仁村紗和)に狙撃されたあとの顔は、鬼気迫るものがあった。大衆を前にした、言葉にならない咆哮。SPに取り押さえられ、地面に突っ伏す羽生。血まみれになりながら、ただ一心に郷原を見つめる。その執念は、狂気にも似ていて。炎が消える前に、一瞬大きくなるような、そんな気迫があった。


意識を失う直前、羽生は眉を寄せ、顔を歪める。あれは最後に笑ったのだろうか。それとも泣いたのだろうか。あの悲痛な顔が、今も鮮烈に焼きついている。



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