戦いが、終わった。巨悪に敢然と立ち向かい続けてきた『アバランチ』。その最終回は、つくり手たちが今届けたいメッセージが凝縮された45分だった。
※下記最終話、一部ネタバレあり
大山(渡部篤郎)の野望は打ち砕かれた。絶望的な状況から逆転勝利を掴み取った「アバランチ」。だけど、この作品らしいのは、ゴールを決めたのは「アバランチ」のメンバーではなく、その周辺の人たちだったということ。
押収した武器の横流しを公表した西城(福士蒼汰)の父・尚也(飯田基祐)。アバランチの真実を記事にした遠山(田島亮)。そして、大山を更迭した郷原(利重剛)。「アバランチ」は彼らにパスを送っただけ。一人ひとりがそのパスを受け取り、自分の意思でシュートを放った。
でもそれが「アバランチ」のやりたかったことなんだろう。世界は、自分たちの力だけでは変えられない。だけど、世界を変える力はなくても、隣にいる人の心を変えるぐらいのことはできる。そうやって人から人へ連鎖していけば、いつか「雪崩」だって起きる。いや、起こせる。
気づけば組織内の立ち回りばかりに腐心し、不正に手を染めていた尚也は息子の説得で目が覚めた。遠山の記者魂は、西城によって火をつけられた。昼行灯のようだった郷原は、意外に悪くないリーダーだった。彼らを動かしたのは、「アバランチ」の正義を信じる力。
終盤で語られた「アバランチ」のメンバーたちの告白が、このドラマのメッセージそのものだろう。自分が動いたところで何も変わらない。そうあきらめがちなすべての人たちへ、そうじゃないんだと。誰かが行動を起こすことで、また別の誰かも動き出せる。
沈黙や、無関心で、やり過ごすのはもうやめよう。世界を変えるのは、強靭なヒーローじゃない。声をあげられるのは、特別な強さを持った人だけじゃない。どこかから救世主がやってきて世界を変えてくれるのを待つのではなく、今、自分からアクションを起こしてみる。