この先の展開を予想しようとする視聴者の、裏の、さらにその裏をかいていくようなストーリーテリング。嫌な予感の半分は外れて、半分は当たった。『SUPER RICH』第10話は、そんな回だった。
※以下第10話、一部ネタバレあり
まるで第1話をリフレインするような冒頭のシーン。明かされる空(町田啓太)の生い立ち。衛(江口のりこ)のようにお金持ちでもなければ、優(赤楚衛二)のように貧乏でもない。中流家庭で生まれ育ち、周囲に迷惑をかけないように自分の気持ちを押し殺して、優等生然とした振る舞いを33年間続けていた。
そんな空が裁判所で証言台に立っている。宣誓を終え、決然と前を見据える表情に、てっきり空がスリースターブックスを告発したのだと思い込まされた。クライマックスから時系列を遡ってストーリーを辿っていくのは、『SUPER RICH』のお決まりだけど、今回はその構成がよく効いていたと思う。
実際、今回の『SUPER RICH』は穏やかすぎた。前回、「あなたに言いたいことが1500個くらいある」と難しい顔をしていた衛は、てっきり親に冷たい態度をとった優にマイナスな感情を抱いていたのだと思った。けれど、衛は「血がつながってるから大事にせなあかん、とは思わん」とし、「優くんには後悔してほしくないねん」とあくまで優の心情を慮った。
手垢まみれの説教に走らず、あくまで優を尊重し、優の味方であろうとする衛の態度は、非常に現代的でフラットだった。その上で、優は両親と対話を重ねることを決め、衛も病気について秘密にしていたことを詫び、闘病の身であることを社員に伝える決心をする。雨降って地固まる。亀裂どころか、むしろぎこちなかった2人の空気が一気に良くなった。