『消えた初恋』道枝駿佑×目黒蓮、視聴者を“正しく胸キュン”させる力量

TV 公開日:2021/12/18 66
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ところで改めて、胸キュンとは何だろう、と考えてみる。私たちが社会生活を営む上で、その濃淡こそあれ、人に惹かれることは誰もが体験することだ。そして私たちは経験的に、その惹かれる瞬間、幸福感を感じることを知っている。実際には、ドーパミン、セロトニン、オキシトシン、といった幸福感をもたらすホルモンが体内で分泌されている。しかし、そんな知識がなくても、また実際に恋愛の経験がなくても、幸福感を得る1つのツールとして、私たちは胸キュンを求めることがある。


そして、胸キュンが私たちの胸を正しくキュンとするには、胸キュンな場面を見たときに、それが私たちの経験と結びつく必要がある。つまり、胸キュンのシーンで、意図通りに胸がキュンとするには、そのシチュエーションが荒唐無稽だったとしても、しっかりとしたリアリティが必要となる。なぜなら、シチュエーションにおける背景や心情を、空想も含め、具体的に自分の体験に置き換えられないと、胸がキュンとする感情まで至らないからだ。


このドラマ『消えた初恋』は、確かに男性同士の恋を描いたドラマである。しかし、その1つ1つのシーンは、老若男女問わず、どこか胸をくすぐられるものが多い。


例えば、井田(目黒蓮)が青木(道枝駿佑)の頭に軽く触れるシーンがいくつもある。先日放送されたドラマの総集編では「井田ポン」と称して話題にしていたが、井田を演じる目黒が、シーンごとに綿密にスタッフと演出を確認し、意図を持って演じ分けたからこそ、「井田ポン」が単なるポーズに留まらず、それぞれの場面ごとに意味を持つ胸キュンに至っている。


また、井田が青木に対して「かわいい」「おもしろい」「ほっておけない」と伝えるシーンも数々ある。これは、青木の一生懸命さ、真面目さ、不器用さを、道枝がしっかりとリアリティを持って演じているからこそ、それを受けての井田の言葉に胸がキュンとするのだ。


胸キュンは、単にキュンとするセリフを言えば、胸がキュンとするわけではない。言葉を発する人の心情、言葉自体の意味、言葉の背景、それらが視聴者に正しく伝わり、その場面をリアルに想像させ、幸福を感じて初めて、胸がキュンとする。その意味で、道枝と目黒が、男性同士の恋愛というテーマを、人と人とが惹かれ合うように演じ、それが多くの人の共感を呼び、幸福感を与えたからこそ、このドラマ『消えた初恋』はこれだけキュンとするのだろう。


ドラマ『消えた初恋』が結末を迎えることを惜しむ声は、SNS等でも非常に多い。その大きな理由の1つは、多くの人の胸に、この作品でしか感じられないキュンとする要素があったからだろう。最終回、どんな結末を迎えるのか、そしてどんな胸キュンが最後に待っているのか、今から楽しみで仕方ない。


文:ジャニヲタおじさん


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