最後の戦いに向けて、ブーツの紐をきゅっと結び直す。『アバランチ』第9話は、そんな回だった。
※以下第9話、一部ネタバレあり
藤田(駿河太郎)は生きていた。生存の理由はわからない。わかっているのは、大山(渡部篤郎)の配下につき、極東リサーチに所属していること。大山の掲げる日本版CIA設立のために、「アバランチ」を駆逐しようとしていること。
「全部終わったらまた藤田を偲んで飲みに行こうな」
羽生(綾野剛)と桐島(山中崇)はそう約束していたはずだった。だけど、その藤田本人が生きていた。自分たちは何のために戦っていたのか。山守(木村佳乃)も、桐島も、混乱と、怒りと、失望に打ちひしがれるしかなかった。
「アバランチ」の計画は失敗した。大道寺(品川徹)はテロの首謀者として逮捕され、「アバランチ」は空中分解に追い込まれる。もう反撃の術はない。巨悪の前で、正義は非力だった。だが、それでも戦い続けることを決めた者もいた。
それが、『アバランチ』のもうひとりの主人公・西城(福士蒼汰)だ。1話からの西城の成長は、この物語の核だった。不正を憎み、上司に背いた西城。父(飯田基祐)を慕い、憧れを持ってこの道を志願したであろう西城にとって、警察組織が隠蔽に手を貸すことなど考えられなかった。信じていた正義を根底から覆された状態で、西城は「アバランチ」に出会った。そんな西城に羽生は言う。
「もう一度、信じてみないか。正義の力ってやつをさ」
このひと言から、このドラマは本当の意味で動き出した。「アバランチ」のやっていることは、正義と言えるのか。次々と繰り返されるネット私刑を見ながら、視聴者もまたジャッジを委ねられた。