注目作が目白押しの秋ドラマの中で、「キュンと癒しが止まらない」「優しい気持ちになれる」と、毎週視聴者の心をあったかくしているのが、ドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系、毎週水曜よる10時)。原作は、WEB連載での閲覧数累計2,000万PVを突破した『ヤンキー君と白杖ガール』(うおやま/KADOKAWA)。先週放送された第3話でもTwitterトレンド1位を獲得するなど、原作ファン、キャストファンだけでなく、多くのドラマファンの心を掴んでいるようだ。
光と色がぼんやり分かる程度の弱視の盲学校生・赤座ユキコ(杉咲花)は、恋に臆病な勝ち気な女の子。そんなユキコに恋をしたのが、顔に傷のあるヤンキー・黒川森生(杉野遥亮)。第3話では終盤、森生がユキコを優しくハグするシーンが大反響となったが、そこに至るまでの流れはとても秀逸だと感じた。第4話を前に、第3話を少し振り返りながらこのドラマの魅力を探ってみたい。
ドラマ初回から「可愛すぎる」と話題の森生(杉野)は、ひたすらまっすぐでピュア。ユキコ全肯定の健気さを見せる。点字ブロックを歩くユキコの目の前に張り出していた木の枝を見て慌てて走ってきて、勢い余ってユキコの額に一撃を食らわせてしまう。「ぶつかって痛ぇ思いしないようにって頭の中それしかなくて」と言って、もうじゅうぶん身長は高いのに、必死に背伸びをして枝を持ち上げ、ユキコを枝から守ろうとする。
ユキコの方は、「結構痛かったけど」と憎まれ口を叩きながらも、「ウソウソ、ありがとう」と、ちゃんと気持ちを受け取る。森生だけでなく、森生の気持ちを受け取りちゃんと言葉で返すユキコもまた、素直で愛らしい。ラブコメというだけあって、森生とユキコのシーンはコミカルなシーンが多いが、お互いを思いやる気持ちで溢れている。森生の気持ちが溢れすぎて往々にして面白いことになる。
この木の枝のシーンは、二人の性格と関係性、このドラマの空気が端的に表れていると思うが、同時に第3話の導入としての役割を果たしているように見えた。
第3話の冒頭、ユキコと姉のイズミ(奈緒)が姉妹げんか。その際、イズミは「ダメだよ、ヤンキーなんて。ユキコの相手は“ユキコを守ってくれるちゃんとした相手”じゃなきゃ」と言い放つ。イズミは森生のことを認めていない。木の枝のシーンで、背の高い森生がユキコを守ろうとしている。そして、“身長差で声が届かない”という二人の会話へと自然に入っていく。ここから、森生が自分の声がユキコに届くようにとプレゼントした“赤いハイヒール”を中心に第3話が展開していく。何気ないシーンも滑らかに楽しく繋がっていく。丁寧にテンポよく進んでいくのが心地よい。
「私もあと10cmくらい背高かったら黒川の声も届くだろうし、いろんな洋服も似合うんだろうなぁ。」
そんなユキコの願いに森生は、背を縮める方法をスマホで検索するという森生的天然行動を経由しつつ、ユキコに赤いハイヒールをプレゼントしようとする。しかし直後、「ユキコさんあんなヒール高ぇ靴危ねぇだろうが!」と自責の念に駆られる。それでもユキコは嬉しかった。「バカみたいに単純で1つのことしか見えなくなる」ところは森生のいいところでもあるのだ。
一方、姉のイズミにとって10cmのハイヒールを弱視のユキコに履かせようとするなんて言語道断。大丈夫というユキコに「あんたは人とは違うんだから!」と重い一言。ユキコはイズミのやることを「おせっかいなこと」と言い、「誰よりも私のこと腫れもの扱いしてんのお姉ちゃんだよ!」と反論する。