『ハコヅメ』はなぜ視聴者を虜にするのか?愛される3つの理由

TV 公開日:2021/09/15 27
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【理由2】傷ついた者の痛みを思いやる正義と慈愛の視線

警察官の日常をコミカルに描いた本作だが、登場する事件に関しては世相を映したものとなっている。とりわけ真摯さを感じるのが、女性たちの痛みに対するまなざしだ。寝たきりの父をひたすら介護し続けた女性に、純粋な好意を窃盗犯に利用されてしまった女性、痴呆症の進む夫を抱えた女性など、今もこの街のどこかにいて、無言の悲鳴をあげている女性たちの姿が、『ハコヅメ』では何度となく描かれてきた。


中でも2話にわたって掘り下げられたのが、性被害による心の傷に苦しむ女子高生・彩菜(畑芽育)のストーリーだ。腕力に劣る女性を狙った性犯罪は後を絶たない。そして、それらの被害者の多くが、事件当時のことを思い出すことが怖かったり、声をあげることによって「被害者叩き」に遭うことを恐れ、口を閉ざしてしまう。本来なら守られ救われるべき被害者の方が、体だけでなく心までも理不尽に傷つけられ、その後も長く苦しみ続ける現実が、この国にはある。


こうした問題を、茶化さず、過激さにも走らず、真面目に取り組む。笑える場面の多い作品ながら、そんな誠実さが『ハコヅメ』には貫かれている。この8月、小田急線刺傷事件が発生し、女性に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)やフェミサイド(女性であることを理由とした殺人)に関心が集まった。そんな今だからこそ、女性たちの心を救い、彼女たちを応援する『ハコヅメ』の正義感は、多くの視聴者の共感を得た。


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