ついにクライマックスを迎えた夏ドラマ。数ある作品の中でも、回を重ねるごとに評判を呼び、親しまれたのが『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ系)だろう。刑事ドラマらしからぬほのぼのとした世界観は、週の真ん中に観るにはぴったりで、何かと疲れやすい夏のオアシス的存在となった。目前に控えた最終回を前に、このコロナ禍に『ハコヅメ』が愛された理由について考えたい。
【理由1】藤聖子に見る「怒鳴らない上司像」
まず際立っているのが、藤聖子(戸田恵梨香)のキャラクターだ。本作は、新人警察官・川合麻依(永野芽郁)の成長物語。町山交番に配属されたばかりの川合がペアを組む相手が先輩の藤だ。
素直な性格の川合はよくミスをする。けれど、藤は川合がどんな失敗をしても決して怒鳴らない。この「怒鳴らない上司」が実に令和的だ。
川合と藤のような新人&先輩ペアといえば、『ナースのお仕事』(フジテレビ系)の朝倉いずみ(観月ありさ)と尾崎翔子(松下由樹)、『ショムニ』(フジテレビ系)の坪井千夏(江角マキコ)と塚原佐和子(京野ことみ)、『ハケンの品格』(日本テレビ系)の大前春子(篠原涼子)と森美雪(加藤あい)が思い出される。どの作品もタッチはコミカルながら、尾崎翔子は「あ〜さ〜く〜ら〜」と眉をつり上げ、坪井千夏は威勢良く啖呵を切り、大前春子は冷たく突き放す。
けれど、時代はめぐり、パワハラが問題視される今、視聴者の賛同を呼ぶのは「怒鳴らない上司」。今クール、『ハコヅメ』と人気を二分したヒットドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の喜多見幸太(鈴木亮平)もその点では共通している。
特にコロナ禍の今、人々はストレスに敏感だ。声を荒げず、感情に流されず、必要なことをわかりやすい言葉で丁寧に教える。そんな藤のキャラクターが、時代の空気にマッチした。