『ただ離婚してないだけ』クズのまま?北山宏光が絶妙に漂わす“良心と狂気”

TV 公開日:2021/09/06 14
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さらに物語を恐怖に染めているのは雪映の狂気だけではない。借金の取り立てで佐野を探す仁科(杉本哲太)の暴力的な恐ろしさ。萌の弟、創甫(北川拓実)に「姉ちゃん、見つけりゃいいんだろ。探してやるよ、一緒に」という刑事の池崎(甲本雅裕)。とても堅気の刑事には見えない脅威。



潜在的な恐怖が連鎖していくことが今後、予想できる。だが、それでも正隆と雪映の感情をしっかり追っているから、物語が成り立っているといえるだろう。その象徴が冒頭の正隆と雪映のやりとり。包丁を持って佐野を殺そうとする雪映を正隆は止めようとする。「だってここまで来て、後戻りできないじゃない」と声を荒げ「子どもが生まれるのよ」と正隆に覚悟を突きつける雪映。彼女の目にもう戸惑いはない。その姿を見て正隆は「俺がやるから」と雪映から包丁を取り上げる。まさに自分の過ちから始まった一連の悪夢を背負っての言葉。事の発端は自分の不倫であり、不条理な運命を受け入れようとする決意にも見て取れる。

だが、包丁を取り上げたとき、正隆の目は見るからにキョドっていた。必死に勇気を奮い立たせ、未来を守ろうとする雪映の想いを汲み取っているのか、単純に雪映を人殺しにはさせたくないという思いなのか。正隆だけは、本当の意味で胸中を悟らせないような芝居をしているようにしか思えない。最初から最後まで、やっぱりクズのままなのか、それとも雪映のため、正隆も心から変わるときがくるのか。結局、佐野を殺せなかったことで正隆はクズでヘタレのままではないかと思うのだが、そこは最後まで分からない。



ラスト、菜穂が強引に部屋へ押し入りそうになったことで、雪映は佐野を静かにさせるために扇風機で殴りつけた。次週、さらなる悪夢が始まりそうだ。


文:今 泉


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