『ただ離婚してないだけ』クズのまま?北山宏光が絶妙に漂わす“良心と狂気”

TV 公開日:2021/09/06 13
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ドラマホリック!『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系、水曜深夜0時)の第8話。「観てるのが辛過ぎる」「今一番妹が怖いwww」「怖すぎて停止ボタン何回も押しちゃう、どうしよう、見たい、見たいけどこわい」「一番普通の感性を持っていた雪映さんがどんどん恐ろしくなっていく」「すごく疲れた…心が持たない…でも次週さらに気になる」と、恐怖に彩られた投稿がSNSでも多く見られた。(※第8話ネタバレあり)



前回、萌の働いていたガールズバーのオーナー、佐野(深水元基)が家に押しかけてきた。そんな佐野に熱湯を浴びせただけでなく、顔を足で踏みつけ「言うことをききなさい」と冷たい目を向けた雪映(中村ゆり)に驚いた人も多かっただろう。こうやってみると、“ただリコ”で一番変貌を遂げ続けているのは雪映だろう。1話のころの雪映は、正隆(北山宏光)の顔色ばかりをうかがっていた。正隆が萌を殺してからは、絶望の日々。そして佐野が職場の学校に現れてからは、おびえる毎日。罪の意識にさいなまれ、自殺まで図ってしまった。それでもおなかの赤ちゃんのため、母親として“生き直す”決意を固める雪映。この変貌を雪映役の中村ゆりは卓抜な演技力で見る人を恐怖に陥れている。だが、彼女の芝居だけでは成り立たない。北山宏光が、しっかりクズでヘタレな正隆を演じ切っているからこそ、彼女の変化が浮き立つのだ。


そしてなんといっても見逃せないのが演出。涙を流しながら佐野の喉元に包丁を突き立てる正隆が雄叫びをあげたところで、オープニング曲のKis-My-Ft2『Fear』。佐野はどうなったのか!? 一匹の飛んでいるハエによって想像させられるのは佐野の死。だが、真相は明かされないまま、明るい産婦人科で診察を受ける雪映は笑顔をこぼす。雪映の妹、菜穂(西川可那子)が家に遊びにきても、笑顔を絶やすことはない。


陽の光が入るリビングで、とても凶行が行われたとは思えない。そんな中、菜穂の娘、陽菜がこっそり2階へ上がる。もう、これ完全にホラーだろ!ともいえる演出。薄暗い2階にそうっと上がり、ドアを開けると、扇風機だけが回っている。そこで陽菜が見たのは、無残に縛られ、うめき声をあげる変わり果てた佐野の姿だった。ある意味、幽霊よりも怖い。こんなの見てしまったら、トラウマになるのは間違いない。


“生き直す”ため、激変した雪映はとどまることを知らない。縛られた佐野に飯を与える雪映は「聞こえない、ちゃんと」と表情のないまま言い放つ。「ありがとうございます」と何度も佐野に言わせ、エサのように飯を与える雪映。


自分を地獄へ突き落とそうとした佐野への憎しみもあるのだろう。そこへ流れる正隆のモノローグ。「俺たちの日常はおかしい」。狂気が入り混じる日常を雪映はすでに当たり前のように受け入れている。それを心配するかのように正隆は佐野の世話は自分がやると雪映に告げ、「元気な子、産んで欲しいから」と。果たして雪映を思いやっての言葉なのか、はたまた狂気にかられた雪映の姿を見たくないがための逃げの言葉なのか、正隆の真意は分からない。だが、一見して雪映を気づかう正隆の良心と狂気の混在に心をえぐられる。

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