「私あんたのこと、今、大切に思ってるよ」
青山があざだらけの顔でたこの部屋を訪れたとき、たこは「どうした若者!」と飛び起きた。もう、その声や様子からたこの温かさが感じられる。
「誰のことも大事に思えない人間には、おいしい珈琲は淹れられないってことか?俺は今までさんざん人を傷つけてきた」。愕然とする青山にたこは「それはあんたが今まで、誰からも大切にされなかったからだ。でもねぇ、私あんたのこと、今、大切に思ってるよ。」そう言われて言葉を失う白パーカー姿の青山は、どこか少年のように見えた。
たこと青山の時間は、原作にはそれほど描かれていない。ドラマではその時間が丁寧に描かれ、心に沁みる会話が中村倫也と光石研によって驚くほどの説得力で温度を持って届けられた。たこの青山を見つめる温かい眼差しと声。「嘘じゃない」という言葉がすっと心に届く。そんなたことのやりとりで、嬉しさを隠しきれなかったり、ちょっと拗ねたり、「いいなぁ、それ」と素直な言葉を口にしたりと、青山はこれまで見せたことのない様々な顔を見せていく。見飽きることのない圧巻のやりとり。
雨の日、頭痛で「うぅん」と苦しむ青山にたこが珈琲を淹れてくれた。「俺もいつか、じいさんが淹れてくれるこの珈琲みたいに、誰かにおいしい珈琲を淹れることができんのかなぁ」。“いつか”と明日を見るようになった青山。しかし、たこに「大切に思ってる」と言われて急に怖くなり、「なんだよ!大事なもんとか、仲間とか。そんなもんいらねぇんだよ、なんだよこのクソじじい!」。
それが、二人の最後の会話となってしまった。
「じいさん こんなちっちゃくなっちまった」
青空の下、澄んだ水の流れる川辺で、骨を持ち遠くを見つめる青山。セリフはそれだけだが、幾重にも感情が重なっているようで、とてもとても胸を打つシーンだった。
第1話で、青山が垣根(夏帆)に「本当に誰にも必要とされてなかったら、(移動珈琲屋を)とっくにやめてます」と話す場面がある。青山の過去を知ってからこのシーンを観ると、この言葉を言えるほど“他人に必要とされる”ことを感じて人生を送ってこられたのだなと、もう一段ぐっとくるものがある。ドラマ初回放送前の生配信で、中村倫也は「現代をやってるときは、過去にこうこうこうでこうなったから、きっと今こういう言葉が出てこういう形になったっていう想像をしながらやってたんです。」とコメントする場面があった。第6話、車の中で垣根と話す現代のシーンのこみ上げる様子や表情の変化もそうだが、過去を丁寧に掬い取りながら演じてきたことがハマっていくのだから、もっともっと他のシーンももう一度観てみたい。それはぺい(磯村勇斗)にも言えること。いろんなシーンを観返したくなる第6話でもあった。
ラスト二回。第7話も回想と現在が交錯しながら、物語は展開していく。
本格登場するぼっちゃん(宮世琉弥)や夕張(鶴見辰吾)も含め、全シーン心して見届けたい。(※以下第7話あらすじ、読みたくない方はご注意ください)



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