樹木とともに取材を受けた記事のチェックをする場面。樹木が唐突に「なんで甘い物嫌いになっちゃったの?」と尋ねた。「食べ過ぎたから、それで嫌いになった」。里保にも同じことを聞かれ同じように答えていた浅羽。「ふーん、そっか」と里保はそれ以上追及しなかったが、樹木は違った。「それは、嘘でしょ?」。浅羽は「ひとりぼっちのやつが甘い物を食べても、幸せになれない」「うちには一家団欒なんてなかった」と、小さい頃に作ったクリスマスケーキを食べてもらえなかった辛い過去を打ち明けた。すると樹木は「できることなら、そのケーキ、全部私が食べる。全部、まるごと全部」と、浅羽の傷を全部包み込むような言葉をかける。
そして、「私は、誰かを幸せにするスイーツをたくさん作りたい。社長の作りたいコンビニを私も一緒にやりたい。それが、社員としての私の仕事で、私の夢です。」と、最後は敬語で“社員として”夢を語った。樹木の言葉を聞く浅羽は、少しずつ表情を変えている。拗ねた少年のようにスイーツもクリスマスも嫌いだと言った浅羽も、最後は表情が緩み、りんごプリンが完成したら食べて欲しいという樹木の願いを「わかった」とやさしく受け入れた。
浅羽にとって樹木は「想定内だったことがない」。嘘がつけない樹木のまっすぐな言葉が浅羽を変えていく。ココエブリィの買収計画もストップしようと決意。しかし…
樹木と浅羽の心が近づく分岐点となったはずであろう第5話だが、ラストは真逆の状況。突然の社長解任。樹木は、“ただの社長と社員”である自分と浅羽は二度と会えなくなるかもしれないと、会社を去ろうとする浅羽に「行かないで」と懇願。「ありがとう」とだけ返す浅羽も、儚く切ない表情を浮かべていた。車の窓越しに「好きなの」と想いが溢れる樹木に一瞥もせず去ってしまった浅羽。完成したリンゴプリンも地面に虚しく散らばった。浅羽が幼少時に作ったクリスマスケーキも無残に床に散らばった。食べてもらえなかった気持ちを知る浅羽が、樹木が“誰かを幸せにしたいと本気で思って”精一杯の夢が詰まったスイーツを食べずに去るという、あまりにも切ないラストだった。
ドラマのラストがクリスマスに向かっていると予想すると、おそらく5話は折り返し。樹木のまっすぐな思いが浅羽の心を揺り動かしているようだが、ここからどのように二人の距離に変化がみられるのか。引き続き、注目しよう。
■火曜ドラマ『この恋あたためますか』
毎週火曜よる10:00~10:57
(C)TBS