中村倫也が立つ“境界線” 『美食探偵』で心揺さぶられる対比の数々

TV 公開日:2020/06/28 43
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“黒”の世界へ誘うマリア(小池栄子)の中にも、相対する側面がある。「夢と現実は別」「つまらない男と結婚した。私はそれが女の幸せだと思い込もうとした」。現実に絶望していたマリアが、本当の幸せは何なのかを明智との出会いで知り、殺人を「ワクワクする楽しいこと」だと思うようになった。また、いつも余裕で不敵な笑みを浮かべるマリアだが、明智に対して見せる表情はちょっと違う。苺のために必死になる明智に「すっごい嫌!」と、どこか余裕のない可愛らしさものぞかせる。


苺(小芝風花)はマリアに「狂ってる」と言った。マリアが歪んだ愛を見せつければ見せつけるほど、苺の切なさは増し、“白”の純度がどんどん上がっていくように感じられる。その最たるものが、小芝の迫真の演技で視聴者の涙を誘った明智への告白だろう。「私はただ、あなたのことが好きなんです!行かないで…」。まっすぐな愛は、明智の心にどう響いたのか…。


少し視点を変えて、奈落の底に落ちそうになる苺を明智が助ける場面。第1話では崖から落ちそうになった苺に、「崖で正論なんて吐くからそうなる」「自業自得ってやつだな」と、苺に手を差し伸べなかった明智。第8話では、「どうせ正論でも吐いたんだろ」と言いつつ、これまで見せたことのない必死の形相で苺を助けようとする。「自業自得、ですか?」と尋ねる苺に、「あぁ。でも知っての通り、僕はウザがられるほどの過保護でね。」と必死で苺の命を守ろうとした。



『美食探偵 明智五郎』は、相対するものが幾重にも重なって紡がれる重厚なストーリー。怒涛の展開であることは間違いないが、役者陣の引きつけられる演技も含め、その魅せ方の対比が効果的になされ、視聴者はさらに感情を揺さぶられるのかもしれない。


しかし、全く別の世界にいる苺とマリア・ファミリーにも共通項がある。「私は誰かに自分の料理を食べてもらって喜んでもらえたら嬉しいって、ただそれだけなんです!」。苺が語った純粋な思いは、林檎(志田未来)・シェフ(武田真治)・れいぞう子(仲里依紗)も持っていた気持ち。そしてマリアだって。その思いを一番感じて受け止められるのは、「人生で食事ができる回数は限られている。だからその一食を妥協してはいけない」と三度の食に命をかける明智五郎(中村倫也)、その人だ。


マリアと苺からの愛情、マリアと苺に対する自分の複雑な愛情、シリアスとコミカル、リアルとフィクションなど様々な境界を請け負ってきた中村倫也演じる明智。


最終話の「最後の晩餐」では、苺は純白のドレスを、マリアは黒のドレスを着て囲む。


境界線に立つ明智(中村倫也)は、どんな道を選ぶのか、しかと見届けたい。放送は今夜10時から、30分拡大。



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■日曜ドラマ『美食探偵 明智五郎』

最終話 6月28日(日)22:00~23:25(30分拡大SP)

原作「美食探偵-明智五郎-」東村アキコ(集英社「ココハナ」連載)
Ⓒ東村アキコ/集英社 
ⒸNTV


▼『美食探偵』についてのコラムはこちら

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※本記事は掲載時点の情報です。

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