SILENT SIREN、活動休止前ラストライブ「最高のバンドに会えたな」

音楽 公開日:2021/12/31 18
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12月30日(木)SILENT SIRENのラストライブツアー「SILENT SIREN年末スペシャルLIVE TOUR 2021『FAMILIA』」の最終公演、つまり活動休止前のラストライブが東京体育館にて開催された。


開演前、場内には彼女たちがこれまでにつくってきた名曲の数々が流れ、『Star drops』の終わりとともに暗転。バンドのメインアイコン・サイサイくんが登場するムービーのあとに始まったオープニングナンバーは新曲『FAMILIA』だった。これはSILENT SIRENが最後に発表した、今ツアーのテーマにもなっている楽曲だ。ひなんちゅ(Dr.)が今年9月に脱退したことをポジティブに変換してあえてドラムを全編打ち込んでつくったという意地の1曲だが、今日はもちろん生ドラム。<いつでも 帰れる 場所がある>という歌詞からは、今回の活動休止が決して後ろ向きではないという想いを感じるし、サイサイファミリー(サイサイファンの呼称)のために歌ったこの曲を1曲目に据えたことの意味は想像するに容易い。曲のスタートとともに輝き始めたのは、観客が腕に身につけたリストバンド。それがより一層バンドとの連帯を感じさせるのだった。そして、「私たちがSILENT SIRENです!」という力強い宣言のあとにプレイしたのは、これまでに数多くのライブやフェスで観客を踊らせてきた名曲『フジヤマディスコ』。あいにゃん(Ba.)の唸るベースライン、鬼キャッチーなサビ、客席で揺れる扇子……いつだって強烈な刺激を与えてくれた曲だ。そこにサイサイ楽曲のなかでトップレベルの人気を誇る『八月の夜』で追い打ちをかける。


MCでは、「改めましてこんばんは、SILENT SIRENです! とうとうやってきたね、ツアーファイナル。活休前最後のライブにようこそ!」とすぅ(Vo./Gt.)が叫ぶ。それはいつもにも増して力強く、大きな声だった。おそらく、そうしないと涙が溢れてしまいそうだったのではないだろうか。そんな彼女の姿にグッときてしまう。のっけから代表曲を惜しみなく畳み掛けられて、こちらの音楽脳は存分に刺激されているのだが、「ライブで聴くのはこれが最後か」と思うと、とてつもない切なさがある。しばしの別れだとしても、悲しいものは悲しい。


すぅが花に彩られた花道の先端にあるセンターステージ、つまり客席のど真ん中で歌ったのは彼女たちのデビュー曲『Sweet Pop!』だった。『ビーサン』ではそこにあいにゃんとゆかるん(Key.)も合流し、感極まっているすぅを左右からもり立てる。これまでのサイサイもこうやって支え合ってきたのかと思うと、この日すでに何度目かわからない涙腺刺激ポイントが訪れる。


 今回のライブが特別なのは、サポートメンバーとして2人のミュージシャンが参加したこと。1人は渡邊悠(Dr.)、もう1人はクボナオキ(Gt.)だ。クボナオキは元々サイサイのメンバーであり、裏方に回ってからはサイサイのサウンドプロデューサーとして11年にわたり、サイサイの全公演、全曲を支え続けてきた。そんな2人の助けもあり、演奏は安定感があり、音も分厚い。ラストライブということを抜きにしても非常に質の高いパフォーマンスだ。なお、ツアー初日の福島、そして大阪公演ではメンバーにとってお兄ちゃんのような存在であるTHE BACK HORN松田晋二がサポートドラムとして参加していた。


ライブ序盤は「これぞサイサイ!」というアゲ曲で攻めたが、中盤は一転。懐かしい冬のバラード『I×U』、絶対にこの曲を出したいとメンバーが主張してリリースに至ったという『stella☆』、新しい旅立ちを歌った新曲『恋爛漫』、日本武道館公演の際に会場限定でリリースされ、今は手に入らない幻の名曲『シンドバッド』といったスローからミッドテンポの楽曲で展開をつくった。


こういうライブともなると、どうしても過去の思い出が頭をよぎってしまう。ゆかるんはメジャーデビューのタイミングでサイサイに加入。常に期待通りのパフォーマンスを見せてくれる、徹底した完璧主義で、自分に任されたことは抜かりなく遂行するのがゆかるんという人なのである。彼女は煽り隊長としても頼もしい姿を見せ、丁寧かつ、熱量の高いアジテーションはサイサイのライブにおける見どころのひとつだった。SILENT SIRENというバンドが持つポジティブで明るいキャラクターを象徴していたのは実は彼女なんだと思う。


サイサイの職人的な要素を担っていたのはあいにゃんだ。彼女は11年にわたる活動のなかでベースプレイヤーとして著しい成長を見せた。歌うようなフレーズがいつの頃からか彼女の武器となり、ファン以外からもその実力を評価されるようになった。ベースを愛し、サイサイを愛したからこそあいにゃんの才能はさらに開花したのだろう。演奏に対するストイックな姿とは反対に、普段はほんわかとした癒やしキャラ。そのギャップに惹かれるファンが大勢いるのも当然。そんな彼女の成長がSILENT SIRENの楽曲のクオリティをぐんぐん引き上げていったのだと思う。この日もあらゆる場面で光るプレイを見せつけた。そんなシーンがあればあるほど活動休止を惜しむ気持ちが強くなる。


そして、長年にわたってSILENT SIRENの顔としてフロントに立ち続けたのがすぅだ。その声を聴けばすぐにサイサイとわかる印象的なボーカルはバンドとしての個性を際立たせた。さらに、彼女が綴る歌詞は、日々の生活のなかで感じる喜びや苦悩、人間としての成長がストレートに反映され、ファンからも強い共感を得ていた。バンドという集合体に対する思い入れも人一倍強い。かなり個性的なメンバーが揃ったSILENT SIRENというバンドがここまで続いたのも彼女の存在があったからだろう。ライブ中盤のMCで彼女はこれまでずっと我慢していた涙を流した。「自分たちがこんなにいろんな人たちに愛されるバンドになるとは思ってなかったからすごくうれしいです」「このバンドは田舎から出てきた何も持っていない私にすべてをくれた場所でした」など頭に浮かんだ言葉を散文的に吐き出していった。そんな姿が本当にリアルで、やっぱり信用できる人だなと思った。


「未来に向かって進んでいく、もっともっとみんなにハッピーな楽しいことを届けられるようにするために出した答えです。今、ここでみんなと向き合っている私たちの音が、姿が答えです」と言って鳴らしたのは『Answer』だった。バンドが解散すること、活動休止することは悲しいことだ。しかし、サイサイはそれだけで終わらせないはずだ。それはこの曲をセットリストにを入れたことからも感じる。<あの頃のわたしたちは なんて振り返るより あの頃のわたしたちを 超えれてる未来想像する>という歌詞は、たとえ確かではなくとも明るい未来を見据えているから歌えるものなんじゃないだろうか。<光満ちる未来へ続く道 もう止まらないって誓った声がここに響くさ>と歌う『KAKUMEI』もそうだ。この日のセットリストは、ファンに最大限に楽しんでもらうためのものでもあり、彼女たちの意志表示でもあるのではないか。ビジュアルのよさでも注目を集めることが多かったサイサイだが、実はずっと泥臭く戦ってきたバンドでもある。そういった側面が広く知られることなくこの日を迎えたことが少々残念ではある。


とにかく人を楽しませることが好きなのもSILENT SIRENというバンドの特徴だ。『KAKUMEI』でシリアスに曲を終えたあと、ステージが暗転。再び照明がつくと、そこにいたのはサポートメンバーを除いた3人。しかも、ベースすぅ、ギターあいにゃん、ドラムゆかるんという編成だ。メンバーが3人になってから3人だけで演奏を披露することがなかったからこの機会に見せたかった、とプレイしたのはインディーズ時代の楽曲『ランジェリー』だった。竿隊のすぅとあいにゃんのパートチェンジは見た目的に違和感がないが、ゆかるんがドラムを叩く姿はかなり新鮮。しかもなかなか上手いときたもんだ。最後の最後でこんなに楽しいものが観られるとは思わなかった。いつの間にか3人のノリもだいぶリラックスしたものになっていた。


その勢いで本編ラストとなるブロックを突っ走った。『DanceMusiQ』から始まるサイサイ屈指のアゲ曲の連打だ。「今夜は飲むぞ~っ!」というあいにゃんの叫びとともに始まった『ALC. Monster』、シングル曲ではないものの高い人気を誇るロックチューン『女子校戦争』、あいにゃんがメインボーカルをとる『てのひら』と続く。今回のバンド編成はこういったパワー系の楽曲で最も力を発揮していた。観てる側としても、いつの間にか寂しさよりも目の前の楽しさに没頭できていた。それはきっと5人のテンションがこちらに伝染したからだろう。


サイサイ一の高速チューン『HERO』でいったんステージを去った5人は、アンコールを求める手拍子に迎えられて再び姿を現した。MCでは公開されたばかりの『FAMILIA』のMVについて話をした。このMVは自分たちの今を見てほしくてつくったという。活動休止を目前にしてもなお「今を観てもらいたい」という姿勢が心を打つ。「寂しすぎるぜー! 終わりたくないぜー!」と叫んだすぅは、「バンドって本当にいいなって思いました。最高のバンドに会えたなって思いました」「気持ちの整理をつけるにはあまりにも時間がなかったなって思ったりもしてます」と本音を交えながら、涙を拭いながら、これまでのバンドの歴史を振り返った。そして、「SILENT SIRENを結成して初めてつくった曲をやります」と歌い始めたのは『チラナイハナ』だった。ここで会場全体がより一層エモーショナルな空気に包まれたが、ラストに『ぐるぐるワンダーランド』『チェリボム』という流れで締めたのは、実にサイサイらしいと言える。ファンに楽しんでもらいたい、ファンの楽しむ姿が自分たちのパワーになると考えていた彼女たちは、ハッピーに締めることを選択したのである。実は、この日のリハーサルの最後にも、すぅはスタッフ全員に向けて「楽しくてしょうがないライブにしましょう!」と呼びかけていた。いくらラストライブとはいえ、湿っぽいのはサイサイらしくないのである。


このライブをもってSILENT SIRENは活動休止期間へと入る。昨今、「活動休止」という言葉は「解散」とほぼ同じようなものとして捉えられることが多くなっている。しかし、SILENT SIRENは違う。たとえどんな形になろうとも、きっと彼女たちはここに帰ってくる。そんな希望を抱かせるライブだった。『チェリボム』を終え、メンバー一人ひとりが最後の挨拶をし、ステージを降りる直前、すぅは「音楽って、バンドっていいぞ!」と叫んだ。そこに一言付け加えたい。サイサイって本当にいいぞ。


オフィシャル・ライブレポート 阿刀“DA”大志

オフィシャル・カメラマン 上飯坂一、増田慶


※本記事は掲載時点の情報です。

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