HYDE コロナ禍でのツアー完走、1曲1曲に宿った尋常ではない熱量

音楽 公開日:2021/03/08 11
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今年でソロ活動20周年を迎えるHYDEがその幕開けとして昨年末から年をまたいで開催したツアー“HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE”のファイナル公演が3月6、7日、大阪城ホールにて行なわれた。当初、本公演は1月16、17日に開催予定とされていたが、大阪を含む10都府県に再度発出された緊急事態宣言を受けて延期、今回の2日間はその振替公演。本来ならば2月13日の札幌公演が最終日となるはずだった今ツアー、コロナ禍といういまだ明けぬ危機に信念を持って立ち向かい、無事たどり着いたゴールだけに感慨もひとしおだろう。

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今ツアーの成功は行政の定める感染拡大予防のガイドラインを遵守し、さらに独自でも万全の感染予防対策を施すこと、それを来場者をはじめ、ライヴに関わる全員にもれなく告知し実行することで、現状では白眼視されがちな“ライヴ”という場を確固とした安全のもとに共有できるという証明にもなるはずだ。HYDE本人、バンドメンバー、スタッフへの定期的なPCR検査および抗原検査の実施、各会場とも場内の至るところにアルコール消毒薬が配備、入場時やトイレなどあらゆる場面でソーシャルディスタンスを保つための配慮工夫がなされ、観客の対応にあたるスタッフはみなマスクはもちろんフェイスシールドも併用する等、徹底した対策を全公演において行き渡らせるのはけっして容易ではなかっただろうが、そうまでしてでもHYDEは音楽を、ライヴを、そしてそれらをこよなく愛する人たちの想いを守り抜きたかったに違いない。ついに迎えたフィナーレの瞬間、大阪城ホールを満たしていたのは音楽を心ゆくまで味わい尽くせたという幸福感と、ステージと客席とが一丸となって掴んだ達成感、どんな状況にあっても自分次第で未来は作れるという確とした希望だった。


開演時刻と同時に紗幕が落ち、立ち現われるステージ。ファイナルのスタートを飾ったのはここまでの6都市9公演同様、「UNDERWORLD」だ。荒廃した近未来都市〈NEO TOKYO〉が描かれた緻密なステージセットを背に、椅子代わりのドラム缶に腰掛けてフロアタムを打ちつけながら不敵な歌声を轟かせるHYDEの姿が露になるや、会場いっぱいに声なき歓喜が一斉に広がる(今回のツアーでは全会場、アリーナ席にも座席を設置し、スタンド席もすべて収容率50%のガイドラインに従って1席おきに着席、オーディエンスは座ったままでの観覧が求められており、マスク着用の上、歓声や歌唱も禁じられた)。続いて「AFTER LIGHT」に突入、通常のライヴではシンガロングが巻き起こる場面に差しかかるとHYDEは「エブリバディ、ハミング!」と口を開けずに声が出せる方法を示唆、恐る恐るといった様子で客席から届いたか細いハーモニーに途端に相好を崩した。なんとかして彼の要望に応えようとするファンたちがかわいくて仕方がないといった表情だ。その後もことあるごとに「クラップ! クラップ!」「鳴らしていこうぜ!」と客席を煽り、狂騒を先導するHYDE。


オーディエンスは声を出せない代わりに持ち込みが許可されたタンバリンなどの楽器類や予め歓声を吹き込んだヴォイスレコーダー、その他音の出るオモチャなどを駆使して演奏を盛り上げる。まるで会場全体で楽曲を奏でているような特別な一体感が実に心地好く、ライヴとは観客と一緒になって作られるものなのだとつくづく知らされた。ライヴは即興芸術だと常々口にしているHYDEだが、このファイナルで大阪城ホールに響き渡った音色もまたこのとき限りの奇跡の芸術なのだろう。そして芸術とはこんなにも人々の心を満たすものだと“HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE”によって改めて教えられた気がする。これほどのものが不要不急であっていいはずがあろうか。


「ようこそ、“ANTI WIRE”へ。大阪、待たせたね。待たせたぶん、溜まった毒をいっぱい出して、気持ちよくなって帰ってもらおうかな。せっかく久しぶりに会えたんだから、一緒に楽しもう!」


そんなHYDEの呼びかけに熱狂はますます色を深めていく。

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