■若月佑美が芸能界に入った理由
──作品の中で、晴人がカメラマンを目指した理由、美咲が美容師を目指した理由を語る場面がありますが、若月さんが芸能界に入った理由を聞かせてもらえますか?
幼稚園とか小学校低学年くらいの小さい頃に、漠然とテレビに出てみたい思いがあったんですよね。教育番組とかで自分と同年代の子どもがテレビに出ているのを見て「楽しそうだな」と思っていたんです。でもその後、芸能界への思いは1回消えて、中学生くらいの頃には弁護士になりたいと思いました。流通やマーケティング系のお仕事にも興味がありましたね。
ですが、高校2年生の時に進路を決めなくちゃいけない時期になると、行きたい大学も専門的に勉強したい分野も、何も出てこなかったんです。以前はふわっとだけどあったのに、いざ決めるとなると弁護士という夢もなくて、絵も好きでしたが画家になると言うほどの技術もなかったし、なりたいかと言われると画家ではないのかなと考えたりしてしまって。それで「何もないなら」と、小さい時にぼんやりと考えていた芸能界にいちかばちか挑戦してみよう、と思ってオーディションを受けたんです。
──そんな経緯があったんですね。その当時は、他の進路の可能性も考えつつ芸能界を目指したのでしょうか?
今考えると恐ろしいんですが、オーディションに落ちた後のことは一切考えてなかったんです。その分、私の親はすごく考えていたらしくて(笑)。オーディションは応援してくれていたんですが「もし落ちたら学校はどうしよう」とか、いろいろと考えてくれていたみたいです。でも結果的には、ありがたいことに無事、合格させていただいたという感じですね。
──当時は、現在のご自身の活躍は想像していないわけですよね。
まったくですね。特に女優さんなんて一番出来ないと思っていました。単純に物を覚えるのが苦手だったので、絶対にセリフを覚えられないと思っていました。まさか一番出来ないと思っていた職業を今やっているなんて、と驚きです。
──今では様々な作品に続けて出演されていますが、俳優業は楽しいですか。
苦しい半分、楽しい半分ですね。毎回生み出す作業なので、その役をどういうキャラクターにしていくか、作り上げていく過程が楽しくもあり、苦しくもあります。頭の中ではわかっているのにそれが表現できない時の苦しさがあるんです。
──「楽しい」と感じるのはどんな時ですか?
「面白いです」「お芝居が好きです」「あのセリフに助けられました」などと、感想をいただいた時がすごくうれしいんです。特に「セリフにグッときた」という感想は、言い方次第でグッとくるかこないかが決まると思うので、「伝わったんだ!」といううれしさが「楽しい」に繋がっていきますね。
■大切なのは「今をどう楽しく生きるか」
──この作品では人の何倍も早く老化が進んでしまう「早老症」を描いていますが、若月さんは今作からどんなことを学びましたか?
本当に生き方を考えさせられました。ありがちな言葉になってしまいますが、当たり前に毎日を過ごせていることがどれだけの奇跡なんだろうと思いました。自分が同じ立場だったらと考えると、美咲の立場でも、晴人の立場でも苦しいんですよ。一番思うのは、未来をどう大きくするかということよりも、今をどう楽しく生きるかということですかね。自分自身、漠然とした将来の不安に追われがちなんですが、そこばかりに目を向けていると、足元に転がっている大事なものを見落とすことも出てきちゃうのかもしれない、ということを教えてもらったような気がします。
──ありがとうございました。最後に、この作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
『桜のような僕の恋人』は、ちょうど桜の咲く時期に配信されることもあって、季節的にもぴったりな作品だと思います。桜が咲く瞬間の美しさ、春にしか咲かず、散ってしまう儚さのようなものが物語とリンクしていて、素敵なラブストーリーと見ることもできますし、切ないラブストーリーと見ることもできると思います。生きるってどういうことなんだろうと教えてくれるような映画でもあるので、ぜひたくさんの方に見ていただきたいなと思います。
取材・文・撮影:山田健史
ヘアメイク:AYA
衣装:蔵之下由衣
・ブラウス 39,600円
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・左手リング 145,200円/carat a(ISETAN SALONE ROPPONGI)
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■『桜のような僕の恋人』 3月24日(木)Netflixにて全世界同時配信