高柳明音、肩書と偏見への反骨精神「絶対に見返してやる」

映画・舞台 公開日:2021/12/10 1
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2021年4月まで、アイドルグループSKE48のメンバーとして多くのファンを楽しませてきた高柳明音


グループを卒業し、ひとりの女優としての道を歩み始めておよそ半年。現在の彼女は、アイドル時代から実績を重ねてきた舞台の経験値を12月9日より上演される『ナナシ2021』の稽古に注いでいる。


名古屋に拠点を構え、名古屋製作という手法に拘る本作の魅力と、高柳の現在地に迫る。

 

■高難度の殺陣シーン「頭にハテナしか浮かばない時も」

 ──現在は名古屋で稽古に励む日々ということですが、現場の雰囲気はいかがですか? 

殺陣が多い舞台なのですごく大変ではありますが、皆さん優しくて、とても温かい現場です。私は皆さんに追いつくのに必死。でも、楽しみながら稽古に参加しています。


──名古屋出身の出演者が多い現場なんですよね。

半分以上名古屋なんですが、何人かは東京からも来ています。名古屋弁が行き交っていたりもするので、セリフのイントネーションを間違えてしまって「それ名古屋弁だよ」と言われてしまうことがあります(笑)。普段の舞台でもそうなることはあるんですが、今回は共感してくれる方が多いですね。


──東京でやる舞台との違いは感じますか?

過去に名古屋で上演した舞台も東京で稽古をしていたので、今回のように稽古場も名古屋というのは初めてです。実家から通うのがすごく不思議な感覚です。


──今作のアクションはいかがですか? 

楽しいです。難しくて、時には頭にハテナしか浮かばない時もあるんですけど...。「これ覚えてね」って見せてもらってもまったくわからなくて「何事?」って(苦笑)。ダンスの振り付けは、すぐにコピーできる方なんですが、殺陣は手の動きも足の運びも複雑なんです。ちょっと角度が違うだけで、身を守る動きが攻めの動きに見えてしまったり。


──奥が深いんですね。本作は12年前にも上映されていた舞台ですが、オファーを受けた時はどのように感じましたか?

12年前のDVDを貸していただいたんですが、物語もすごくわかりやすいし、面白いなと思いました。今回は男として育てられた女の子として古畑奈和ちゃんが出ているんですが、12年前の時には女性が1人しかいなかったんです。1人の女性が華麗に舞っているのを見て、「この強い女性の役を演じたらまた変われそうだな」と第一印象で思いました。


──古畑さんとの現場はいかがですか? 

グループ時代から舞台をやる時には基本的に奈和と一緒だったので、また一緒に舞台やれるね、という感じでした。ただ、出番がほとんど一緒じゃないので、どっちかがやっている時にどっちかが見ているような雰囲気で、お互いに「お疲れ」と言い合いながら稽古をしています。

■“元SKE48”の肩書 感謝と同時に複雑な思いも

──4月にSKE48を卒業して、現在はグループをどう見ていますか? 

あまり見れていないんですよね。「今は何をやっているんだろう」という感じ。ライブも観に行けていないし、なかなか客観的には見れていないですね。


──意識的にグループの情報から離れようという気持ちもあるのでしょうか。

意識的にではないと思いますけど、たとえばSNSに事あるごとにSKE48のことを書いたりしていたら、すごく未練があるように思われちゃうかなと思うんです。本当に全部やり切ったし、自分の中ではしっかり切り替えができているので、あえて突っ込むようなこともないかなという感じです。グループを卒業する子に対して「今までよく頑張ったね。これからは一緒に頑張ろうね」と声をかけることもありますが、基本的には俯瞰して見ている感覚です。


──卒業から半年以上経ちますが、“元SKE48”という肩書についてはどう感じますか? 

女優として作品に出る時は“元”と付けたくない気持ちもなんとなくはあります。元、というだけじゃなく現役の頃から、舞台に出たら名前のところにSKE48と入って、そのことで最初から否定されるようなことも何度かあったんです。


──そういうものでしょうか。

ありました。グループに所属していた頃から色々な舞台に出させていただきましたが、「あぁアイドルですか」「舞台の現場にアイドルが来るんですね」という風に、否定的に見られることがあったんです。でも私は「絶対に見返す」という気持ちが強かったので、最終的には「出てくれて良かったよ」と言って、受け入れてもらえました。

偏見も多いので、カッコ書きでグループ名がつくのはあまり好きじゃないな、という思いはありますが、「続けてきたからこそ今がある」という気持ちももちろんあるんです。今回の現場でも、もともとSKE48を知ってくださっていた方がいたり、「友達がめちゃくちゃ高柳さんのファンで」という話をしてくれたりと、ありがたいなと感じることもありました。


──卒業してからは“元”と言われることもあるけど、本業が女優になったわけですよね。周囲の目に変化は感じますか?

そんなに大きくは変わらないですね。グループ時代の話も全然しますし。アイドルとして活動してきた12年は私の勲章だと思っているので、そこも含めて、これからも頑張っていくという思いはあります。

今は女優と書かれたとしても、自分の中で成し得きれていない感覚があるので、その肩書きがもっとしっくりくるようになりたいなと思います。


■ ポジション争いには葛藤も それでもアイドル人生は「ちゃんと楽しかった」

 ──グループにいるとメンバー同士での競争意識もあったと思いますが、卒業してからは芸能界での身の置き方も変わるのではないでしょうか。

常に誰かと比べられるようなことはなくなりましたね。「あの子はこれをやってるのに、明音ちゃんは」と言われることがなくなったから、ちょっと楽にはなりました。アイドル時代のポジションにしても、私は自分がやりきるまでアイドルでいたいのに、アイドル枠じゃなくなっていく感覚があったんです。次世代を育てる側になって、先輩として後輩を前に押す意味がわからなかったんですよ。「自分もアイドルなのに」って。でも12年間はちゃんと楽しかったんです。アイドルとしてずっと楽しかったけど、そういう葛藤はたしかにありましたね。


──現在は女優として課題に感じているようなことはありますか? 

同年代の女優さんを見ていると、もっと前からお芝居1本でやっている方がたくさんいらっしゃいます。私は12年アイドルを続けてきて、かなり遅めの1本への切り替えなので、そこへの焦りはやっぱりあります。だけど今は、やれるところまでやり続けてみてから色々決めようかなと思っています。ずっと同じことを続けるのではなくて、少しずつでもレベルアップしていけたらいいですね。


──ありがとうございます。では最後に改めて、舞台を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

今回の舞台は本当に珍しい名古屋発の舞台です。今回の様に名古屋から演劇・エンタメを広めていくことがひとつの目標なので、この作品をまずは観に来ていただきたいです。名古屋のプライドを持って、名古屋の色が強い状態で東京、大阪に持って行けることもすごく楽しみです。きっと、今までに見たことのないものが見えると思うので、ぜひたくさんの人に見に来ていただきたいです。殺陣とアクションも見応えがすごくあります。期待していてください!


取材・文・撮影:山田健史


<名古屋公演>

日程:2021 年 12 月 9 日~12 日

会場:中川文化小劇場

<大阪公演>

日程:2021 年 12 月 17 日~19 日

会場:近鉄アート館

<東京公演>

日程:2021 年 12 月 25 日~28 日

会場:新国立劇場小劇場

※本記事は掲載時点の情報です。

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