井浦新「自分自身も見たことのない芝居をしたい」飽くなき探求心

映画・舞台 公開日:2021/10/15 22
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エキセントリックな役から、温かい眼差しを持つ柔らかい男性まで、さまざまな役柄を演じ、日本の映像界になくてはならない存在である俳優の井浦新。最新作映画『かそけきサンカヨウ』では、自身の離婚が原因で、早く大人にならざるを得なくなってしまった娘の父親として、父娘の微妙な距離感を好演した。メガホンをとった今泉力哉監督が、演技はもちろん映画への思いを含め「憧れの存在だった」と評した井浦新という俳優の魅力に迫る。

井浦新の最大のモチベーションは“純度”

1999年に是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』で俳優デビューして以来、数々の映像作家のもと、個性的なキャラクターを演じてきた井浦。本作の今泉監督をはじめ、多くの映画監督やプロデューサー、さらに俳優陣から「作品を共にしたい」という声が聞かれる人気俳優だ。


そんな井浦が作品に取り組むうえで、大きなモチベーションとなるのが、魅力的な映像作家との出会いだ。「僕は良くも悪くも監督至上主義みたいなところがどうしてもあって、映画は監督のものであるべきだと思っているんです」と笑う。


この言葉通り、井浦のフィルモグラフィを見ていると、是枝監督をはじめ、若松孝二監督、阪本順治監督、大森立嗣監督、沖田修一監督、白石和彌監督、河瀨直美監督ら、魅力的な監督作品への出演は枚挙にいとまがない。


「もちろん製作過程にはいろいろな形があるので一概には言えませんが、監督が『この映画を作りたい』という純度が高い作品には心動かされます。僕自身、表現には純粋さを求めたいので、そういう監督と出会えるということは、俳優という仕事をするうえで、なによりも高いモチベーションになるんです」。


今泉監督はとても信頼できる方

そんななか、巡り合った本作。井浦は「僕の一番の楽しみだったのが、今泉監督とご一緒することでした」と期待に胸を膨らませての現場だったことを明かす。


「今泉監督は『恋愛映画の旗手』などという肩書を持つ方。台本を読んだとき、『かそけきサンカヨウ』も恋愛要素もある作品ですが、それが前面に押し出されたストーリーではなく、観る人によってテーマが変わってくると感じたんです。そんな物語をどのように今泉監督が立体的に描くのか、ものすごく興味がありました」。


実際現場に入ると、今泉監督の作品に対する寄り添い方に大きな感銘を受けたという井浦。


「今泉作品を見れば監督が見えてくるというか、現場でも声一つ荒げることなく、ずっとしゃべっているわけでもなく、静かに佇んで俳優が持ってきた芝居を見つめて、受け止めてくださるんです。きっと監督のイメージと違う芝居をすることもあると思うのですが、まったく動じることなく出てきたものを見つめ、どうやって次に育てていくかを、現場の隅の方で悩んでいる。そんな姿も僕はすごく好きでした。包み隠さず、恥じらいもなく孤独と戦い続け映画作りに苦悩している……とても信頼できる方でした」。


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