スティーブン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』を筆頭に、日本のみならず世界を股にかけて活動している俳優の森崎ウィンが…ぶっ飛んだ。誕生から50年を経てもカルトアニメの金字塔として君臨する「妖怪人間ベム」を新たな視点で実写映画化した『妖怪人間ベラ』(9月11日公開)で、ベラの妖気に侵食されて狂気の淵を彷徨う男・新田康介を演じている。「思いっきり振り切れてしまっているので、もはや笑って観てほしい」と困惑を口にする森崎の新境地を聞いた。
美しい妻に可愛い息子。絵にかいたような幸せの渦中にいるはずなのに、空虚感を抱えている。そんな新田(森崎)が、あまりに凄惨な内容ゆえに封印されたアニメ「妖怪人間ベム」の最終回を見てしまったことから、恐怖と狂気の深淵を覗きこみ、現代に蘇ったベラ(emma)と対峙する。整ったルックスと爽やかな笑顔の持ち主である森崎はどこへやら、上司や隣人を悪罵し、斧を持って愛息子を追いかける。ブツブツ独り言を口にしながら未調理のソーセージを食べたり、肉の塊を手掴みで貪ったりする。
かなり怖い。しかし“恐怖”はある一定のメモリを超えると、不思議なことに“笑い”に変化する。メガフォンを取ったのは『賭ケグルイ』『ぐらんぶる』で知られる英勉監督。確信犯的に“ホラーなのに可笑しい”を狙っている。「新田のぶっ飛びぶりを表すのは、肉体的にも精神的にも消耗が激しく、撮影中は凄く追い込まれていました。でも絞り出せば絞り出すほど、英監督は爆笑する。振り切れた人間を見ると人は笑うんだと思ったし、完成した作品を観たら腑に落ちるところが沢山あった」とジャンルのツイストを実感。
パブリックイメージの真逆をいく怪演を惜しげもなく披露できたのは、俳優として掲げる信条が関係している。「僕の仕事は、求められているうちが花のいつ凋落するかわからない職業です。ならば求められているうちにどれだけ真摯に向き合えるかが勝負。それによって未来も変わる。チャンスは本気でやればやるほど得られるもの。やると決めたら120%で。それが信条です」と明かす。
ただ一点だけクレームを入れたい部分がある。「一つだけ言わせていただきたいのは、初の父親役がどうしてここまでマッドなのか!?ということ。僕が思い描く理想の父親像、理想の家族像があります。あんなに綺麗な奥さんと可愛い子供がいるのに、どうしてこんなに不幸なのか…。新田よ、もっと真面目に生きろ!」とユーモア交じりに苦言を呈する。