中村獅童×初音ミク 進化し続ける『超歌舞伎』、23万5千人が生放送で熱狂

映画・舞台 公開日:2020/08/17 3
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幕が開き、まず口上がスタート。裃(かみしも)姿の獅童から、春の『超歌舞伎』を断腸の思いで中止したこと、そんな中、この公演が実現する喜びと感謝が伝えられた。初音ミクも舞台に登場し、両人が並んで挨拶。「本日は無観客でございます。しかしながら、盛り上がらないわけがございません。なぜなら、今までの公演での皆様の笑顔、涙、ペンライトを使ってのご声援……これが私の目に、耳に、焼きついております……おいみんな!コメント待ってるぜ!」という獅童の叫びを合図に、ダイナミックなオープニング映像へとなだれ込み、観るものを一気に「千本桜」の世界へさらっていく。


舞台は神代の昔……千本桜の前に初音の前(中村蝶紫)が現れると、映像の青龍が登場。初音の前は戦いを挑むものの力及ばず、娘の美玖姫(初音ミク)に後を託して息絶える。それから千年後、枯れ果てた千本桜の前で姫がひとり寂しく舞っていると、佐藤四郎兵衛忠信(獅童)が現れる。この忠信こそ、千年前、美玖姫の母である初音の前と共に、千本桜を守護していた白狐(びゃっこ)が転生した姿だった。


最新技術の詰まったARと、生身の俳優との演技のやりとりがスムーズなのがこの『超歌舞伎』のすごいところ。まるでリアルに初音ミクが舞台に立ち、華麗に舞うかのよう。細やかな手や足の動き、目線の方向、ふわりと揺れる髪など、立体的な映像は目が離せない美しさだ。

 

『超歌舞伎』では、役者の屋号など声をかける歌舞伎の"大向う"よろしく、獅童がきまると「萬屋(よろずや)!」、初音ミクは「初音屋!」とユーザーのコメントが画面に踊る。ユニークなのは、迫力あるアクションで魅せる青龍の精に「ウロコ屋!」、女性舞踊家たちが華麗に舞う千本桜の精に「はなびら屋!」、NTTの最新技術に「電話屋(でんわや)!」と、随所に自由な大向うが掛かるところ。ユーザーがワイワイ盛り上がりながら、楽しみ方を次々と発明していくような仕組みが面白い。"それぞれの場所"で画面を見つめる「観客」たちに、一緒の空間で観ているかのような一体感を与えてくれた。



当日まで伏せられていた今回の配役だが、青龍と忠信が戦うクライマックスで明らかに。ここでは、多くの『超歌舞伎』ファンが驚いただろう。『今昔饗宴千本桜』初演時より忠信を演じてきた獅童が悪役の青龍にまわり、ずっと青龍を演じ、昨年の南座公演では数日限定の別配役版「リミテッドバージョン」で忠信役に大抜擢された澤村國矢、黒衣あるいは立師として立廻りや役者の動きなどを創ってきた中村獅一(「リミテッドバージョン」では青龍)という、これまで『超歌舞伎』」を脇から支えてきた二人が青龍を倒す忠信という大役で登場! ここではユーザーからの驚愕コメントがノンストップ状態に。


舞台上の俳優と3D映像がリアルタイムで同じ動きを見せるNTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」の「被写体抽出技術」を使って分身した獅童青龍、そしてダブル忠信が決死のファイトを見せる場面は、手に汗握る凄まじさ。青龍の精たちによる迫真の立ち廻り、バク転、側転、ジャンプと激しいアクションは、全部盛り盛りの贅沢感。"疫病の力を用いる"手強い青龍にとどめをさして力尽きた二人忠信が、最後の力を振り絞り「三千世界の人々よ、疫病収束の願いを込め、たとえこの場に集うこと叶わずとも、皆々を隔つる妨げ乗り越えて、共に心をひとつとなし、おのおのがいますところより」「数多(あまた)の人の言の葉を」「それぞれの胸に宿りし、思いのたけを灯りとした桜の色の灯(ともしび)を」「再び花を」と呼びかけると、画面はユーザーが打ち込む桜のピンク一色に。無事に疫病退散、平和が訪れ、枯れていた桜の木は無事、息を吹き返した。


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