武器はそれだけではない。英語が飛び交うアウェーな環境下にあっても、秋元は物おじすることはなかった。「自分の人間力を試されるのが好きで、ハラハラするような環境下に置かれるのも嫌いではない。日本だろうが海外だろうが、わからないと思うことがあったら素直に聞く。聞かずにわからないままやって、その姿がフィルムに残る方が恥ずかしい。たとえ上手く言葉が通じなくても、伝えようとする気持ちがあればなんとかなるもの」と笑い飛ばす。
そのオープンマインドなところが、アサシンとしてのリアクションを肉付けする上で役立った。「銃で撃たれた時の反応は当然未経験なので、周りの俳優さんに相談してリアルな経験談を聞きました。“俺は3回くらいナイフで刺されたことがある”と言われた時は、世界は広いなぁと思った」と実地に勝るものなし。
劇中では屈強な俳優チャド・マイケル・コリンズと肉弾戦も展開。しなやかに伸びる足から繰り出される強烈なハイキックと風を切り裂くようなパンチを繰り出す秋元のアクションスターぶりは一見の価値ありだが、海外の俳優のスタンスの違いをまざまざと感じたともいう。
「目力同様にアクションシーンも“もっと強く!もっと重く!”。海外の俳優さんはそれを実現するため、おのずとトレーニングせざるを得なくなる。日本で“鍛えている”と言うと“意識が高い”とか“ストイックだ”と褒められますが、海外ではそれが当たり前。その感覚は自分も持っていたいと強く思いました」と刺激を受けた。
新たな視点を得て帰国した際には、新たな接点も生まれた。「出演情報が解禁された際の反響は想像以上。アクション好きの男性やミリタリーファンの方からコメントをもらったり、今まで接点のなかった方々と触れ合うきっかけになったりと、私自身の幅も広がった気がします」と嬉しそう。ちなみに元AKB48のメンバーたちに出演を伝えたところ「山猫役なの?」と天然返答があったそうだ。
元アイドルという肩書きがウソのように、女優として頭角を現している。「小さい役を少しずつ積み重ねた結果、大きな役に繋がっている実感があります。今回は初海外作品で準主役という恵まれたポジションをいただきましたが、一度だけでは終わらせたくありません」と再びの世界進出を見据えて「外国から見た日本人女性のステレオタイプを壊すような役をやりたい。アジア人のレズビアン役やマーベルのキャラクターもやってみたい。2年以内には!」と明確な野望を抱いて、舞い降りてくるチャンスを待ち受けている。
公開日:2020年8月14日(金)
原題:SNIPER: ASSASSINʼS END
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:カーレ・アンドリュース
脚本:オリバー・トンプソン
製作:ヴィッキー・ソーサラン、 グレッグ・マルコム
製作年:2020 製作国:アメリカ
出演キャスト
ブランドン・ベケット:チャド・マイケル・コリンズ
ユキ・ミフネ(レディ・デス):秋元才加
トーマス・ベケット:トム・ベレンジャー
文・写真:石井隼人