椎名桔平、“下剋上あり”園子温ワールドは「気が気じゃなくなる」

映画・舞台 公開日:2019/10/12 8
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―改めて、今回、園さんのオリジナル作品でご一緒してみていかがでしたか?

椎名:楽しかったですよ。まあ苦しいんですけど、ホントに充実した撮影期間でしたね。以前から“園ワールド”に入ってみたい、っていう気持ちがすごくありましたので、今回、そのオリジナルの世界観の中にどっぷり入れたのでね。現場はとにかく疾走感というか、撮影の仕方が普通とは違うんですよ。いつもだったら何時くらいまでにこのシーンを撮るっていうのがあって、それまでにテストを重ねて、意見交換をして、本番に挑むっていうスタイルなんですけど、園さんはそういうのは全く関係なく、勢いのあるときにバーッと行く。園さん自身も自分で脚本を書いているんだけど、これがどうなるか見てみたいと思うみたいで、そういうときは何ページもあるシーンの本番を一気に回しちゃったり。だから、演者としては事前にどこまで準備していけばいいかがはかれないし、そのときのテンションにすぐに入らないといけないので、大変と言えば大変でした。ただそれだけに他の現場では味わえない、ライブ感みたいなものを感じられた気はします。

園:もうテストとかしませんから。本番ばっかりなんで(笑)。

椎名:毎日、どうなるかが読めないんですよね。差し込みも結構入ってきたりしますし。その日の監督の思考の方角っていうのがあるんですけど、それが想定じゃない方向を指すことも多くて。現場に行ってその場に立つまで監督がどういう指示を出してくるのかわからない。今思うとエキサイティングな時間でしたね。


―なかなか他の現場ではない経験をされたんですね。

椎名:僕も20代からこの仕事を始めて、年齢ももう若手じゃないし、そこそこキャリアもあるので、自分なりの役の作り方とか、見方っていうのがあるんですよ。でも今回はそれを真っ白にして、“園ワールド”に自分を放り投げるような感覚で作業をしようと思って。気持ちはほとんど新人のような。右って言われれば、右ですね、ってすぐに向くようなピュアなハートを持って、ただ目の前の課題に対して向かっていくっていう気持ちでやりました。そんな気持ちを持つ現場がもうあまりないですからね。どちらかと言うと「こういう役を責任持ってやってください」と言われる方が最近は多くなっていましたから。今回は逆に責任は持たなくていいんだね、あとは監督が責任を持ってくれるんだよね、っていう(笑)。



―今回はまだキャリアが浅い共演者の方も多かったと思いますが、その辺りはいかがでしたか?

椎名:先輩という立場から、経験値が足りないところが見えたりはしました。それは映像には映っていない、現場で悩んでいる姿とかで。ただ今回は僕も相当に悩んでいるくらいだから、悩むのは当然だと思うし、僕はほとんどアドバイス的なことは言わなかったんですよ。それは今回の役柄的にその方がいいかなというものあって。そんな中で、彼らがとにかくすべてをかけて演技をするんだっていう姿に非常に感銘を受けて。自分の20代の頃を思い返したりもしましたね。もがきながら、模索しながらも、役に向かっていく、そういう現場でした。我々には経験値っていうものも持ち出さなきゃいけないという役割があるように、彼らにはフレッシュさとか、うまくなくても気持ちから向かっていくこととかが求められていたと思うので、それに応えようと頑張っている姿を毎日見ていました。


―ベテラン勢も気を抜いたら食われかねないような?

椎名:ホントに下克上が起きるくらいの気持ちで向き合っていたと思います。監督もそのやる気を感じるとそれなりの撮り方をしますし。逆にわからないな、見えないなってなると、画面の中央には来れないとか。そういうのが日々現場で変わっていくのも珍しいんですけど、それが園組なんですよね。そうすると僕も含むベテラン組も気が気じゃなくなるというか、活力を与えてもらえる、そういう現場でしたね。


―村田が多面性のある人物ということで、お互いに相手の二面性や意外点はありますか?

椎名:監督は男同士で言うのも変かもしれないんですけど、かわいいというか、チャーミングなところがありますね。初見の方の前ではあまり出さないんですけど。例えば、監督の中にリズムというのがあって、たくさんあるシーンの中で、今日、これを撮りたかったんだ、っていうシーンになると、子供のような陽気さを持った演出をされたり。そういうところはぜひ皆さんにも見てもらいたいですね(笑)。

園:椎名さんとはそもそも撮影に入る前のオフの旅行先で会っちゃってますから。そのときにかなり陽気な姿を見ました。(海外の)海辺だったんでね。

椎名:お酒も飲んでるし。

園:その姿が意外でした。オフはやっぱり楽しいんだなって(笑)。


―さすがにそれは現場では見られなかったですか?

園:あそこまでのんびりとした顔は見られなかったですね。だから先に見ておけて良かったです。逆に撮影中はよく我慢してくれた、という思いが大きくて。さっき言ったように、撮影しながらシナリオを書き足すので、どんどんシーンが追加されるんですよ。さすがにそろそろ怒るんじゃないか、ちょっと怖いな、って思ってたんですけど、そんなことはなかったので助かりましたね(笑)。


文・瀧本幸恵

写真・稲澤朝博


<椎名桔平>

ヘアメイク:遠藤真稀子(UM)

スタイリスト:中川原寛(CaNN)


Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』

2019年10月11日より全世界独占配信中


監督・脚本:園子温

出演:椎名桔平、満島真之介、日南響子、鎌滝えり、

YOUNG DAIS、長谷川大 / 真飛聖、でんでん

プロデューサー:武藤大司

撮影:谷川創平 美術:松塚隆史 照明:李家俊理

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※本記事は掲載時点の情報です。

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