「腐ったら 負け」HKT48 堺萌香、涙もろい少女が踏みしめる一歩

アイドル 公開日:2020/05/15 44
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「(両親に娘が)選抜入りなんですよと言わせたかった」


2019年7月12日、HKT48の4期生が初舞台を踏んでから3周年の日、堺萌香(さかい・もえか/4期生、チームTⅡ)は、SHOWROOMの配信中、終始溢れる涙を抑えきれなかった。苦楽を共にしてきた同期が続々と選抜入りを果し前へと進むその背中を見送るしかできず、応援する親に孝行ができない自分への不甲斐なさ、どれだけ努力しても憧れの選抜に手が届かないもどかしさに。


1stシングル『スキ!スキ!スキップ!』を通じてHKT48、そして1期生の植木南央の大ファンになった堺。幼少期から手話を習い社会福祉士を目指していた少女は、2016年春、高校3年生への進級を目前に「ラストチャンス」と憧れの世界に思い飛び込む。アイドルのスタートとしては決して早くない年齢と考えていた。「焦るぐらいの気持ちでやっていきたい」とデビュー間もない頃、とある取材にて語った。そう決意した日から長い時間が流れた。やるべきことはやっているはず、それなのに…。


指原莉乃卒業記念作『意志』から1年という長いスパンを経て届けられた13thシングル『3-2』。


センターに4期生の運上弘菜という繊細さと“翳り”を感じさせるニューヒロインを迎えた今作は、今までの底抜けなまでに明るくファンシーな世界観から一転、三角関係の切ないさを歌い多彩なグループカラーに“落ち着きの”一色を加えた。この厳しい時世において13作連続の1位に輝き、カップリングも含め、52人全員が一丸となり吹かせた新たな風は、『意志』で指原から手渡された旗を大きくはためかせた。


その新風の中心にいるのは4期生だ。運上だけでなく、多彩さを武器に今やHKT48の顔の一人となった豊永阿紀、携帯ゲーム「栄光のラビリンス」CM選抜曲『おしゃべりジュークボックス』センターの地頭江音々、高身長美形メンバーユニット「Chou」の一員として輝く松本日向が選抜に名を連ね、各カップリングでも4期生は主要なポジションを担う。


今春開催の「リクエストアワー2020」にて4期生楽曲『さくらんぼを結べるか?』が5位の高順位を記録と、今年3月末をもって卒業した月足天音曰く「可愛いし個性もあって最強」な4期生時代の到来は目前まで来た。


『おしゃべり~』選抜の中に堺の姿はあった。『3-2』選抜メンバーが多く名を連ねる中「9位」という順位は彼女への期待の現れ、もっと高いところへというファンの願いの結実だ。愛著はHKT48の成長を追った『腐ったら、負け』。好きな言葉は「大丈夫」。どんな辛いことが待ち受けても、この魔法の言葉をかけて乗り越えてきた。


身長148.5センチという小柄な体に加え、常に上がった口角と笑うと三日月になる目がチャームポイントな顔は、大人ぽさを携えながらあどけなさも強く残す。STU48の沖侑果は「カワイイ。メッチャ好き」と評した。さらに本名の「さか “いも” えか」から採られた「オイモチャン」という愛らしさと脱力の良い塩梅なニックネームも相まって、常に年相応に見られず、先輩、同期、後輩からマスコット的な扱いを受けている。


その堺の名前をHKT48ファンに轟かしたのが、公演曲『くまのぬいぐるみ』における豪快な“くま投げ”。


今楽曲はブリッジ中、くまのぬいぐるみを投げあいバトンパスしていくフリがある。ただHKT48で使用されるくまは、他グループで使用されるモノと比較すると一回り以上のサイズ。そのため他メンバーが投げる際は両手の下投げがセオリーなのだが、堺は上半身が隠れてしまうほどの巨大なくまを片手で掴み、天高く美しい放物線を描くように放り投げるのだ。“小さな巨人”の剛腕の衝撃は、公演鑑賞者たちの心をことごとく鷲掴みにしていった。


一ギミックだけが舞台上の堺の持ち味ではない。小さい体をノビノビと使い常にニコニコと笑顔を浮かべては、見ていて思わずこちらも顔がほころぶような楽しく無邪気に踊る姿は思わず目を惹く。かと思えば、『雨のピアニスト』や『Faint』、のようなシリアスな楽曲になると表情を一転、ダークさも滲ませる。SKE48劇場での出張公演の際、パフォーマンスに一家言持つSKE48ファンを様々な形で虜にしたことは特筆すべきだ。


昨秋上演された48グループ総出演の舞台『仁義なき戦い』のホステスの初子役では妖艶さに加え、村重杏奈演じる金丸とのアドリブ合戦でコミカルさも光らせるなど、明暗併せ持つ巧みな表現力を徐々に開花させ続けている。


その裏には、公演の休憩の合間、スクランブル出演に備えて別公演の練習に励むなどの人知れずのたゆまぬ努力がある。ダンス未経験のスタートゆえ公演デビューは同期の中でも一足遅かった。それでも“楽しみながら”全てに臨み、各公演のユニット制覇と八面六臂の働きを見せ続ける。いつしか堺は劇場に欠かせない存在になっていた。

劇場から離れても堺はファンを楽しませることに余念がない。


見た目の幼さからくる印象とは裏腹に豊富な語彙力と切り返しでSHOWROOMでは常に澱みなくファンとの会話が繰り広げられている。その語彙力を活かした絶妙な文才でグイグイと読ませるモバイルメールは、毎日朝から夜までビッシリと送られてくる。2017年8月26日のTwitter開設翌日より毎朝必ず投稿される「おはよう」の挨拶(通称:おはようbot)や、“勝手に観光親善大使”として、生まれ育った筑後地方のオススメスポットを巡る「#筑後地方巡り」をTwitter上で展開し、その動画の撮影・編集を自ら行う…と、様々な形に挑戦しては日夜自分の魅力を開拓し続けている。


同期にして同学年、手汗過多仲間「てねっぱ同盟」(運上も一員)の小田彩加は「ファン想いの努力家」と評した。


「礼儀・感謝・笑顔」がモットーだった植木の教えが染みついたのだろうか、自分に与えられたものに、全てにひたむきに向き合う。握手会の列が次第に伸びていき、気が付けば選抜級の人気を得ていたのも納得であった。

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