渡辺麻友 ”王道アイドル”だけで語れない”暴走キャラ”のチャーミングさ
2017年も一ヵ月を切った。秋元康氏が「アイドルになるために生まれてきたような子」と称したAKB48渡辺麻友の約11年の長きアイドル人生は幕を降りようとしている。 この数カ月、各媒体が渡辺のアイドルとしての輝きをパッケージせんと、巻頭グラビアをはじめ様々な特集が組んだ。そしてAKB48としてのラストシングル『11月のアンクレット』はオリコンウィークリー1位、初週でミリオンを突破と、彼女にまつわることで見かけない日はなかった。 彼女がAKB48の門戸を叩いたのは2006年のこと。この当時のAKB48はまだ、走り出したばかりで形も見えずのいわば赤子同然のグループでした。その中で一際早く、鎬を削り合うアイドルシーン。その中心に座しながら、“なんでもあり”のAKB48の中において異端とも言うべき“古き良き”アイドル像を、ストイックなまでに守り続けてきた。それは想像を絶する苦難の道であったはずだ。様々な血の滲むような想いも経験してきただろう。バラエティ番組「Momm!!」(TBS)で「人として大切な何かを失ったような……(笑)」と語ったことも。それでも今に至るまで立ち止まることなく、立ち振る舞いから内面にいたるまで、アイドルとしての在り方の美学を貫き続けた。その姿に、新旧のメンバーはもちろん、誰もが称賛の声を送り続けた。 その結果が10月末開催の卒業コンサートの『心のプラカード』での一幕だった。これからのAKB48を託されたメンバーたちが込めたメッセージからは、渡辺への尊敬の念と愛だけが溢れていた。チーム8の倉野尾成美は、気持ちを込めすぎたあまり、肉眼ではキャッチできない程の細かい文字で長文をしたためるという愛深き故の狂気を見せた。 「11年間、信じて歩んで来た道は間違ってなかった」という言葉に込められた重みは相当なもの。今や“なんでもあり”のAKB中心にいるのは、横山由依、向井地美音、岡田奈々、高橋朱里、福岡聖菜に川本紗矢、渡辺が次代の王道と期待を寄せる小栗有以……と、彼女の背中を見続けた、真摯にアイドルであることを美とするメンバーだ。彼女が11年間アイドルであり続けたことは、決してムダではない。AKB48に渡辺麻友という存在は深く刻まれたことを証明した。 ただ、「清く正しく美しく」アイドル人生を送り続けてきた渡辺を、“王道”という一面の語りだけで終始してしまうのは、もったいないと言えばいいのだろうか……。実は彼女の本質的な魅力は“生真面目なアイドル”だけではないと思っている。むしろ素のステキ極まりない表情も含め「アイドル・渡辺麻友」だったのではないか、と思う。素の彼女は、といえばチャーミングの極みのような人だ。 デビュー間もない頃の彼女のブログ(主にスタ☆ブロ時代)は、大好きなアニメキャラについてネットリと愛情をしたため「やびゃあ!」と叫べば、時には発狂する姿を端正な文で綴り、ドが付くほどのオタクぶりをいかんなく発揮していた。「AKBINGO!」(日本テレビ)で時折見せた独特の挙動、半ば伝説と化した「AKB48+10」での木魚を叩きながら暴れ狂う姿。母親的存在の柏木由紀を相手に度々暴走…特に「AKB48のオールナイトニッポン」で自由気ままに発言する渡辺に、慌てながらツッコミを入れる柏木のやり取りは、漫才そのもの。一瞬の隙から滲み出る破綻。ステージで見せる可憐な彼女とのギャップに、“アイドルサイボーグ”という側面しか知らない人は衝撃を受けただろう。 齢を重ねAKB48の軸を一層担うようになってからは、荒ぶる姿はなりを潜めて行く。まるで自我を抑えているかのように映った。しかし、この2年で彼女は大分また自然体な”渡辺麻友らしさ”を出すことに躊躇がなくなった。Twitterでは突然「ぬぉ~!」と絶叫したかと思えば、ドラマの内容にひたすら悶え狂うツイートを連投。さらには元メンバー・仁藤萌乃に電波一歩手前の愛情表現を飛ばし続ける……と一部では「人間宣言」「キャラ変」伝えられたが、昔からの彼女を知る人なら納得の荒ぶり方だ。 中でもニコニコ生放送で見せる渡辺は、本当に最高という表現以外他ない。BBQ、屋形船で暴虐の限りを尽くし、今年9月の『#好きなんだ』発売記念生配信でも大暴走。カラオケにて、AKB48のカップリング曲を歌うという前振りから、自身が熱烈なまでの愛を注ぐ宝塚の歌唱曲を振り付きで大熱唱。指原莉乃、柏木を大困惑の渦に叩きこめば、インナーのキャミソールが見えてもアッケラカンと「下着じゃないです、アッハッハ!」と笑い飛ばす。ラストは加山雄三になりきり『サライ』を独唱と番組を完全に一人で掌握してしまった。つい先日放送されたばかりの女子会でも、見事に無双ぶりを披露した。 【レポ】指原&渡辺&柏木ニコ生女子会“まゆゆ無双”最終章「なんだかんだ…またやりたい」 舞台や仕事の際の完璧さという“裏”、俗っぽく少しダークで無邪気な“表”。その二律背反こそが、彼女の魅力をさらに高めた。それはギャップ萌え、という言葉では収まらない。近寄りがたいほどに超然たる部分と、親しみやすいにもほどがある普通の(!?)少女性が同居。この二つをないまぜにし、自らが追い求める理想のアイドル道(像)を突き進んできたからこそ、渡辺は11年という月日に渡り、誰もが愛するアイドルであり続けたのではないだろうか。 完璧に可愛く、誰よりも生真面目で優しい。そして誰よりも自由気まま。柏木の言葉を借りるなら「麻友みたいな子、ほかにいない」。彼女は最後、どんなアイドル人生を全うするのか?そして、この先の世界へ羽ばたきどんな姿を見せていくのだろうか? 一つ言えることは、これからも彼女は誰からも愛され続ける存在である、ということだけだ。 (田口俊輔)