夏競馬恒例「降級制度」が再来年廃止に、その行末とは?
既にご存知の方もいらっしゃるだろうが、夏の恒例行事となっていた降級制度が再来年から廃止される事になった。各媒体で急にサラッと発表されたが、これは相当な変革と見るべきである。 知らない方に簡潔な説明をすると、降級制度とは本賞金が毎年夏を境に半額計上されクラスの再編成が行われるというシステムを指す。例えば、1300万円の獲得賞金があり1600万下に在籍していた馬が、制度が適用されると650万円の賞金扱いとなって1000万下にクラスが落ちるという流れが起きるのである。これがもたらす最大のポイントは、何とか勝ち進んだものの現状のクラスでは頭打ちでなかなか活躍出来ないでいる馬にもう一度勝てるチャンスを与えるという所だろう。そうする事で賞金自体を稼げる機会が多くなり馬主にとって懐が潤うほか、馬自身も勝ち味を思い出せればまた走る気が起きて覚醒するキッカケにもなり得る。ファン側としても“降級組は黙って買い”説がある程に、降級して急に馬券圏内に絡んで来る穴馬が続出するケースもよく見受けられる。そういう意味では競馬を盛り上げる為の一種のコンテンツ化されていたとも言える訳だ。 逆を言えば、制度が廃止されるとクラスが上がって全く活躍しなくなった馬は維持費のかかるお荷物となってしまい、早期引退、若しくは地方への移籍が頻繁に行われる事にも繋がりかねない。これには二面性があって、メリットとしては現役馬の質の向上、地方競馬の活性化などが生まれる。動物の原則でもある弱肉強食という観点から考えれば弱い馬がどんどん淘汰され強い馬だけが生き残って行くのは凄くシンプルで明快だ。上位争いがより激しいものとなって見応えのあるレースが増えるのは良い事だろう。一方でデメリットとしては、その余波は人間界にも影響する事となり、中小クラスの個人馬主は良い馬を持てなくなって確実に業界から消えて行くと推測される。強い馬=高額馬が大多数を占める結果、社台グループの様な大手か里見氏や金子氏などの大物馬主しか所有出来なくなり、特に大きいレースは基本的に同じ勝負服ばかりが入れ替わりで勝つキャラクターの少ないメンバー構成となるに違いない。 その他、JRA側からしてもクラス別のレース数などプログラム自体を見直す必要が出て来るのでは。元々複雑で分かりにくい公営ギャンブルの中身を修正し直すとなれば、ライトなファンからすれば余計にややこしくなり競馬離れを起こす可能性も大いに考えられる。そういう意味でも、様々な部門に地味ではあるがボディーブローの様な影響を与えそうで非常に結末が不透明且つ不安な改革なのだ。 しかしながら、大きな組織が会議を行いその中で決まった事は如何ともしようがない。何事も良い事の裏には悪い事があるのは承知の上。それでも、最終的には『あの制度が無くなって競馬がより面白くなった』と言われればそれが正解なのである。安易なお上の発想だけで“降級制度廃止”をしたのではなく、その後の各路線におけるアフターケアを万全にした状態での一大改革として決定した事を願うばかりだ。