「二強は二強にして非ず」2017年天皇賞(春)

今週末に京都競馬場で行われる天皇賞春。淀の3200mを舞台に屈強な古馬たちが最強を決める見応えたっぷりのGⅠである。

特に今年の見所は何と言っても“VS”の頂上対決だろう。昨年の有馬記念でを僅かに差し切って優勝し、日本中の競馬ファンに世代交代を強くアピールした1戦だった。しかし、レースの中での僚馬であるサトノノブレスが囮となって道中に喧嘩をふっかけるシーンが物議を醸し、結果的に“サトノ&池江厩舎のチームプレーによる勝利”という位置付けのまま、両者の決着にはいささかの遺恨を残しているのだ。

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今回のメンバー構成ではさすがにその戦略も難しく、遂にガチンコ対決が見れる=真の最強を決めるレースとしてそういう観点で心待ちにしている人も少なくないだろう。筆者も同様に、両馬が直線で馬体を併せて激突する姿を見られるのかと思うと今にも立ち上がりたくなる程に興奮している次第。

が、そこを一度冷静になって考えてみたい。これまでも数々の二強対決が繰り広げられて来た天皇賞春。思い返せば、1992年メジロマックイーンVSトウカイテイオー、1996年ナリタブライアンVSマヤノトップガン、もっと古くは1985年のシンボリルドルフVSミスターシービーと、いずれも当時は絶対と目されていた2頭による直接対決がそのままワンツー決着で終わった事はないのである。競馬の格言で『二強は二強にして非ず』という言葉がある様に、毎回これら両雄の間に割って入る馬が必ず存在するのだ。1992年ならカミノクレッセ、1996年ならサクラローレル、1986年ならサクラガイセンがその大役を買って出ている。

では、今年その重責を担えそうな馬というのを探すと必然とばかりに2頭が候補に上がって来た。それが、シャケトラとアルバート。前者は前走の日経賞を制覇、その時負かした相手があのゴールドアクターなのだから相当に価値が高い。しかもデビューからまだ1年足らずで合計7戦とかなりの伸びシロがあり、天皇賞春へ向けて調整している間もぐんぐん成長している筈だ。前述2頭も油断していたら思い切りしっぺ返しを喰らう可能性は十分にある。そして後者はご存知、現役馬屈指のステイヤー。これまで勝利した重賞3戦全て3400m以上という無類のスタミナを誇り、特に前哨戦のダイヤモンドSは驚異の上がり33秒前半の末脚を使って差し切っている。6歳にしてそのパフォーマンスに更なる磨きがかかり、遂に悲願のタイトルまであと一歩という所まで来ているのだ。

もし仮にレースの道中、各馬の出し入れが激しく乱ペースとなった時にはこれら2頭の台頭も頭に置いておかなくてはなるまい。に関しては3000mの菊花賞を勝っているとは言え3200mは未経験。厳しいラップの中でこの距離を走り切るスタミナを持ち合わせているどうかは未知数な部分もある。は前年の覇者でスタミナ面については問題ないが、4コーナーで一気に被せられる展開になればまだ脆さを抱えている様な気もしなくないのだ。実際、昨年の京都で走った2戦は格下相手に僅差の勝利。直線手前で下り坂のあるコースはにとって決して有利に働くとは思えないのである。

いずれにせよ、天皇賞春というレース自体、近10年間で1番人気が連対していないという不吉なデータも存在している。つまり、これまでのレース結果から紐解けば実質2強という構図は成立し得ない事がお分かり頂けるだろう。

その他、ゴールドアクターにシュヴァルグラン、レインボーラインにディーマジェスティと例年以上の好メンバーが出揃った今年の同レース。ここで勝利した馬を中心に今年の競馬界は回って行くものと思われ、そういう意味でも非常に重要な1戦となる。筆者としてはその週末の大激戦をリアルタイムで観戦して頂きたいと強く願うばかり。勝ち馬はどうあれ歴史に残る劇的な決着となるのは間違いなく、その目にしかと焼き付けて欲しい。