「夢の紅白選抜」で奇跡の10位、市川美織の魅力
「第67回NHK紅白歌合戦」での「夢の紅白選抜」では、絶対女王である指原莉乃を破り、山本彩が見事に国民投票で1位を獲得。大波乱のまま2017年へ突入をした。大きな話題となった「夢の紅白選抜」だが、10位にランクインしたNMB48市川美織の名前が読み上げられた瞬間、NMB48メンバーは驚嘆の声を上げ、総監督・横山由依はまるで我がことのように喜び、市川を抱きしめ讃えた映像が流された。ステージ上のメンバーだけでなく、市川のTwitter上には、ステージに上がること適わなかったNMB48の山尾梨奈、明石奈津子をはじめ、東京女子流の庄司芽生、この日彼女たちが歌った『君はメロディー』作曲者の成瀬英樹氏…などが賛辞を送った。彼女の投稿には約2万5千の「いいね」がつけられた。いかに彼女が愛されているかを証明している。 「フレッシュレモン」キャラとして多くの人に親しまれ続けている市川だが、最近はNMB48のシングル選抜から外れ、2016年開催の総選挙では81位と加入以来続いていた選抜圏外となってしまうなど、試練の年となった。この時期を振り返り「自暴自棄になりかけ、アイドル以外の好きなことの職に就けないか」を真剣に考えていたとブログにて記したこともあるほど思い悩んでいたのだろう。 それでも折れずに結果、過去最大の出来事が年末に待っていた。それは地道に彼女がアイドルとして全力で走り続けてきたからだろう。 AKB48研究生時代から親しまれてきた「レモンキャラ」。幾度なくメンバーから「もうヤメたら?」の忠告を受け続けてきたが、6年経った今なお健在。時に「脱レモン」を謳ったこともあったが、捻じ曲げることなく今なおフレッシュなレモンであり続けている。ただのイロモノと思われようが武器を磨き続けてきた結果、市川のフルネームと顔が一致しない方でも「フレッシュレモンの子」と聞けば、あの子か!と膝を打つはず。この強烈なインパクトは一瞬にしてキャッチになる。頑固に己を貫き通す強い信念があったからこそ、AKB48グループトップクラスのお茶の間への浸透度を誇り今回のランクインとなったのだろう。 しかも、ただバラエティでキャラクターを押しただけでなく、どんなにツッコまれてもヘコたれない鉄の心臓とグイグイと突き進んでいく姿勢、そして時に出川哲郎や狩野英孝といった手練れの共演者を喰いかねないほどの、独特な間合いとぽんこつぶりでも強烈な印象を残す。「有吉AKB48共和国」で共演して以来、市川の実力を買い続ける有吉弘行を始め、ピコ太郎のプロデューサーと言われる古坂大魔王といった芸人たちは共演の度に市川のバラエティ適正能力を高く認めている。 掴みやすいキャラ、誰も傷つけず笑いを生み出せる姿勢(特技の頭突きでは相当泣かせてきたが)。これこそ彼女がファンの間だけでなく、お茶の間の幅広い老若男女に愛される大きな要因だろう。 高いルックスも彼女の魅力を支える。あどけなさ残る愛らしい小動物系フェイスに小柄な体、“妖精”と称されることもある20代前半には見えない浮世離れした風貌は、NMB48三田麻央をして「見た目が武器」と言わしめる。10月にはトレードマークだった髪をバッサリ、大人びた雰囲気も漂わせるように。さらにはテレビ朝日系バラエティ「ロンドンハーツ」内の企画、「奇跡の一枚カレンダー」に登場すると、いつものホンワカしたキャラからは想像できない美しさを見せて、ネットニュースにも取り上げられたほどの衝撃を与えた。レモンキャラだけが取り沙汰されがちだが、アイドルとして一線級のものを持つ。 キャラ、ルックスとメディア映えする魅力だけでなく、本来の活動のメインとなる劇場でも違った魅力を披露してくれる。AKB48在籍時から目を惹いた手数の多いダンスはNMB48移籍後、さらに成長。曲毎にキレとノビを使い分け、時に美しく、時にガムシャラ、さらには全力ダンスと多彩な魅せ方を披露する。ただ身体に躍りを染みこませるのではなく、頭でシッカリ曲イメージを描きながらその都度変化させていく。頼りなさげなキャラからは想像できないほどにステージ上の市川には頼もしさを覚える。 前所属のチームBⅡでは(こう見えて)年長メンバーとして、後輩メンバーの相談に乗り、シッカリとコミュニケーションを取るなどして空気を活性化させるなど自分のこと以上にメンバーへの気遣いを示している。同い年の磯佳奈江、AKB48竹内美宥、後輩の山尾、薮下柊、木下百花、…数え上げればキリがないほど彼女を慕うメンバーは数限りない。 何よりへこたれない姿勢。これこそが市川最大の武器にして魅力ではないか。様々な芸能活動を経てきた苦労人として知られる市川。AKB48に加入してからも、目立つ機会はあるものの、選抜という形での結果は中々残せず。それでも不満を口にすることなくひたすら鍛錬し続けてきた。結果が出ず折れかけても、むしろそれは甘い考えだと、自分を正すために、ついに今年トレードマークであったロングヘア―をバッサリと切った。それが結果として彼女の魅力を再び大きく開花させた。彼女のどんな時でも前を向く姿勢を渡辺美優紀も過去に「尊敬してるよ!」という言葉を残したほどだ。 バラエティタレントとしても、アイドルとしても高いレベルを持ち、勉強家で努力家。真摯で負けず嫌い、そんな人間力溢れる市川は長い時間をかけやっと、紅白歌合戦という大舞台で大輪の花を咲かせた。逆境をバネに市川は躍進の勢いを蓄えた後はどこでその勢いが爆発するのだろうか?楽しみでしょうがない。 今年の書初めに市川は力強く「売れる」の三文字を記した。その想いが叶うのもそう遠くないだろう。(田口俊輔) 写真(C)NMB48