井上陽水 12万人動員の全国57公演を完走、軽妙トークにファン爆笑
昨年、カヴァーアルバム『UNITED COVER 2』をリリースして以降、昨年9月よりスタートした井上陽水の全国ツアーが11月13日、長野ホクト文化ホールにて終了した。日本屈指のトップミュージシャンを率いたロングツアーは、各会場満員御礼。全国で12万人を動員した。 『カナリア』『Make-up Shadow』『闇夜の国から』など、40年以上のキャリアから各時代ごとの名曲を序盤から惜しげもなく披露して始まったコンサート。 会場を埋めたファンへの冒頭の挨拶では 「長野の皆さんは1人あたりの野菜の消費量が全国1位、塩分も控えめ。そんな皆さんの健康志向にあやかろうと、今回のツアーの最終日を長野にさせていただきました。」 とジョークを飛ばすと、大きな笑いが起こった。 今年68歳を迎えた井上陽水は、この日、自らの加齢による物忘れの話や、健康についての話を自虐交じりに話し、井上陽水と同じ年代であろう多くのファンは爆笑。この軽妙な語り口も井上陽水の大きな魅力の1つ。 冗談交じりに“宿敵”と語る(メル友ではあるらしい)、吉田拓郎の名曲『リンゴ』をカヴァー。 「自分は浪人生時代に、ザ・フォーク・クルセダーズの帰ってきたヨッパライを聴いて、『自分も音楽で食べていけるのでは』と思った」などというエピソードとともに、ザ・フォーク・クルセダーズの主要メンバーでもある北山修、加藤和彦の『あの素晴しい愛をもう一度』を披露すると、観衆は当時の自分の思い出と重ねあわせながら耳を傾けていたようだ。 自身が一番好きなテレビ番組と語るNHK「ブラタモリ」のテーマソングである『女神』『瞬き』など、今回のツアーのタイトルにもなっている『UNITED COVER 2』の収録曲も多数演奏された。 後半戦はボブ・ディランの『Knockin’ on Heaven’s Door』のカヴァーから始まり、ディランがノーベル文学賞を受賞をしたことにも触れ、「少なからず影響を受けた」と語った。 この日のライブでは報道番組「筑紫哲也 NEWS23」のテーマソングとなっていた『最後のニュース』が歌われ、戦争、人口問題、エネルギー資源、自然環境、ジェンダーなど、この曲がリリースされた1989年代当時、世界が抱えていた様々な問題が歌詞に込められたものだが、昨今の世界情勢と照らし合わせると、ボブ・ディランや『最後のニュース』の歌詞は1人1人の心に深く突き刺さるものとなった。 終盤は『少年時代』『氷の世界』『夢の中へ』など大ヒット曲の数々も惜しみなく披露され、会場は総立ち。ファイナルに相応しく、万雷の拍手の中、今回のツアーは幕を閉じた。 井上陽水、年を重ねることについての悲哀や健康について笑いを生みながら、全国57公演のツアーを完走する気力体力は、同世代のファンにとって大きな力を与えていることは間違いないようだ。 (写真)三浦憲治