THE BACK HORN、片平里菜が魂に響く強く優しい音の競演
10月18日に恵比寿LIQUIDROOMにて、ビクターロック祭り 番外編「IchigoIchie Join 5」が開催された。5回目の開催となる今回は、福島出身のメンバーがいるTHE BACK HORNとかねてより交流のある同郷福島出身の片平里菜の出演。開催告知から話題をさらった、そのライブの模様をお届けする。 10月18日(火)リキッドルームにて、『ビクターロック祭り番外編 ichigoichie join5』が行われた。今回はビクター/スピードスターレコーズ所属のTHE BACK HORN、そして彼らと以前から親交のある片平里菜の2マン。 先攻は片平里菜。メンバーの伊澤一葉のピアノと自身のアコースティック・ギターだけで、「この空を上手に飛ぶには」でスタート。そのまま歌とピアノとアコギだけで次の「夏の夜」に移り、1コーラス終わったところでギター佐々木“コジロー”貴之&ベース須藤優&ドラム玉田豊夢による超強力なバンド・サウンドが、スッと曲に加わっていく。最初のMCで「どうも、片平里菜です。今日はほんとに大好きなロック・バンド、THE BACK HORNとの2マンです!」とあいさつ。最近は弾き語りで各地を飛び回っていたそうで、「今日は久しぶりのバンド編成でのライブです。今日来れた方は、レアだと思っていただければ!」と告げる。 続くアップテンポな「女の子は泣かない」でフロアを揺らし、「煙たい」ではアコースティック・サウンドにのせたスポークン・ワードのようなボーカルで、オーディエンスの耳と目を釘付けにする。 2回目のMCで、THE BACK HORNにすごくシンパシーを持っていること、自分もTHE BACK HORNの菅波栄純&松田晋二と同じく福島出身で、つい最近まで地元に住んでいたこと、彼らと初めて出会ったのも福島であることなどを言葉にしたのち、3・11の震災以降、ハードコア・パンクのバンドが自分の地元にやって来るようになった、その時ロックが自分の中に降ってきた、自分のヒーローは彼らである──という話から、まだ音源化されていない曲「ロックバンドがやってきた」を披露。 この曲でステージの上と下の距離をぐっと近づけてから、アッパーなダンス・チューン「BAD GIRL」へ。ギターを置き、ハンドマイクでステージの端から端まで動きながら「バックホーンの時、盛り上がるんでしょ? 今も盛り上がってください!」とあおり、各メンバーのソロに続いて自分もアカペラを聴かせ、「まだまだいけるでしょ! バックホーンのライブでいつもみんなのこと見てるんだからね!」とコール&レスポンスを求める。途中「ハッピーバースデー、栄純!」と、この日の2日前だったギターの菅波栄純の37歳の誕生日を祝うコールをはさんだりもする。 「福島と東京を行ったりきたりしていた頃に生まれた歌を歌います」という紹介で始まった「Come Back Home」では、サビにさしかかるとマイクを離れ、フロアにシンガロングを促す。2コーラス目でいっそう大きくなったシンガロングの声を、「この曲でバンド演奏は終わりです。早く終わらせたくないので、いっぱい歌ってください!」と、さらに大きくしていく。 バンドがステージを下りたあと、ラストは自身の歌とギターだけ、マイクもPAもなしの生声&生ギター状態で「始まりに」を届け 、感動的にしめくくられた。 後攻のTHE BACK HORNは「世界を撃て」でスタート。「リキッド! こんばんは、THE BACK HORNです!」という山田将司(vo)の雄叫びで曲に突入するや、フロアから数々の拳が突き上げられる。続く「戦う君よ」では山田将司、頭の1ラインだけ歌って、あとは早くもボーカルをフロアに預けてしまう。フロア、絶叫のような歌でそれに応える。 MC担当のドラム松田晋二が「ライブハウスでは絶対ありえないような企画です」「男くさいバンドと強い女の子の2マンを最後まで楽しんでくれればと思います」と言葉をはさんでから、「セレナーデ」「風船」「悪人」と、「超重い」「超ではないが重い」「重い上にラウド」な三連発で、場の空気を変える。 松田が、気づけばデビュー以来18年、ずっとビクターと一緒にやってきたことを話し、「栄純、お礼言わないと」と片平里菜のハッピーバースデーコールへのお礼の言葉を促したことで、実はベースの岡峰光舟も4日前に誕生日だったし、山田将司も10日前に誕生日だったことが明かされ、フロアが笑いに包まれる。 自分たちの始まりとこれまでやってきたことと現在とこれからを歌う「その先へ」、サビに突入するたびにいつどこのどんな会場のフロアもたちどころにカオスと化す「刃」、と、ライブ・アンセムをたたみかけ、昨年のアルバム『運命開花』収録曲であり、福島の県民球団福島ホープスの公式サポートソングである「魂のアリバイ」で、フロアから挙がる腕の数がこの日最大になる。「最後の曲です、また会おうぜ! THE BACK HORNでした!」という将司の言葉から、3人のインプロでしばらくひっぱったのちに栄純がイントロのリフを弾き始めた瞬間に大歓声が起きた「コバルトブルー」で、本編が終了。 アンコールでは、このライブの翌日がリリース日である(曰く「だから今日は着荷日、フラゲ日ね」)ニューシングル「With You」をライブで初披露。山田将司、「これは今日だけかもしれないからね。しっかり目に焼きつけていって」と言いながらピアノを弾きながらおそらくこのバンド史上もっともストレートでポジティブなラブ・バラードを切々と歌う。 そして、THE BACK HORNのTシャツ姿で片平里菜が登場。福島の『トロロロックフェス』にTHE BACK HORNが出た時に片平里菜のお兄さんが観に行って、あとでそのフェスのテレビ放送をお兄さんが家で観ていてTHE BACK HORNを知ったこと、でも当時小学生だった自分はTHE BACK HORNが怖くて、お兄さんが歌うと「やめて!」と言っていた──と明かす。そして、「バックホーンの……変態? というか、エロさが怖かったんだと思います」というオチで、笑っていたオーディエンスをさらに笑わせつつも「……なるほど、うん」と納得させたりもする。 「自分の中ではいちばんロックな曲」と、最新アルバムのタイトル・チューンで、HAWAIIAN6安野雄太のアコースティック・ギターと歌だけで収録されている「最高の仕打ち」を5人でプレイ。片平里菜と山田将司が時にハモリを聴かせ、時に交互に歌い、終盤で片平里菜のアカペラになったら途中から将司がハモリを重ねていく、その美しさにオーディエンスみんなじっと耳を傾ける。曲終わりで大きな拍手が響き、次曲のイントロが始まるとその拍手が歓声に変わった。最後の曲はTHE BACK HORNのデビューシングル「サニー」。1コーラス目を山田将司が歌い、2コーラス目で片平里菜が歌い出すとさらに大きな歓声が挙がり、最後のサビでふたりがユニゾンでボーカルをとると、フロアはこの日もっとも大きな歓声とシンガロングに包まれた。 この『ビクターロック祭り番外編』、次回は新人アーティストのサーキットイベント『Dog Run Circuit』として、11月3日(木祝)に新宿のライブハウス3会場、Marz、Marbe、Motionで、19アクトを集めて開催される。そして2017年3月18日には幕張メッセにて、4回目の『ビクターロック祭り』が行われることも決定している。 (Text by 兵庫慎司、カメラ/上山陽介)