甲斐よしひろ Billboard Liveツアーが名古屋からスタート
甲斐よしひろのライブ・ツアー“Billboard LIVE 2016 EAST FROM WEST”が5月7日、名古屋BLUE NOTEで開幕した。 コーエン兄弟の映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」の中のセリフ「古くて、新しけりゃ、フォーク・ソングだ」にインスパイアされて昨年実現したこのライブ・ツアーは、「フォークをしっかりやる」(甲斐)というのがテーマだが、それは具体的にはアコースティック・ギター、ウッドベース、そしてフィドルという編成によるアメリカン・フォークに根ざしたアレンジで、膨大な自身のレパートリーのなかから隠れた名曲とも言うべきナンバーに新たな光を当てるというものだ。2年目となる今回は、そのコンセプトがいっそう鮮やかに感じられて、1曲1曲の歌詞世界の広がりやメロディーラインの味わい深い魅力を再確認することになった。 甲斐はまずギターとのデュオで2曲をしっとりと歌って、会場の空気をあっさり自分の色に染めてしまったのだが、その背景には例えば変則チューニングのギターで繊細なアルペジオを聴かせる鈴木健太(from D.W.ニコルズ)のプレイがあり、さらには3曲目で加わった木村将之のボウイング(弓を使った演奏)によるベースの音がボーカルの表情に奥行きを加え、ただ「歌を聴かせる」「歌詞を際立たせる」ということだけに終わらないこのツアーの楽しみをいきなり実感することになる。 そしてフィドルの磯部舞子が加わった「ブラッディマリー」で、最初のクライマックスが訪れた。フィドルのノスタルジックな音色が、アメリカン・フォークのルーツでもあるアイリッシュの味わいを引き寄せ、忘れられない記憶のような滋味を含んだそのバンド・アンサンブルがそこで歌われる酒にまつわる切ない感傷をロマンティックな思い出に昇華してしまうのだ。 もっとも、そうした抒情的な感動で酔わせるだけではないのが、このツアーの大事なポイント。往年のリズム&ブルースの思わせるウッドベースの骨太なグルーヴに客席が揺れ始めると、『冷血(コールド・ブラッド)』では一転、アコースティックでありながら突き刺さるような切れ味の演奏でオーディエンスを煽り、『破れたハートを売り物に』ではいわゆるロック・コンサート以上の熱気のなかで大合唱となった。 ロック・バンド編成では味わえないボーカルの繊細な表情を堪能しながら、しかもバンド・アンサンブルの生々しいグルーヴも楽しめるライブ。ツアーはこの後、5月12日と13日のBillboard Live OSAKA、さらにほその後のBillboard Live TOKYO公演と続いていく。バンド・アンサンブルはさらに深みを増し、いよいよ楽曲の新しい魅力が際立つステージになっていくに違いない。 TEXT:兼田達矢 PHOTO:2015年ツアー時 ■甲斐よしひろ“Billboard Live2016 EAST FROM WEST” 5/12(木)大阪・Billboard Live OSAKA 5/13(金)大阪・Billboard Live OSAKA 6/3(金)大阪・Billboard Live OSAKA 6/4(土)大阪・Billboard Live OSAKA 5/21(土)東京・Billboard Live TOKYO 5/22(日)東京・Billboard Live TOKYO 5/29(日)東京・Billboard Live TOKYO