AKB48次世代エース向井地美音が乗り越えた重圧
“成功の鍵は責任である。自らが責任をもつことである。あらゆることがそこから始まる”経営学者ピーター・ドラッカーの言葉をまとめた箴言集「プロフェッショナルの原点」の、とある一節にこうある。 “責任”という重圧を負い、失敗を恐れず取り組み自分自身を律することで人は成長し、その姿勢を貫くことがやがて成功へと繋がるという金言だ。 この言葉を芸能界という特殊な世界に当てはめることができるかは分からない。ただ、今この言葉通りの姿勢を見せる芸能人、ことアイドル…中でもAKB48に当てはめるとするならば、向井地美音が体現しているのではないかと筆者は思う。 次世代のエース候補が多くひしめくAKB48。良質なメンバーが多いということは、つまるところ個々に与えられたチャンスというものは必然的に限られることになる。そこで結果を残すこととなると並大抵の難しさではない。特に向井地は、可憐なルックスに加え、元子役という華々しい経歴の持ち主であることから、加入当初から多大なる注目を浴び、さらには2014年4月開催の「AKB48リクエストアワーセットリストベスト200 2014」にて加入1年にして、大島優子から『ヘビーローテーション』センターのポジションを託され、リクアワの3週間後に始まったTeam4「アイドルの夜明け」公演において、前田敦子、渡辺麻友ら歴代センターが紡いできた名曲『残念少女』のセンターに起用されるなど、相次いで大役を担うこととなった。 もちろん期待の表れなのは間違いない。ただ、並の人間ならあまりのプレッシャーに耐えられないほどの大きな役目だ。さらには偉大なる先輩との比較、心無い声等ネガティブな反応も少なくない。そうした、重圧の中で向井地が見せた振る舞いは、新人らしからぬ威厳を感じさせるものだった。自らにかかる次代の担い手としての期待を受けつつ、その全てを全力で務めているように映った。ひいては向井地は大舞台を任せるに足る存在であることの証明にもなった。 こうした積み重ねが彼女を覚醒させたのだろう。2015年2月11日、向井地は自らの生誕祭にて「AKBを引っ張っていけるような存在になってAKBに恩返しをしたいという夢が出来たので、受け身ではなく自分から行動して16人選抜に選ばれるように頑張りたいと思います!」と語り始めた。常々AKB48に救われたと語る彼女は、AKB48のために自分が何かしたいというグループへの貢献のために、己が次なるAKB48の顔になるのだと宣言したのだ。 その気持ちはただの放言ではなかった。元来持っていたタイトなパフォーマンスは、2015年3月の組閣以降加入したTeamKに移籍後にキレを増し、可愛さと格好の良さを併せ持った姿を披露。風格すら漂わせるまでに成長していた。さらにTeamKでは松井珠理奈、山本彩を両翼に迎え、体育会系・武闘派TeamKの象徴とも言える楽曲『転がる石になれ』でセンターに立つ。48グループの看板にしてパフォーマンス力も折り紙付きの二人を従えるという、並の神経では立ち回ることが難しいポジション。そこでも向井地は埋もれるどころか、AKB48の未来はここにあるということを体現するかのような堂々たる立ち姿で応えた。 峯岸みなみ体制後、Team Kにとって初のシングル曲となった『お姉さんの独り言』(『唇にBe My Baby』カップリング)においてもセンターを任されることに。溌剌とした愛らしさを全開で振りまく向井地の魅力と、Kの特色であるバキッとしたダンスにガーリーな世界観を加えたサウンドはTeam Kには新たな風を呼び込んだ。 劇場公演はもちろん、握手会での対応、毎日のように更新されるGoogle+など、応援してくれるファン全員に楽しんでもらうための行動を行う。向井地が掲げる座右の銘「一所懸命」を体現するように活動し、その姿勢が結果彼女を最高の形で成長へと繋がっているのだ。大きな壁がやって来る度に、向井地は最大限努力して、その壁を乗り越えていく。超える度に課される役目。彼女は慢心というものを一切見せず最高の形で、与えられた“責任”を全うし、自らをさらなる高みへと押し上げているのだ。 43rdシングル『君はメロディー』で次世代メンバーとして選抜入りを果たした。発売の際に彼女はこうGoogle+に投稿している。 「先輩方が作り上げてくださったこれまでの10年と、私たち現役メンバーが紡いでいくこれからの10年。『君はメロディー』を通して、その歴史を繋げる大きな存在になれるように、頑張ります」 その意思は来る44thシングルのセンターという大役を担うことで、早くも形となる。与えられた責務に真摯に向き合い、乗り越えてきたからこその結果がセンターというポジションへと結実したのでしょう。運営としての目論見は色々とあるだろうが、この抜擢は冒険とも言えなくない。だが確実に言えるのは、向井地ならば、きっとこの役目を全力で果たしてくれるだろうということだ。 センター発表後のGoogle+にはこう投稿した「夢を叶える大きなチャンスが今目の前にやってきました。私はこのためにここまで頑張ってきたんだ。ほんとは怖いし、不安だし、私に何ができるのか分からないけど、でももう自信のない自分は終わり。いつも支えてくださる皆さんと、AKB48を愛する気持ちがあればきっと大丈夫!大好きなAKB48を未来に繋げたい。その一心で、センターとして精一杯頑張ります」 先日開催されたAKB48単独コンサートでは期待や圧をも吹き飛ばすほどの輝きを放っていた。初日終盤の『大声ダイヤモンド』でセンターを務めた彼女は、AKB48を担うに相応しい姿だった。150センチの小さな身体が大会場で躍動した。 AKB48を牽引する立場を与えられたと同時に、44枚目のシングルは新たな出発点でもある。今年の生誕祭では、総選挙にて16位以内に入ると向井地は宣言した。大役と共に自らに課した約束、それを彼女が超える時にさらなる飛躍が待っていることだろう。(田口俊輔) 写真(C)AKS