横山由依は総監督としてやっていけるのか?
前総監督・高橋みなみから「総監督」を引き継ぎ、昨年12月をもって走り出したAKB48横山由依体制。「AKB48のライバルはAKB48です。私たちが超えなければならない壁は、今までのAKB48なんじゃないかと思いました」と横山は10周年記念公演において偉大なる先人越えを高らかに宣言した。 「AKBリクエストアワーセットリストベスト100 2016」はその言葉は真意なのかを証明する試金石となった。 AKB48単独、そしてグループ全体と計6日間開催されたリクアワ、その全日において横山は色んな意味で目立っていた。MCにおいては常にてんやわんや。度々脱線しかけてはメンバーからのフォローが入り、峯岸みなみには「(話の着地点を)どこに持っていこうとしたの?」とツッコまれる始末。ついには「たかみなさんて、すごかってんなぁ」という心の声をポロリとこぼしてしまう。無難、という言葉からは程遠い彼女の一挙手一投足にハラハラした人も多かったはずだ。 当の横山本人も「話をまとめるのが苦手で…」と自らのトーク力に危機感を持っている。これまでも横山は、アドリブ対応を得意としてきたわけではない。前任者の高橋は、瞬間ごとにメンバーをケアする精神的支柱であり、負の空気でさえもガラリと変える陽の力をアドリブで発揮し停滞する空気を打破してきた。まさに「リーダー」とも言える統率力を見せてきた高橋みなみという一騎当千の存在の正当後継者として果たして横山は適任なのか?という議論は未だ尽きない。 10年という長きに渡る時間で様々な伝説を作り上げ、カリスマ性に富んだ高橋と比べること自体が、横山にとっては酷な話だ。だからといって、横山が高橋に劣っているか?と問われれば全くそんなことはない。むしろ、高橋とは違う横山流のリーダーシップは、AKB48にとって新たなグル―プを一塊にする要因を生み出しているからだ。 話は2013年7月22日にさかのぼる。 篠田麻里子から引き継ぎ、チームAキャプテンに就任した際に横山は「先輩や後輩も居心地のよい、みんなで助け合って、楽しいこともつらいことも悲しいときもみんなで一緒に乗り越えていけたらいいなと思います」、そして「背中で見せることはできないかもしれませんが、みんなと一緒の目線でいろんな感情、喜怒哀楽を共にしていきたいと思います」と語っていた。横山は高橋が大切にした「ファンの目線」を軸にし、偉大なる先輩たちの薫陶を受けつつ、全く違う“共に歩む”という姿勢で、チームを引き締めようとしたのだ。 元々努力家である彼女は時に失敗しつつも、チームのことを想う姿勢を真摯な態度を持って示した。その姿を見て当時の若手たちは私たちが「何とかして横山を助けねば!」と奮起し心身ともに成長した。その成長は見事に現在に繋がり、大島涼花がチームBの副キャプテンとなり、田野優花はチームKのエース格へと登り詰め、高橋朱里はチーム4のキャプテンに就任と現在のAKB48の中心を担う面々に成長したという証拠として表れた。この時のチームA事情について高橋朱里は「横山さんをみんなで支えなくちゃと思った」と振り返っている。自我を若手に芽生えさせたという形で、横山は高橋とはまた別の形でAKB48の活性化を促したのだ。 先述のリクエストアワードに関しても、横山が一人でガツガツとこなしていればMVPとも言える働きを見せた宮崎美穂はもちろん、岡田奈々ら若手メンバーたちも積極的に前に出る機会も限られたことだろう。「人に頼りなさい」という高橋からの金言通りに横山は人に頼りことでチームを一つの塊に仕上げているのだ。 その、横山の姿勢は、先日2月10日に初日を迎えたチームA新公演「M.T.に捧ぐ」において完全に発揮された。 次代のエース候補である宮脇咲良と大和田南那はその呼称に相応しいパフォーマンスを見せ、全ての瞬間で白間美瑠は目を惹いた。山田菜々美、谷口めぐは見つかる日もそう遠くはない煌めきを放ち、この日を持って昇格を果たした新星・樋渡結依はその期待のさらなる上を行く振る舞いを見せた。屋台骨として堅実な回しを見せた副キャプテン・中村麻里子。宮崎美穂はリクアワで見せた勢いを新公演においても発揮。そして横山自身は…MCにおいて大家志津香ら賑やかなメンバーをイナす場面や、谷口と入山杏奈のやり取りを円滑に進めるなど、バランサーとして個々を引き立たせた。メンバー各々がそれぞれの持ち味を存分に発揮、久々の新公演ということを差し引いても非常に見ごたえ十分な舞台に仕上げていた。 「チームA全員で作り上げました」。公演後の手書きコメントに横山はこう記した。まさに“全員が主役”という言葉が似合う、全員が一丸となり足並みを揃え着実に大切に前へ進もうとした姿の表れに映った。公演最後、昇格発表の報告に涙する樋渡の横で優しく寄り添いながら話しかけ続ける横山の姿に、彼女の共に歩むという精神の全てが表れていたような気がする。 「人に頼りなさい」と共に、高橋からは「自分らしくやりなさい」という言葉も預けられたという。横山らしく一歩引きながら足並みを揃えることに注力したことで、新たな息吹を感じさせる公演を生み出し、総監督、リーダーとしての役目を見事果たした一夜になった。 高橋みなみは劇場にてこの姿を涙ながらに見守ったという。彼女にもし不安という言葉が頭の片隅にこの日まであったとしたら、その二文字はこの瞬間消え去ったことだろう。 着々と進みつつあるAKB48の世代交代。となれば、今まで先輩たちが築き上げて来た土台の上に立った次代を担うものたちの奮起がこれからは必須になる。その時は、手を取りあい共に歩むことで道を切り開く横山由依総監督の存在が大きな力となるだろう。