2015年 AKB48グループシングル表題曲を徹底検証
「AKB48単独リクエストアワー セットリストベスト100 2016」発表が始まる中、今稿では2015年AKB48グループのシングル表題曲の各グループに表れた特色を検証していきます。 AKB48グループ国内4グループが、2015年に発売したシングルは、トータルで12枚(藤田奈那のソロは除く)。その全てが年間売り上げトップ30位以内にランクインという驚異的な数値。まさに国民的アイドルグループと呼ぶに相応しい活躍でした。 AKB48 2011年から5年連続でオリコンチャートの1~4位を独占という驚異的な記録を誇るAKB48。2015年は今までにないほど実験的な楽曲が揃った印象です。 変化が如実に表れたのが、5月に発売された『僕たちは戦わない』。本来なら『ポニーテールとシュシュ』『ラブラドール・レトリバー』のような“夏ソング”が定番となっていたこの時期のシングルにおいて、強烈なメッセージ性を込めた楽曲を投下。ボトムが重いエレクトロサウンドが「憎しみの連鎖を断ち切る」という言葉をさらに強める。選抜総選挙投票券が封入されているとは言え、AKB48屈指のシリアスさを誇る今曲が2015年一番の売り上げを誇ったというのも面白い話です。 お祭りソングな『ハロウィン・ナイト』も、対比となった『恋するフォーチュンクッキー』や『心のプラカード』のように背中押す明るさあふれる楽曲に対して、暗がりが似合う妖しい夜のサウンド。初のアナログ発売に挑戦というクラブシーンを強く意識した展開も、今までにありませんでした。 AKB48、10年の歴史を繙いてもここまで差異ある楽曲がチャートを賑わすことになったのは初めてでしょう。だからこそ、王道AKB48サウンドへ回帰した『唇にBe My Baby』が一番違和感を覚えさせたのも今までにない面白い展開です。 高橋みなみの卒業発表後、3月の組閣による新体制のスタート、そして横山由依が2代目総監督に就任と次代の形を模索するAKB48の未来を、まずは曲から示すという気概が形になったかのような楽曲構成となっている印象です。 SKE48 SKE48は発売されたどの楽曲にも、その勢い全てが表れていた。『コケティッシュ渋滞中』は『バズーカ砲発射!』のフジノタカフミと、近年のAKB48グループ楽曲のキーマンの一人と言われる佐々木裕氏によるSKE48の魅力である「がむしゃらさ」がこれでもかと活きた楽曲。長らくなりを潜めていた『1!2!3!4! ヨロシク!』の系譜に連なる、ホーンセクションの賑やかなディスコサウンドが、彼女たちのカラッとした元気さをより引き立てている。自身最高の売り上げを記録したのもうなずける。 その流れからなのか次作『前のめり』も、切なさあふれる旋律ながら疾走感と共に汗を感じさせるポジティブな言葉が味わい深い。松井玲奈最後の参加作ながら、別れを漂わすのではなく、むしろ次なるステップを喚起させるSKE48版『前しか向かねえ』な仕上がりは、卒業にあたり「もっと上を目指す気持ちを後輩たちに持ってほしい」と語った、松井玲奈からの叱咤激励のようにも聴こえる。この曲を境に、松井珠理奈のSKE48への本格帰還や、新世代が躍動をし始めたのも偶然ではない気がします。 11月に発売された派生ユニットシングルは王道感煌めくラブ・クレッシェンド『コップの中の木漏れ日』から、昭和サイケ歌謡テイストなフルマリオン『愛してるとか、愛してたとか』、軍歌を彷彿とさせるマーチが勇ましくもヘンテコ(褒め言葉)なデッドストックダイヤモンド『平民出馬宣言』と、バラエティ豊かなものが揃い、各々個性も今まで以上に輝いていた。こうした冒険から生まれた新たなエッセンスが、2016年のSKE48に面白い変化をもたらしていきそうです。 NMB48 白間美瑠と矢倉楓子をセンターに配置した『らしくない』から流動的な形に挑戦しているNMB48は2015年も新たな形を模索する楽曲が多かった。発売されたシングルは3枚。奇しくも『コケティッシュ渋滞中』と同日発売となった『Don’t look back!』は山田菜々が参加した最後の曲。『コケティッシュ渋滞中』が陽ならこちらはダンスを強く意識し、PVのモノトーンぶりがよく似合う”NMB48らしくない”翳りある展開からして何かが違うと感じさせる。お馴染となった水着曲『ドリアン少年』はこれぞNMB48!な賑やかかつポップなダンスが映えるナンバー。ただここでも『Don’t look back!』で初選抜を果たした須藤凜々花をセンターに迎えるという変化をもたらす。その後の須藤の急激な成長ぶりをみるに、この判断は大正解だったと言えます。 2015年のNMB48楽曲を語る上で外せないのは秋元康氏が「新しい試みかもしれない」と語った『Must be now』でしょう。山本彩が『高嶺の林檎』以来4作ぶりにセンターに返り咲き、選抜メンバーも9人編成とミニマル。さらに「壁を壊すのは今しかない」という前傾姿勢な歌詞に、過去最高難度のダンスと攻めの姿勢が貫かれた楽曲。NMB48に今までなかった洋楽志向の強いダンスナンバーをもたらしたのは『Green Flash』『Don’t look back!』作者のCarlos K.、NMB48の反骨精神を体現するのに抜群の相性を見せている。もちろんこの形に賛否はあったものの、今後新たな歩みを進めるNMB48にとって、このダンスナンバーは大きな指標となったはずです。 HKT48 HKT48は2枚と他グループと比べると少し寂しい印象だ。だが、たった2枚ながらHKT48の“らしさ”が光った楽曲が並ぶことに。『12秒』は宮脇咲良初のセンター曲(兒玉遥との二頭体制)。植木南央、村重杏奈が久々の選抜復帰ということもあり、初期の溌剌とした元気さが輝きながらサビの泣きメロで少し大人びた面が表れた佳曲。末っ子として、ただ「可愛い」だけのイメージから少しずつ脱皮しようとしている姿が表れていました。 そして「HKT48 feat.氣志團」名義で発売された『しぇからしか!』は、彼女たちが推し進めて来たエンタメ路線の真髄が爆発。『One Night Carnival』にリスペクトを捧げた合いの手とダンス、合間に入る綾小路翔と早乙女光の絶妙なコーラスに負けじとハッチャケ気味のボーカルをこちらでも大活躍な佐々木裕氏が賑やかかつ熱くコンポーズ。MVも含めて、目にも耳にも楽しいHKT48を象徴するかのような仕上がりになっている。 各グループどの作品もカップリング含め、多様かつ新たな姿を示していたのが非常に面白かった。2016年もどんなカラフルなサウンドで楽しませてくれるのだろう?(田口俊輔) 写真(C)AKS