AKB48次世代メンバーが「これからの10年」感じさせた特別公演
現役メンバーと卒業生らが邂逅し、AKB48というグループの10年の足跡を辿る一夜となった「10周年記念特別公演」は“お祭り”という側面を持ちながらも、この日をもって高橋みなみから横山由依へと総監督は受け継がれた記念すべき一日だった。 この日を持ってAKB48は新たに生まれ変わった。それは、横山が公演最後に述べた言葉に集約されていた。 「やっぱりAKB48は1期生、2期生、3期生始めとする先輩メンバーとファンの方々が作り上げてくれたんだなと感じました。そこで一つ感じました。『AKB48のライバルはAKB48』です。私たちが最も超えなければいけない目の前にある大きな壁は今までのAKB48なんじゃないかな」 前田敦子は登場した瞬間にこの日一番の歓声を浴びた。歌にダンスに喋りも満点、大島優子の強烈なスター性は真似しようと思って簡単にできるものではない。板野友美の計算外のところから生まれる天然の可愛さ、河西智美の小悪魔ぶりは今なお健在。篠田麻里子の存在感は唯一無二。秋元才加は現役時代さながらのハイレベルなパフォーマンスを見せた。そして現役である小嶋陽菜はこの日も一言発するだけで場の空気をすべて持って行く。全員が全員、圧巻の振る舞いを見せた。 横山はその後「先輩たちの活躍を見ていたら自分たちはまだまだだなと思いましたし、みんなもそう思っていると思います」とも語る。確かに、2時間半に渡るライブにおいて、先達が放った輝きは別格と言ってもいいものだった。仕方ない、レジェンドと呼ばれるメンバーたちは0から今のAKB48を作り出し、今なお全員がAKB48としてのプライドを強く持ち続けているのだ。今の現役メンバーの多くは、先輩たちが築き上げた土台の上に立っているのは紛れもない事実。 しかし、これからはその壁を超えねばならない。いつまでも先輩あってのAKB48のままでは危険だ。なぜなら、常に前だけを見て突き進んできたグループゆえ、歩みを止めた瞬間終わりを迎えてしまうだろう。高橋みなみ時代から横山由依時代へと移り変わったこの日、AKB48という炎を絶やさぬという至上命題が課せられた若きメンバーたちは、横山の決意に呼応するかのように、壁を超えんとする姿勢を見せた。 公演は横山由依率いるチームAによる『Pioneer』でスタート。以前までは高橋みなみの鬼気迫るステージングが何かと目を惹きがちだったが、この曲でシンメトリーとなる横山は周囲との調和を図るようなダンスで全員の魅力を際立たせた。“引っ張る”たかみなと、“共に歩む”横山の対比が美しく表れた瞬間だった。横山に寄り添うように、色気を放つ入山杏奈、無邪気さを振りまく大和田奈那、白間美瑠が放つ気迫が彩を添えていく。王道感そのままに個々のカラーが明確に表れていた。 松井珠理奈、山本彩、兒玉遥という各グループの中でもエース級が集うチームKは『最終ベルが鳴る』で身体性を感じさせるステージングを披露。中でも、武藤十夢と、茂木忍、田野優花のパフォーマンスはさすがの一言。武藤は歌、ダンス共に説得力ある動きを随所に披露し違いを見せた。武藤に魂の継承を果たした大島も彼女の成長ぶりを見て安心したことだろう。茂木は近年、彼女の代名詞となりつつある“イケメン”ぶりで魅了、その姿に宮澤佐江の姿が重なる。そして田野はその引き締まりすぎた体通りのストイックさを前面に押し出し、バキバキのダンス。長らく待たれていたポスト・秋元才加は彼女しかいない。 個性派揃いのチームBによる『初日』はもはやチームBの代名詞とも言える渡辺麻友、柏木由紀のアイドル性が今なお圧倒的。だが達家真姫宝、福岡聖菜からも“まゆゆきりん”に負けないほどの煌めきを感じた。個人的には常にキラキラとした笑顔を絶やさない、横島亜衿はもっと見つかるべき存在だと確信。そして、チームBキャプテンの木崎ゆりあは、圧倒的な華を持つメンバーの中でも存在感を放ちつつ、私が!のアピールをせず調和を保つ。その見事なバランス感覚ぶりは牽引者に相応しい。SKE48の妹キャラは、大きな飛躍を果たした。 今月3日に本格的に始動したチーム4は、まだ手探りの面が目立ったステージだった。各々がカチッとした姿を披露できたとは言い難い。それでも高橋朱里は今春頃から一層強く発揮しだしたキャプテンとしての素質を開花させたようだ。センターに立ち、ガムシャラさを披露する姿が『夢を死なせるわけにいかない』という「前へ!」を歌った楽曲の世界とシンクロする。1曲のみの披露ながら、額から滝の様に流れる汗から全力感がにじみ出ていたのが素晴らしい。そして前列に立った西野未姫のネジが外れたかのような過剰なダンスは見事。他のメンバーより20%増しに見える手数の多さは、彼女にとっての特別な才能だ。 チーム8は『47の素敵な街へ』を披露。各チームを横並びに観ていくことで改めて、テクニックや魅せるという点ではまだ高いレベルを発揮しているとは言い難い。しかし、アイドルとしての訴求力が各チームの中でもブッチギリに高いということを証明。特に小栗有以、佐藤栞、佐藤七海ら3人の全力で披露する可愛いさは文句なし。ただ一人、太田奈緒は若いメンバーに囲まれながら、落ち着きを与える姿勢を常に披露。暫定キャプテンと言われるのも納得の存在感で引き締めた。他のメンバーも個々の魅力を発揮、もっと多くの人に愛されてしかるべきチームであるなと再確認。 その後の卒業生たちとのユニットでも輝きを放つメンバーたち。 大島優子と宮澤佐江という旧チームKの看板2人と共に『ごめんねジュエル』を披露した向井地美音と武藤十夢。武藤は先述したように、大島イズムを炸裂させた。そして向井地は力強さを見せる3人とは違い、落ち着きを秘めた柔軟なダンスを披露。違いを生み出そうという気概の表れだろうか。 『ツンデレ』での小嶋真子は持ち前のダンスセンスを披露しつつ、まるで歌世界に入り込むかのような挑発的仕草を連発。女優性の高さも見せつけ、板野友美に比肩しうる存在感を発揮していた。 短い時間や少ない出番の中で個を発揮するのは難しいうえに、この日だけで判断は不可能。それでも彼女たちは、先輩たちに負けない光を放っていた。 そして横山由依。高橋みなみが彼女に向けて語った「人は成長する」という言葉の通り、彼女なりの逞しさを見せきった。周りに遠慮しつつも空気を読みながら随所で積極的に前へ出て発言し場をコントロール、時には不慣れなボケを投下しては賑わせる(そして度々スベる。そのつど横山をフォローする指原莉乃はさすが)など、高橋とはまた違った形のステージにかける愚直なまでの真摯さが随所に現れていた。 これからは、新たな道を自らが切り開いていかないといけなくなる。今まで以上の苦難が待っているかもしれない。だが横山の「これから10年後、(ファンの)皆さんがこのグループを応援していてよかったなと思っていただけるようなグループでいられるように、私たちメンバーみんなで力を合わせて頑張っていきたいと思います。」という言葉を全メンバーは心に秘め、彼女たちは前を向き続けるだろう。そしてきっとまた10年という時間をかけて、今まで以上の大きな夢を見続けさせてくれるはず。 (田口俊輔) 写真(C)AKS