乃木坂46の演技が「アイドル」を超える日
10月28日にリリースされた通算13枚目のニューシングル『今、話したい誰かがいる』が、発売初週で過去最高となる62万枚を超えるセールスを記録した乃木坂46。CMやバラエティ番組への出演も急増しトップアイドル街道をひたすら突き進む彼女たちだが、実は舞台女優としても各方面で活躍していることはご存知だろうか。 この夏、テレビ東京系でオンエアされた初主演ドラマ「初森ベマーズ」こそ旬のアイドルが演じる「現実離れしたマンガチックな内容」だったが、舞台での彼女たちはひと味違う。というのも、乃木坂46はデビュー間もない頃から「16人のプリンシパル」と呼ばれる舞台公演を、定期的に行ってきたからだ。この公演は渋谷PARCO劇場、赤坂ACTシアター、梅田芸術劇場メインホールといった格式ある会場で、2012年から3年連続で実施。2部構成となっており、第2幕で上演される舞台の役を勝ち取るために、メンバーは第1幕で自己アピールや演技を披露して、ファン投票でその役を選んでもらうという内容。早い話が舞台を通じて、連日のように選抜総選挙が行われているわけだ。 これだけ聞いても、ファン以外には別にどうでもいい話かもしれない。しかし、本公演に携わるスタッフが舞台好きには思わず唸ってしまう人選なのだ。2013年には演出を劇団「毛皮族」の江本純子、脚本を映画「桐島、部活やめるってよ」で知られる喜安浩平が担当。翌2014年には脚本・演出は福田雄一が手がけたことで反響を呼んだ。もちろん公演の魅力は“ガワ”のすごさだけではない。こういったシビアな環境の中で追い詰められた乃木坂46のメンバーが、徐々に“女優の顔”を見せ始めたのだ。現にこの公演がきっかけでソロで舞台への単独出演を果たしたメンバーも多い。若月佑美が初の舞台ソロ出演を決めたのを機に、井上小百合、樋口日奈、生田絵梨花、衛藤美彩、桜井玲香、能條愛未がこれに続いている。 「アイドル×演技(舞台)」という独自のスタイルを追求し、ファン以外が知らないところで他のアイドルグループと一線を画する存在となっていた乃木坂46が今年、新たなスタイルの舞台に挑戦。それが6月18〜28日に上演された「じょしらく」と、10月1〜12日に上演された「すべての犬は天国へ行く」だ。「じょしらく」はアニメ化もされるほどの人気を持つ同名マンガが原作のオリジナル舞台で、5人×3組がトリプルキャストで女性落語家を演じた。劇中では毎回1人が創作落語を披露するというハードルも設けられたが、メンバーは日を追うごとにアドリブを入れるなどしてこの難易度の高い舞台を乗り越えた。さらに「すべての犬は天国へ行く」はケラリーノ・サンドロヴィッチの脚本で2001年にナイロン100℃が上演した西部劇舞台の再演。劇中にはアイドルが演じるには過激すぎる台詞や暴力的な描写、メンバー同士によるラブシーンが含まれており、出演メンバーも「アイドルの壁をぶち壊したい」と気を吐いていた。そして鳥居みゆきや東風万智子、猫背椿、柿丸美智恵など個性的な実力派女優を相手に、彼女たちは拙いながらも着実にそれぞれの役をモノにし、その陰鬱な物語を楽しんでいるようだったという。 11月12日からは生田&桜井が出演するミュージカル「リボンの騎士」もスタート。生田は昨年10月「リボンの騎士」と同じ手塚治虫原作のミュージカル「虹のプレリュード」で初主演を務め、その迫真の演技で絶賛されたばかり。桜井も昨年10〜11月に初舞台「Mr.カミナリ」、今年10月に「すべての犬は天国へ行く」を経験したことで、その演技力/表現力に磨きをかけている。12月には大阪・シアターBRAVA!での上演も決定しており、今後さらに2人の演技に注目が集まることになりそうだ。 普段何気なくテレビで目にする乃木坂46。「どうせアイドルでしょ?」と彼女たちに稚拙なイメージを持っていりとしたら、その考えを改める日は近いかもしれない。いずれこの中からドラマや舞台で大活躍するメンバーが誕生するはずだから。 (文=西廣智一) 乃木坂46がMCのアイドル番組「生のアイドルが好き」【ゲスト:TPD/乙女新党/WHY@DOLL】