矢口真里が語る「愛犬クッキーとの生活」
売上累計40万部のベストセラーとなった『犬から聞いた素敵な話 涙あふれる14の物語』。著者である山口花が、犬好き芸能人とともに犬との生活の大切さを再確認する期間限定連載「愛犬との生活」。 第一回目となるゲストは、モーニング娘。OGの矢口真里。 山口 今日はよろしくお願いします。はじめに、矢口さんの愛犬のことから伺ってよろしいですか? 矢口 よろしくお願いします!私、はじめてワンちゃんを飼ったのが、13年前なんです。いま実家で飼っているヨークシャーテリアのクッキーなんですけど、生まれて2週間で家に来てたんです。 山口 生まれて2週間!そんなに早く。 矢口 はい。その理由が、わたしが生まれたのは横浜なんですけど、モーニング娘。になってから仕事の都合で「東京にみんなで引っ越したい」っていう願いを家族に出したんです。そしたら妹が転校するのを「嫌だ」ってすごく反対して…。私は仕事をはじめて横浜から3年間、東京に通ってたんです。でも、体力的にそれがきつくて…。といっても、ひとり暮らしをするのはすごく嫌だったんです。で、妹からの条件が、「犬を飼ってくれるんだったら、引っ越してもいい」って(笑)。 山口 なるほど(笑)。 矢口 でも、今度は両親が…。両親は二人共小さい頃に犬を飼っていたんですけど、なんかやっぱり、お別れがつらくて「もう二度と犬は飼いたくない」って言うんですよ。 山口 ペットロスの体験ですね。 矢口 ええ、でも妹のことを考えて「じゃあ、わかった」と言って犬を飼ってくれることになったんです。それでトイプードルがほしくて、すぐに動物病院に見に行ったら「ちょうど生まれたての子がいます」って。そのトイプードルを「わあ、かわいいな」と思って見ていたんですけど、「ちなみにこの子、2週間前に生まれたばかりなんです」っていうヨークシャーテリアも出てきたんです。 山口 あら、素敵ですね。 矢口 もう一目ぼれしちゃって、「ウチにくる子だ」って一瞬で思って、運命ってあるんですね。もう真っ黒の固まりなんですよ。ちっちゃくて!もう可愛すぎて、トイプードルの予定だったのが「ごめんね」って言って、ヨークシャーテリアを連れて帰ったんです。そこからはもう、我が家のアイドルです(笑)。 山口 最初のファースト・インプレッションって大事ですよね。 矢口 ビビビッ!ですよね。本当に。運命をすごく感じました。お母さんもいっしょに見に行ったんですけど、ふたりで「もうこの子だ」ってなって(笑)。 山口 もう「ようこそ!」って感じで。 矢口 でも、お父さんは最初反対してたんです。私も妹もやんちゃだったので、「お前たち、絶対に面倒みれないだろう」って。「どうせほったらかしにして、お母さんにみんな面倒をまかせる気だろう」なんて言われて。 山口 信用がなかった(笑)。 矢口 そうなんです!でも、実際に家に来てくれたら家族みんな、可愛くてしょうがなくって。 山口 クッキーが家族の一員になった。 矢口 私も仕事が終わったらすぐに帰るし、まさに家族ですね。人間と犬っていう感じではまったくなくって、あんなに反対していたお父さんが一番メロメロでした(笑)。我が家は女3人、男1人なので、「男の子が我が家に来てくれた」ってお父さんはよろこんで、「もうお前だけだよ、味方は」なんてことを言ったりしてました(笑)。 山口 反対していたお父さんが一番大好きになってしまったのね(笑)。 矢口 やっぱりクッキーは、家族みんなをまとめてくれるアイドルって感じがしますね! 【想像するだけで悲しいペットロス体験】 矢口 でももう、クッキーは年齢が13歳のせいか、病気ではないですけど、元気がなくなってきちゃったんですよ、最近。それがすっごく心配で……。 山口 食欲が落ちたり……。 矢口 はい。食欲、落ちてますし、それに、目もうっすら白くなってきちゃった。ヨークシャーってすごく吠えるんですけれど、それも少ない。逆に吠えすぎると、声がかれるんですよ。本当に心配です……。 山口 それは心配ですね……。 矢口 でも…なんて言うのかな、犬の存在がお母さんの心の安定剤みたいな役割もしてくれているんです。だからいろいろ考えてます。2匹目を飼うかとか、やっぱり亡くなっちゃったときのショックを考えると。それだけ大きい存在になっているので…。 山口 喪失感って、すごく大きいですからね。 矢口 私はまだ味わったことがないんですけど……お母さんたちは以前、犬とのお別れを経験しているので…。 山口 じゃあやっぱり、そのときのことを思い出すと、つらくなっちゃう……。 矢口 考えられない。クッキーには本当に長生きしてほしいです。犬を飼っている人と、「ウチは11歳で長生き」なんて話を聞くと、「ウチなんて13歳だぞ」とか思いながら。 山口 でも、一般的には小型犬のほうが寿命が長いって言いますよね。 矢口 へえ、そうなんですか? 山口 大型犬は、12年も生きれば長寿です。 矢口 そうなんだ〜。たまに「20年生きた」という方もいらっしゃるので、ウチなんてまだ若いのかな、とか思ったこともあったんですけど…。でも、やっぱり愛犬が病気がちになってくると心配ですよね。山口さんも、ペットロスの経験があるんですか? 山口 私の場合は、小学校2年生のときに飼いはじめた柴犬が、私が大学生のときに亡くなったんです。実家が新潟でしたので、東京から急いで帰省しようとしたその夜に…。 矢口 つらいですね…。 山口 でも当時は、自分が飼っていたというよりは、家族が世話してくれていた…そんな存在でした。小、中、高校生時代だと、自分のことや友達との遊びのほうが忙しくて、あまりかまってあげられなかった。大学では離れて暮らしていたから、いなくなったという喪失感よりは「もう会えないんだなあ」という、そういう感じのほうが強かったですね。 矢口 なるほど。 山口 大人になってからは、自分で飼ったゴールデンレトリーバーがいたんですけど、そのときは仕事で留守にしているときに死んじゃったんです。 矢口 えーっ! 山口 それはやっぱり、さびしくて、つらかったですね。 矢口 つらい…。 山口 つらいですよ。 矢口 うちはいま娘が2人とも家を出ていてお母さんもパート仕事をしていますが、お父さんとお母さんのどっちかは家にいるんですね。だから最期を看取れないというのはないと思うんですけど…でもそれ、つらいですね。 山口 やっぱり、いろんな方にお会いしてお話しを聞くと、「最期にいっしょにいれてよかった」という人もいれば、「見なくてよかったかもしれない。それがたぶん、最期の親孝行だったんだと思う」という受け止め方をしている人もいらっしゃるんですね。 矢口 なるほど…。 山口 その人その人でね、お会いしてお話しをすると、やっぱりいま、矢口さんがおっしゃったように、愛犬は家族であり、兄弟であり、子供であって…。自分を中心にして、犬って立場が変わったりすることがありますよね。ときには兄弟、ときには子供みたいに。そういう存在になるって、やっぱり犬の力ってすごいんだなあと思います。 矢口 すごいですよ! 山口 犬って人間と見つめあうじゃないですか。こうして、じーっと自分の顔を見てくれる。あれが、すごくいいんでしょうね。 矢口 会話はできないですけど、目でなんとなくわかりますよね。面白いのが、ウチの犬は悪さをしたときに、すごく上目遣いしてくるんですよ。犬って「やっちゃった感」出しますよね(笑)。ポーズとかでも。 山口 すごくわかります(笑)。 矢口 私、あれがすごく可愛くて!シートからおしっこ漏れちゃったくらいのことなんですけど、こう、上目遣いで見ているんですよ。もう可愛くって。それで「ちょっと、何したの?」とか言うと、ずーっと萌えのポーズ(笑)。もうね、あのしぐさが、私いちばん好きなんです。 山口 犬種の紹介をする本で、「この犬種はこういう性格です」って書いてあっても……。 矢口 ぜーんぜん違いますよね。 山口 そうですよね(笑)。 矢口 育て方もあるんでしょうけど、生まれたときからの性格とか、やっぱりあるんだなあって感じて、それってでも「何なんだろう?」って思いますね。 山口 犬は同じお腹から生まれた兄弟でも、生まれ持った性格や資質は全然違うんです。それを「稟性(ひんせい)」って言うんですね。私は最近パピーウォーカーをやって、1年間だけ盲導犬候補犬のラブラドールの「ヤン」という犬と暮らしたんですけれど、その兄弟で集まっても、みんな稟性が違う。面白いですよ。 矢口 そうですね。でもねー、ホントに困った感じがかわいいんですよ。あの犬の困った感じはたまんないですよね。 山口 わかります。怒れなくなっちゃう(笑)。 矢口 そう。可愛すぎて。なんかもう、お母さんがとにかく溺愛してて、どこへ行くにも、たとえば旅行に行ってもずーっと心配してるんです。旅行に行くときには信頼できるペットホテルに預けるんですけど、それでもずーっと心配して…。普段の買い物でも、お土産を買って帰るんです。こないだはスゴイ人気のある鯛焼きを「これ食べさせてあげたい」って(笑)。 山口 鯛焼き(笑)。 矢口 それはお母さんが食べたいだけなんじゃないかと思いましたけど、でも、私より先にクッキーが食べるんですね。常に第一。たぶんお母さんのなかでは、クッキーが一番の存在になってます。娘の手が離れたというのもあるんでしょうけれど…。 山口 それはありますよ。私もいま息子が高校一年生なんですけれど、男の子だからどんどん親としゃべらなくなっちゃって(笑)。だから、ヤンを溺愛しましたね、1年間。 矢口 お母さんもクッキーを息子とか、そういう存在だと思っているんですよね。家がすごく明るくなったし。すごいですよね、その存在感。いままでは家に帰るとすぐに自分の部屋に入っちゃう感じだったのが、みんな寝るまでリビングにいる(笑)。そこにクッキーもいて、という…。そこにいることが当たり前なんですよ。クッキーもスゴく場の空気を作るのが上手なんです。 山口 わかります(笑)。 矢口 リビングに4人いたら、誰に甘えたらおいしいものをもらえるかがわかってる。まず、うちのお母さんが絶対にいちばんリビングに長くいるし、何かくれる人だと思っているので、まずお母さんのところに行って、お父さんの顔を見るんです。 山口 うんうん(笑)。 矢口 「お父さん、言ってやって」みたいに見る。発言力や決定権はお父さんなので、お父さんに「これほしい」とアピールして、お母さんに行動させる。それとか見てると、すっごく面白い(笑)。 山口 犬って、考えてますよね。 矢口 考えてますよね〜。 山口 よく見ているし、よく考えている。 矢口 ごはんを求めてくるしぐさとか、わかりやすいし、もう可愛すぎて、本当に! 山口 ちなみにさっき話していた2匹目の犬はもう決まっているんですか? 矢口 ペットショップに行って見てたんですけど…。 山口 いい子がいました? 矢口 いたんですよ1匹、超可愛くて!ところが1週間後に行ったらもういなくなってて、「あーっ!」ってなっちゃった。お母さんに「見にいこうよ」って言ってたんですけど、都合がつかずに1週間後になっちゃったんです。私はちょくちょく通っていて、勝手にその子に名前までつけていたのにもうショック。やっぱり、ビビッと来たら即決しないと…。 山口 ダメですね。 矢口 ダメですね〜。本当にそう思いました。生まれたてだったし、可愛かったので、誰かにもらわれても仕方ないかなあって、もうあきらめましたけど。 【いまの子、次の子への愛情と考え方】 山口 私、ヤンを盲導犬の本格的な訓練に送り出して、もういないんですけど、その喪失感がボディブローのように効いてくるんですよ。 矢口 いっしょに暮らしたのは1年くらいですか? 山口 そう、パピーウォーカーになる最初の約束で、1年間だけです。 矢口 うわあ。それ、離れたくなくなりますよね。 山口 うーん。でもそれは、頭のなかではわかっていたことなんですよ。でも、やっぱりせつないですね。ヤンがいない生活が今日で2週間経ったんですけれど……氷が好きなヘンな子でした。 矢口 食べます氷。うちも(笑)。 山口 朝起きると、喪失感がかならずきます。部屋のドアを開けて、「あ、もういないんだった」って思うたびに「はあーっ」ってなるんですよ。やっぱり、犬の体温とか、さわったとき、ちょっとやわらかくて…あの瞬間、感触とか体温とか存在感とか、またほしいと思ってしまう自分がいるんです。 矢口 それ、わかります。 山口 いろんな方とお話しすると、ずっと喪失感で泣いていらっしゃる方、悲しんでいらっしゃる方、それは、要するに次の犬を飼うと、前のあの子に申し訳ない気がするという、そういう感じ方なんです。 矢口 なるほど……。 山口 でも、私のように、「次にもう一度、別の子を可愛がってあげよう」という、それもひとつの愛情だっていう考え方の人もいて。 矢口 そうですね。本当に、同じ愛情を注いであげれば、みんなしあわせなんじゃないかって思います。でも、どうなんだろう?やっぱりいまのクッキーが大切だから、もう1匹来たときに、やきもち焼いちゃうんじゃないかとか、怖がったりしないかとか、敏感になるのがいやだから、同時には飼いたくないってお母さんは思っている気がします。 山口 うんうん。 矢口 それに、いまはクッキーだけに愛情を注ぎたいっていう親の心がすごくかたくて…。途中まで「2匹目」ってがんばっていたんですけど、いまはもう、それでもいいかって。 山口 いま47歳なので、そろそろタイムリミットがきているんです。というのは、たとえば犬が長生きをして15年から20年生きるとすると、自分が67歳になったときに、果たして犬の介護ができるかというと…。 矢口 まだぜんぜん大丈夫じゃないですか。 山口 でも、そう考える高齢の飼い主の方はやっぱりいらっしゃるんですよ。 矢口 ああ、なるほど…。 山口 たとえば、定年を迎えてやっと自分の時間ができたけれど、10年後、20年後を考えたときに犬を迎えられるかというと、ちょっと心配だ、っていう方はいらっしゃいますね。 矢口 そうなんだ。そうか、生き物を飼うときは先まで考えないといけないですもんね。 山口 犬を最後までしあわせに…矢口さんのお母さんじゃないですけれど、そう思ったときに、自分のいまの年齢を考えると…。 矢口 えー、そんな悲しいこと言わないでくださいよ。ぜんぜんまだ大丈夫ですよ。息子さんだってまだいるじゃないですか。ちゃんとそこは、たぶん協力してくれる気がしますけどね。 山口 でも、息子は地元の山形を離れるって言っているんで、言葉通りならたぶん帰ってこないと思うんです。頼るわけにもいきません。矢口さんみたいに、実家が近ければいいんですけれど、どこに就職するかもわからないですし、私たち親は、息子は家を出たら帰ってこないと思っているんです。なので、息子ともあとせいぜい3年しかいっしょに暮らせないかもしれない。その代わりに、また犬を飼おうかな…なんて思っているんです。 矢口 あっ、いいですね、でも…。 山口 私の、精神的な支えとして。 矢口 やっぱり、その、まあ寿命とかじゃなく、いっしょにいたいから自分も若々しくいられるというか……。 山口 それもありますよね。 矢口 ありますよね。活力というか、なんかそういうのも絶対あると思って。うちの両親もそうなんですよ。やっぱり子供が手を離れると、何をしていいかわからないみたいな。とくにお母さんは、長い間専業主婦だったんで、家にいても何もすることがないみたいな感じになっちゃって。 山口 わかります、わかります。 矢口 家にいてもひとりの時間が多くて、といったときに、クッキーの存在がいっしょにいてくれる命だった。それからお母さんは、パートを自分で見つけてきて、お金に困っているわけじゃないんですれど、働きに出ちゃったんですよ。急に。そしたら、もっと若くなっちゃって。 山口 よいことだと思いますよ。犬をきっかけに心が若返ったんだ。 矢口 そう。クッキーをきっかけに外に仕事に行きたいっていう元気も出てきて。だから昼間は、そのパートに行って、夕方また帰ってきて。で、夜はずーっとクッキーといっしょにいてという。そのサイクルでものすごく元気になっちゃった。私としても安心だし、精神的にもやっぱり、なんかものすごく落ち着いたというか。いろんなことが変わりましたね、劇的に。 山口 私も生活が劇的に変わったような気がします。早寝早起き、とか。犬を飼ったのは自分のためにもよかったかな、と。 矢口 いま、ひとり暮らしの女性がワンちゃん飼ったりするじゃないですか。それ、絶対いいことだと思うんですよね、あたし。 山口 自分が病気になったらダメだっていう、その気持ちになるって。 矢口 あと、家に帰ったら迎えてくれる人がいるというか、そういうことで仕事がんばれるとか。 山口 早く帰ろうと思うから、仕事の効率もむしろ上がるって。 矢口 そうなの、そうなの。いいことばかり。よく「犬を飼うと結婚が遅れる」とか言われますけど、そんなことないと思うんですよね。むしろ心が癒されて、人にもやさしくなる。出会いがあって、どんどん、いい方向に向かえると思う。結婚行き遅れる説は、私はないと思ってます。 山口 その都市伝説、よく耳にしますよね。 矢口 そうそう。「もう終わりだよ」みたいな(笑)。 山口 「とうとう犬飼っちゃったの?」なんて(笑)。 矢口 絶対ウソ。ドラマじゃないですけど、犬きっかけで、散歩してて出会うことだってあるでしょうし。 山口 わかります、わかります。 矢口 公園とかでね。 山口 少なくとも犬の名前はわかるんですけど、飼い主の名前はわからない、というお友だちはできますよね(笑)。 矢口 そう。だから、それもいいなあって。犬の話で絶対に盛り上がれるし。私は、ひとり暮らしの女性と男性に犬を飼うことをおすすめします。上京したての人とか。 山口 いま、ペットが飼えるマンションも増えましたしね。 矢口 増えましたね〜。守るべきものがあるほうが、すべてに前向きになれる気がします。ワンちゃんのゴハン代を稼がなきゃとか、絶対に思うようになるんで、仕事もよりいっそう力が入るというか(笑)。 山口 矢口さんも、やっぱりクッキーちゃんの存在が自分の活力になっていました? 矢口 私はやっぱり、癒しでしたね。仕事はずっと実家から通っていたんで、ヘトヘトになって家に帰っても触れるだけでパーッと力が抜けて。「不思議な能力を持っているな〜」って、いつも思ってました。話すことなく、ただそばにいるだけなのに。 山口 犬って癒やしの力、すごくありますよね。 矢口 すっごくつらいときがあっても…何にも言わなくても伝わっているんだな、って思うことがあって。私から離れないんですよ。クッキーは、いつもだったら「遊んで、遊んで」みたいに、ボールを持ってきて、前で落として、「投げて」みたいな感じになるんです。でも私が本当にしんどいときは、ずっとぼーっとしているから、クッキーも「遊んで」をしないんですね。その代わり、ずっと私のそばにいて…なんか、そのたびに心が癒されるんです。 山口 ちょっと触れて、っていう感じなんですよね。 矢口 そう。かわいいんですよ。おしりだけくっつけてくる。あごを足に置いてきたりとか。なんか、それだけで「あーっ、癒されてるっ」って。昔のペットと、いまの現代のワンちゃんと人間の関係性って、すごく変わってきているって思うんですよね。 山口 たぶん、犬ってすごくやさしい動物だから、飼い主さんの気持ちになろうとするんですね。「もしかしていまこうしたいのかな、とか、いまこうなのかな」とか、飼い主さんの立場になって考えてくれる。 矢口 ありますよね、そういうところ。 山口 互いに言葉が交わせないから、こっちもくんであげないと、というか、そういう気持ちになるので、人に接するときも、そういう気持ちになれるようになるし。 矢口 ああ、たしかに……。 山口 こうしてほしいのかな、とか、想像力。 矢口 空気で。 山口 そう空気でね。察するようになれる。 矢口 ああ、たしかに。そういう意味でいうと、人生の勉強にもなりますよね。ワンちゃんから教えてもらうことって、いっぱいありますもんね。空気を読むスペシャリストじゃないですか、ワンちゃんって。ハハハ。 山口 私も何となくそう思っていて。 矢口 人間よりも空気読みますよね。 山口 そう。口げんかじゃないんだけれど、「もう帰ろうよ」「大丈夫だよ」みたいな言い合いをしていると、最後は私のひざの上に座って、「まあまあ落ち着いて」みたいな顔をするの。 矢口 へえ〜。かわいい。超かわいい。 山口 察するんだったら、こっちも察してあげないと。 矢口 たしかに。いや私、大型犬を飼うのが夢で。超かわいいですよね。 山口 でも大型犬は自分が大きいことを理解しないんですよ。「どうやら自分の体は大きいぞ」ってことを。だから平気でヒザの上に座ってくるんですよ。重たいんです(笑)。 矢口 ずっしりと(笑)。 山口 ずっしりとね。ヤンはビビリなタイプだったので、動物病院行くと、私のクビに前脚を回して抱きついてくるんです。赤ちゃんみたいに。 矢口 かわいい〜。 山口 「待ってたよ〜」みたいに。 矢口 かわいいな。たまんないですね。 山口 でも、20キロくらいあるんですよ。重い(笑)。 矢口 いやあ、いいなあ。 山口 でも大型犬は、しつけをキチンとしないと大変です。人間と犬がお互いケガをしないように…そういう面では、気を遣いますね。 矢口 私、大型犬とお昼寝をするのが夢なんです。日向ぼっことか、最高ですよね。いや、たまんない。だから、ゴールデンを飼いたいんです。本当は。でも東京で飼うとなると難しいし。 山口 でも、ゴールデンもラブラドールも、ものすごくちっちゃくなってきてますよね。 矢口 えっ。そうなんですか? 山口 その昔、ゴールデンは40キロくらいでした。本当に大きかったんです。 矢口 えーっ、40キロもあるんですか? あたしとそんなにかわんないですよ。 山口 本当に大きかったんですよ。いまはね、もう30キロくらい。27キロとか。 矢口 へえ〜。そうなんですか。なんか、子供が生まれたときにいっしょに飼うと、子供がすごくいい成長をする、って聞いたことがあって……。 山口 私のときも、本当に犬に子守りまでしてもらったりして(笑)。 矢口 命を大切にする子供に育つって聞いたことがあるんです。赤ちゃんから同じように成長していっても、どうしても犬のほうが寿命が早いですよね。寿命で言うと、いちばん多感なときに犬は亡くなる。私は子供もほしいんですけど、そのときは同時に飼いたいなと考えています。大型犬がいい。どんどん子供が成長して追い抜いていくっていうのを見たいんです。子供のほうが大きくなっていくじゃないですか。身長とか。でも、最初は子供のほうがちっちゃいんで、その2人も見てみたい。 山口 大型犬はおだやかですからね。 矢口 気持ちもやさしいし、あんまり吠えないし。ゴールデンは本当に頭いいし。いいなあ、ホントに飼ってみたい。 山口 たしかに犬や猫といった小動物といっしょに育った子供は、小さいものに対して、弱いものに対して、やさしくなるな、って思います。 矢口 絶対、いいと思うんですよね。 山口 ぜひぜひ。 矢口 いちばん平和な家族の形ができる気がします。 山口 矢口さんは、犬から感じることって、ほかに何かありますか? 矢口 犬って、自分を人間だと思っているというか、よくいうじゃないですか、人間と同じしぐさをするって。それをすごく感じることがありますね。自分を犬だと思ってない(笑)。あと、家の中の序列をわかっていて、お父さんがいちばんで、なぜか妹をすっごく下に見ています。ハハハ。 山口 それ、ありますね(笑)。 矢口 ありますよね。序列をわかっちゃうところが、人間ぽくって、かわいいなって思います。かわいいしぐさとか、見ててぜんぜん飽きないですし、家庭を明るくしてくれる存在、癒しと明るさっていうところで、ずば抜けているのは、やはりクッキーじゃないかと。 山口 いっしょに暮らしていて、たとえば毛が抜けてたいへんとか、そういうのってありますか。 矢口 ヨークシャーテリアは、毛が抜けないんですよ。たぶん犬のなかで、いちばん手がかからないんじゃないかなって思うぐらいです。毛が抜けるワンちゃんって多いじゃないですか。チワワとか。まあ、ちょっと気が強いんで吠えたりするんですけど、人見知りなだけで…。 山口 もともと狩猟犬ですしね。 矢口 そうそう。ヨークシャーテリアで困ったことは1回もないかな? 山口 本当に気持ちも性格も、なにもかも矢口さんのスタイルに合っていたんですね。 矢口 すごく合いましたね。顔もあたしにちょっと似てるところもあって。そんな共通点も、愛しいなって。 山口 似てると親近感がわきますもんね。 矢口 そう。「ちょっと胴体でかいね」みたいなところも(笑)。「でも、顔ちっちゃいもんね」なんてフォローしあいながら(笑)。そんな話をしてたりすると、お母さんが、「飼い主に似たんだよ」とか言って。そういうのも、なんかうれしいし。弟がいなかったから、年下の兄弟のようなかわいさがあります。 山口 兄弟…子供って感じではないんですね。 矢口 子供ではないですね。やっぱりお母さんがいる家なんで、兄弟の末っ子、弟ができたっていう感じでした。 山口 なるほど。 矢口 私、犬の年齢を人間の年で数えるっていうのがあんまり好きじゃないんです。それ、絶対に違うって思う。まあ、歳をとっておじいちゃんになって、体が悪くなったりとかはあると思うんですけれど、でも、いつまでも私の弟であることに変わりはないし、かわいいっていう気持ちは変わらないって思ってます。 山口 お互いにしあわせですね。 矢口 はい。だから、クッキーには最期まで、しあわせでいてほしいなって思います。 山口 矢口さん、今日は本当に楽しかったです。 矢口 私もスゴくクッキーが他切な存在なんだと改めて想えました!本当に、ありがとうございました! 【山口花プロフィール】 1968年、新潟県生まれ。大学卒業後、広告代理店に勤務。2012年に上梓した『犬から聞いた素敵な話』(東邦出版)は、シリーズ累計40万部を超えるベストセラーとなった。現在は山形県鶴岡市で夫、息子、愛猫3匹、愛犬1匹と暮らしながら盲導犬協会のパピーウォーカー事業も引き受け、東北地方における盲導犬の育成にも取り組んでいる。