いま札幌のビジュアル系バンドがヤバい!と話題に
2012年に己龍が「47都道府県単独ツアー」を行ったのをきっかけに、今、ビジュアルシーンには、「47都道府県単独ツアー」を行うバンドが増えている。 これは、活性化した地方へ足を運ぶためというよりは、バンドみずからが足を運ぶことで、各地方毎のビジュアルシーンの活性化を促す動きとして行われていること。なかなかバンドが足を運んでくれない地域によっては、「47都道府県単独ツアー」を通し定期的にビジュアル系バンドが訪れることで、実際にビジュアル系に興味関心を示す人たちが増えている。ただし、まだまだ各地域から「俺が地元のビジュアルシーンを活性化してやる」と名乗り出るバンドや、その地域で活性化した動きを示すビジュアル系バンドが少ないのも現状だ。 かつては「名古屋系」という言葉も生まれたように、一つの地域の中、地元バンドたちが刺激し合う状況が生まれては、それを全国に発信してゆく環境があった。関東や関西を除いた今も、名古屋を中心にした中部地区や、仙台や福岡周辺地域など大都市界隈では、少ないながらも地元を拠点として活動しているビジュアル系バンドがいるようだが、如何せん情報が都市部まで伝わってこないのが正直なところ。 先日、札幌にあるビジュアル系好きな人たちが集う場だったCafe&Bae「トロイメライ」が、3年の歴史に幕を閉じた。オーナーが身体を壊してしまい、やむなくの閉店。その間、地元のビジュアル系好きな人たちやバンドマン、札幌へ遠征に来たバンドマンやファンたちも、よくトロメイライに足を運んでいたように、札幌のビジュアルシーンを語るうえでは欠かせない集いの場になっていた。その閉店を惜しむように、3月20日にSound Lab moleにて、トロイメライ主催によるイベントが行われた。この日は、地元のビジュアル系バンドと、札幌から旅立ったバンドたちのみを集めて開催。チケットはSold Outを記録。改めて地元バンドたちを応援している道民たちの熱い想いを感じさせられた。 先に、「地方は活性化していない」と嘆いたが、こと札幌に関しては、地元のバンドを積極的に応援してゆく環境が活きている。それだけ魅力を放つバンドがいれば、そこに育ってゆく環境があるからだ。それ以上に、札幌のビジュアルシーンに関わる人たちが、本気で「地元のバンドを育てあげ、全国区のバンドとして羽ばたいて欲しい」という想いを強く抱き、そのための地元シーン活性化のための活動を行っていることが、何よりも大きな要因になっている。 殘念ながら店を閉じてしまった「トロイメライ」は、まさに「口コミ」による道民たちの情報発信の場であり、繋がりを求める「仲間」たちとの出会いの場という、一番「人の絆」を感じさせる空間として成り立っていた。オーナーの朽木氏自身、現在は店舗は閉鎖し、通販ショップのみという形を取ってはいるが、CD店「NEVERMIND」のオーナーでもある。じつは、札幌界隈のビジュアル系に力を入れたCD店の店主たちが、札幌ビジュアルシーンの活性化を強く促している。 先に触れたCD通販店「NEVERMIND」。ビジュアル系の新譜の品揃えは道内随一の「音楽処」。オーナーの石川女史は、ツアーバンドのみならず地元バンドの応援のためインストアイベントも積極的に行っている。レアーCDやグッズを專門に取り扱う「Lucy’s Pocket」には、ビジュアル系の歴史を語るうえで欠かせない名盤や希少盤が数多く並べられている。オーナーの山本氏と先に上げた朽木氏は、ビジュアル系マニアの中でも有名な、ビジュアルシーンに強い愛情を持ったコレクターたちでもある。そして、室蘭に店舗を構えた「遊ずどカンパニー」。同店舗の亀山オーナーは、室蘭市でのビジュアルシーンの活性化はもちろん、地元,室蘭の音楽シーンの育成発展のためのイベントも積極的に行っている。 みなさん、ライバルでありながらも非常に信頼関係が深く、互いに協力しあえば、オーナーどうしが集まり、情報交換という名の飲み会を行うことも多い。以前にも「地元ビジュアルシーンの活性化を」という志のもと、4店舗共同主催でイベント「なまら・ぶい」を実施。「なまら」とは北海道の方言で「非常に」という意味、「とても優れた地元のバンドを自分たちの手で育てあげよう」という想いを持って2012年に行われた。その意志は、一時期「トロイメライ」が引き継ぎ、店舗名義のもと定期的にイベントを開催していたが、今年は改めて、4店舗が手を組む形を取って「なまら・ぶい」を行おうという話も出ているようだ。4店舗のオーナーたちのように、バンドの音源を扱う店舗どうしが協力しあい、地元の活性化を担っているのが、札幌ビジュアルシーン発展化の土壌を担っている要因の一つになっている。 そして何より、札幌出身のバンドたちが、地元の若手バンドたちの育成に積極的なのも、次代を担うバンドが誕生しやすい環境を形作っている。中でも、ギャロのドラマーであり札幌出身のカエデと、トランスノートの真悠は、札幌ビジュアルシーンのバンドたちの精神的な支柱を担っていれば、彼らが札幌のバンドたちに激を投げ続けるからこそ、同シーンが結束力を深め、一丸となって札幌を盛り上げようとしてゆく面も非常に強い。 現在は、2人とも上京。ここ何年かの札幌シーンの中核バンドたちが相次いで上京したため、ちょうど今、中心となる存在が空いた状態になっている。が、地元で長年音楽シーンの発展やバンド関係の繋がりを積極的に盛り立て続けているギタリストの矢野聰氏が今は大きな精神的な支柱になり、若手バンドたちを盛りあげている。先に上げたカエデや真悠も、矢野イズムを継承した連中だ。ここ数年の札幌シーンを中心になって盛り上げてきたバンドたちは今、次々上京し活動を始めている。 エレクトロ&ラウドな音楽性を魅力にした唯一無二なサイバーロックバンドへ進化し続けている2nd awake。ヴォーカル以外が変態かヲタクというのも特徴だ。良質でポップな音楽性を魅力に超キラキラ系スタイルで触れた人たちの心に笑顏と輝きを与えているパスホリ。 触れた人たちを奈落の底へ突き落としてゆく、ダークでゴスでアグレッシブなDADA。その終末感は、久々にアンダーグラウンドな音楽の放つヤバいスリルに満ちている。そして、期待のトランスノート。姫苺/ハルシオン/ヴァロアとメンバー全員が札幌で名を馳せたバンドのメンバーたち。1月末より始まったばかりとはいえ、実力派メンバーの集合体だけに早くも熱い視線が注がれている。 現在、札幌シーンの中心を担っているのが、G.A.I.A。彼らは、激しさと派手な同期音をミックスした演奏面を魅力にしながらも、歌を軸に据えたバンド。まさに正統派な存在として今、実力をぐんぐん伸ばしているように、これからの飛躍が最も期待された札幌バンドである。そして、今後大きな飛躍が期待出来るのがRE:VEINだ。雄大な音の上で美しさと激しさを重ねあわせた歌や旋律が絡み合ってゆく音楽性には、とても惹かれるものがある。彼ら、これからの札幌ビジュアルシーンを語るうえで欠かせない存在になりそうだ。 他にも、札幌ゴシック界の重鎮シックスのリーダー腐ル血が首謀するレーベル「惨劇レコード」へ所属しているハラキリカルチャーやメルヘンなどの暗黒ビジュアル系らも注目したいところ。同レーベルの首領バンドであるシックスも、今年は5人体制にバンドを固め、積極的に攻めていくと宣言していた。 ざっと現状の札幌ビジュアルシーンを紹介してきたが、上京組も含め、彼ら「なまら系」バンドたちが今、札幌を中心としたV系道民たちの間で「なまら」支持されている。ただ、その波が東京を中心とした各地域にまで届いてるか??と言えば、正直厳しいのも事実。まだまだ札幌のみでの「なまら系」のムーブメントではあるが、そこには人を惹きつける要素も多いだけに、ぜひ、札幌から全国へと広がってゆくことを期待したい。先にも触れた「なまら・ぶい」の第2回目が秋にも開催になりそうなので、決まった際には各地から札幌まで足を運んで欲しい。バンドのみならず、料理も美味しいものが沢山ありますからね。(TEXT/長澤智典、写真/MATOI TAKAHASHI)