AKB48とlyrical schoolヒットで見えたアイドルラップ大ブレイクの兆し
AKB48の最新シングル『Green Flash』がミリオンを突破した。柏木由紀初のセンター等数々のトピックがあるが、国民的アイドルグル―プが大々的にラップをフィーチャーし、その曲が100万枚を超えたことが一番の衝撃だった。 そしてこちらも快挙なのだが、アイドルラップグループlyrical schoolの約1年半ぶり3rdアルバム『SPOT』が3月9日付のオリコンデイリーランキングで6位を獲得。今作はシングル『PRIDE』で見せたハードコアな部分をより押し進めた、エポック的作品に仕上がっている。この2つのニュースを見て、隔世の感を覚えた。これはアイドルラップブームも早々遠くはないな、と。 アイドル×ラップは安達祐実が94年に『ど~した!安達』を発売、つんく♂氏はモーニング娘。『抱いて!HOLD ON ME』以降ハロー!プロジェクト楽曲に積極的にラップを取り入れてきた。上戸彩が在籍していたZ-1『Vibe!』や、星井七瀬『恋愛15シミュレーション』……数え上げればきりがないほどのアイドルラップ作品は存在する。 しかし、彼女たちの活躍で、アイドルラップブームが到来した!…とは言えず、長い間「アイドルラップ」は「ラップというギミックに挑戦」というノベルティ的な立ち位置であったり、本格的に挑戦しようとするもブレークに繋がらない仇花のようなグループばかりであったりと、陰日向の存在だった時代が続いてきた。 それでも、ラップとアイドルソングの親和性について折衷を図ろうと、積極的にハロプロ楽曲に取り入れてきたつんく♂氏や、それまでノベルティ扱いをされてきたアイドル達が蒔いてきたアイドル×ラップの文化が着実に栄養となり、00年代以降の多様な音楽性の広がりとともに芽が吹いた。10年以降本格的なグループが数々生まれ、そしてAKB48が本格的に挑戦し、lyrical schoolのヒットで2015年、完全に花開いた印象だ。 現在、メジャー、インディーズ共にパイが小規模とはいえ、アイドルラップシーンには次を担う面白い存在が続々と登場している。 先日新メンバーMC MISAKIを加えて再始動したライムベリー。新体制が走り出したばかりで、今後の展開がどうなるのかはまだまだ予測できないが、激しくも楽しく、センチメンタルなライヴと楽曲で再びけん引してくれることを期待したい。 昨年発売した『ラストアルバムvol.1』がアイドルファンはおろか、早耳の人からも高い評化を受けた4人組・うどん兄弟。鈴木慶一や直江政広という大御所による楽曲の完成度と比べ、なんともいえないユルくほつれまくった世界観とラップが心地よい。 “ソロアイドルラッパー”として活動している「もるも もる」(『This is idol rap e.p.』というシングルを発売)を含む4人組アイドルラップクルー・校庭カメラガールは性急なビートが暴れる中、アイドル的な可愛さとシリアスな面が交互でぶつかり合う姿が面白い。 LinQの楽曲制作でも知られるH(eichi)氏がプロデュースするデュオ・FantaRhymeはR&B、ヒップホップ、アイドル性の三つが綺麗に溶け込んだハイセンスな楽曲が素晴らしい。タワレコデイリーにランクインするなど期待値も高い。 双子姉妹Hip Hopユニット・MIKA☆RIKA。可憐な見た目ながら、餓鬼レンジャーのポチョムキンによる「仕事したくないよ~二度と 仕事忘れたいよ~」という、斜め向うの視線で歌うリリックを脱力の極みのようなラップで綴る姿は衝撃的。 lyrical schoolと言えば、彼女たちのトラック制作にも携わっているtofubeatsが曲を手掛けたでんぱ組.inc、てんちむ、Alodiaによるスペシャルユニット・MARBLE WONDERLANDも企画で終わらすにはもったいない、面白いグループだった。『KAWAII GIRL』は屈指の名曲。 過去にEDMがハロー!プロジェクト楽曲を中心に広がり、今やアイドル楽曲のスタンダードのひとつとなった例がある。彼女らのブレークでラップ/Hip Hopがアイドルソングの一つのスタンダードになるのも時間の問題だろう。(田口俊輔)