小室哲哉に聞いた「音楽鎖国したJ-POPの未来」
シングル、アルバム売上枚数が1億7000万枚を突破している小室哲哉。 日本国内で知らない人はいないほど稀代の音楽プロデューサーである彼が見る日本の音楽業界の未来とは? ―今年はTM NETWORKとしての活動が本格始動する中で、小室さんが日本の音楽業界に与えてきた影響力も再確認された年でした。 小室哲哉ここ何年かで、90年代に僕がやってた影響が…かっこ良く言えば功罪みたいなものですけど、その影響を受けた人たちが30代でトップクリエーターとなり、音楽業界の人も含めてそういう人たちが活発に動ける時代になって来てるんだなってここ1年で凄い感じているんです。具体的に「ファンだった」と教えてくれる人もいますけど、様々な人に影響を与えたっていうことは分かっていて、その人たちが今旬というかブームを作るところまできているんですね。小室哲哉の「セカンドジェネレーション」です。その人たちが頑張ってくれれば充分かなという気持ちはあるんですけど、更に「サードジェネレーション」まで影響を与えられるようになったらいいな、と最近は感じてます。そういった思いも含めて、常々言ってるんです「音楽」に関してはインフラが問題だと。 ―インフラですか? 小室哲哉インフラの固定化がなかなか出来てないので、簡単に言えばレコードからCDへ、そしてダウンロードとつながっていって、みんながこのまま21世紀に行くんだろうな、って考えていたのが大間違いだったっていうところが大きくて…。次のストリーミングのインフラ環境が、日本っていう国が雑多過ぎてちょっとまだ整っていない…。ストリーミングも当たり前のように、空気のように楽曲が空を飛んでいるような感覚だと、クリエイターはしっかりした音楽を作る気にもなれなくなってきちゃう状況がこのまま続いてくと思うんです。CDっていうインフラは良くも悪くも固定化できたので、それを基準にして色んなことを考えられた。そこで色んなアイデアを出したり、CDの70数分の基準を使ってね。頑張って音質も上げたりとかしていたんです。それが、デジタルになりMP3とかの音を聞いて…遥かに良い音でバンドの人たちもレコーディングしてるのに、いざみんなに聴いてもらうときになるとこんなに音が悪くなっちゃうって現象が起きるわけです。それは、すごいがっくりというか、失望感は大きいと思うんですよね。なので 、だったら生でやった方がいいってフェスとかLIVEが盛り上がっているのかな。PAシステムとか音がすごく良いですからね。それはCDなんかより遥かに良い音が出たりするので、そこもジレンマみたいなのがある。だったら生で聴いてもらった方がいいっていう形になって、「形」にするものに関して、今はCDもあるし、ダウンロードもあるし、ストリーミングもあるし他にも多々あって、どれを基準にして音を作ればいいのかって、ちょっと悩みどころというかな…。ピアノの音とかも、ピアニストはすごく残念な思いをしてると思うんですよね。実際に弾いてる自分の音と、ネットなどで聞ける音の差にね。なので、自分の役目としては楽曲も作りながらですけど、そういった環境、インフラの整備みたいなことにも協力していきたいなとも思ってます。 ―音が悪くなる、というのは大きな問題ですね。 小室哲哉ただ、ニコ生もそうですけど、映像の臨場感だったり、生でやってるっていうスリルっていうのはそれを補ってると思うんです。だから成立してるのかなと思いますね。なので、ストリーミングだけでフェスや生の演奏を音だけ聴かせるっていうのは、ちょっとキツいと思います。生、臨場感がスゴく受けているっていう。間近で、普通はアリーナで見たり聞いたりするのは難しいのに、目の前で見られるっていう。そういうところが、21世紀になって、新しい一つのデバイスっていうか、生き残っていけるものだと思います。 ―小室さんは実際に、CDで100万枚のヒットを連発していました。最近では意識が変わってきているのでしょうか? 小室哲哉いま、みんなに「聴いてもらう」とこまでもいかなくて、そのためにフリーダウンロードでお金いらないのでまず聴いてもらわないと良いか悪いかも決めてもらえないっていうところだと思うんですよね。なので、ここ最近で例に出すと、U2かテイラースイフトどっちの道を選ぶかっていうところで、U2はiTunesで『Songs of Innocence』をタダで配った。テイラースイフトはストリーミングから撤退して、とにかくCDでっていうところで勝負をしている。同じ海外の大物の人たちが、違う方式で勝負をしてみるっていうのはすごく面白いと思うんですよね。どっちのやり方に世界レベルでみんなが付いてくのかなっていうところですよね。僕はU2の発想は、要は本当は売ろうとしてたものをタダにしてるわけですから、一番自分たちが納得する音、一番良いものをみんなにまず聴いてもらおうっていうものだと思うんです。なので、そこからどうやってビジネスとして結びつけていくっていうところが今後どうなるのか?テイラースイフトみたいにファンでいてくれるならCD買ってよっていうとこで、これは映画と同じですよね。お金を払って見ないといけない。面白かったらよかったってことで、面白くなかったら次は絶対見ないってことになっちゃうので、結構大きなギャンブルだと思うんです。そこら辺がいまは見所っていうか、どうなっていくのかなって関心事ではあります。いまって、日本は3回目の「音楽鎖国」みたいな感じだと思うんです。相当海外から遅れている。フェスとかそういうものも相当遅れている。やり方手法ですけどね。2年前に「ULTRA」を呼んだ方がいいって提案してたんです。日本のもの、メイドインジャパンのフェスは日本人の日本人のためのものになっちゃってるんで…それはそれでみんな楽しいし、盛り上がればそれで良いと思うんですけど、まだちょっと成熟はしてない。日本だけ仲間に入れてもらえてないみたいな感じですよね。なんとなく日本だけはじかれちゃってる気はするんです。 ―確かに、世界的に見ても日本ではEDM楽曲でのヒット作は少ない気もします。 小室哲哉EDMって綿密に言えばジャンルとしてはあるんですけど、基本的には「ハイブリッド」みたいなもので、いろんなジャンルをどう組み合わせるかってことだと思うんです。可能性としてはハウスとかヒップホップだって、30年前はない言葉だったわけで、そういう意味ではトランスもそうですね。一番分かりやすいのはカントリーミュージックとエレクトリックが混ざったりとか、ブラックミュージックとトランスが混ざったみたいなのとか。そのハイブリッドみたいなのが一番楽しいし、どんなジャンルでも混ざるので、LIVEやフェスの動員もそうだし、聴く人の幅も広がるしっていうとこで他のジャンルのダンスミュージックよりは、幅広く、王道ですね。王道のポップスになるんじゃないかなって言う気はしてますね。 ―小室さんはtrfでトランスやユーロを拡めました。 小室哲哉テクノってtrfでは言ってましたけど。それまでの日本では、ミリオンヒットいくような曲で、ずっとリフレインしっぱなしって言う楽曲はなかった気がします。 -そんな中、2015年も、ダンスミュージックを核にしながら制作していきますか? 小室哲哉していきたいですね。時代に乗るとかではなくて…随分前にヨーロッパで「お前がやってるのはエレクトロだ」と言われたりとかしていたんです。日本での評価とは違いますよね。なので「音」で追求していってもいいなと思ってます。アコースティックに行ったりロックには行かないですね。 -世間は小室哲哉を求める流れがあると思うんですが。 小室哲哉そうですね、最近ではミュージシャン、シンガーだったりとか、探してないわけじゃないんですけど、なかなかそこまでの逸材っていうのがいないのは事実です。90年代の時はたまたま歌手の人たちの声質だったりとか、そういうのが非常に僕が書きたいものに合った人がたまたま多くいたんです。今はそこまで…なかなか見つける術もそうですけど、オーディションも含めて拡散し過ぎちゃって、一本化されてないですからね。ただ、見つけたいことは間違いないですね。で、ここ数年女子も男子もグループ時代ですけど、1人や2人、最大でも3人くらいのグループで、本当にみんな知ってるヒット曲ってなかなか生まれづらい。今年のヒット曲といえば、ディズニーだからね。音楽業界でオリジナルで今年大ヒット曲ってないと思うんですよ。一人ずつ購入して、100万人が買ってくれてる楽曲ってないと思うんです。でも皆さんは音楽が嫌いになってるわけじゃなくて、興味は変わってないと思います。街に出ると、みんな絶対にイヤフォンで音楽を聴いてますし、音楽ユーザーの数は増えたと思います。スマホのおかげですね。こういう時代に、隣にいる人も同じ曲を聴いてるっていうことがないと思うんです。もし、1曲でもそういった「みんなが聞いている」状況ができたらすごいですよね。 -それを小室さんが生み出す期待は高いです。 小室哲哉生まれたらそれはすごいことなんですけどね。ただインフラも大事だし、「方式」も大事なんで。間違いなく良い曲だ、良い楽曲出来た!って、それが本当にちゃんと色んな方式だったり手法でちゃんと拡がっていかないといけない。サラッとほとんどフリーで聴けちゃってるので、大事に聴いてもらえないっていうところもあると僕は思います。以前は、中学生だったりでも1000円を出してたわけです。下手したら小学生でも出して音楽を買っていた。それは、大事に聴きますよね。アルバムなんて特に3000円もするわけですから。大事なお小遣いから買うわけで、考えたらすごい大切に丁寧に聴いてくれたと思うんですけど、今だったらサラッと聴けちゃう。一生懸命に大切に聴いてるかなっていうところがあるし、耳に残りづらくなってると思います。どっかで、聞くときに流しちゃってる気がするんです。別にお金に換算するわけじゃないんだけど、やっぱこれだけ頑張って買ったんだから集中して聴こう、って気持ちはやはりあったと思います。 -過去に1億枚以上のセールスを上げている小室さんの知恵が非常に重要になると考えます。 小室哲哉古い言い方ですけど、やっぱりメディアミックスしないと…それがゲームだったりアニメだったりとかが、一番今の日本の先端をいってると思います。結局は僕らも最初にブレイクしたのはそういったタイアップだったり、メディアと一緒に売っていったわけで、じゃないと拡がってかないのかなっていうところもあります。だから、「ネット上からのミリオンヒット」っていうのが出たら日本の音楽の「21世紀の始まり」だと僕は思います。まだ地上波からのヒット曲なんですよね。確実にネット上から拡散して、ニコニコでもYouTubeでもいいんですけど…っていうことが海外では実際に起きてるわけです。海外の地方でYouTubeでアップしたらそこから…っていうことが起きている。それが日本ではまだないので、そういうヒットが日本で起きないとこの先も、ずっと遅れたままになっちゃうかなって思います。画質とかはどんどんテレビとかカメラとか良くなって、みんなが当たり前のように使ってるわけじゃないですか。なんで音だけが止まっちゃってるのかなって思いますよね(笑)。 -大ヒットした「アナと雪の女王」も映画館で聴いてヒットに繋がった部分は大きいですからね。 小室哲哉そう、映画館で聴いて、音がスゴくいいっていうのは大きかったと思うんですよね。ミュージカルですからね、あの映画は。映画館で体験をして、CDを買ったってファンは多いと思いますよ。 -ライブ、フェスなどの生で音楽を体験する場所が今まで以上に重要となりそうですね。 小室哲哉海外ではフェスで楽曲を聴いて、良くも悪くも「ヒットしてるらしい」って認識をして、皆がCDを購入したりダウンロードしたりでヒットすることも多いんです。そこら辺は日本とは全然違いますよね。 -そこで、小室さんも先ほどお話になた、日本ならではの「ネット発」のヒット作が期待されるわけですか? 小室哲哉そうですね。音楽も含めて、次の世代のための環境作りをやっててあげないと日本のJ-POPは非常に難しい状況になると思います。良い楽曲もたくさんあるんですけどね…。僕も、Twitterとかで「これ良いですよ」って送ってもらったりして聞くと「かっこいい!」っていう作品も多くて、せっかくなら「世界に届けば良いのになって」って思うことがたくさんあるんです。ちょっと閉鎖的になっちゃってるんですね、ネットの世界はボーダレスなはずなのにね。なので、ネット発のヒット作も「もうひと枠」大きくならないとイケないですよね。 -その役目を担うのが小室さんだと? 小室哲哉担えることなら担って行きたいなと思います。みんなそろそろ、「案外伸びないな」って思いだしてると思うんですよね。ネット発の音楽も、最初は勢いがあって面白いなこれは、いけるなって思ってる方も多かったと思うんです。でも、ここ一年くらいで案外伸びないなってみんな思い始めている。それはストリーミングだったりのインフラの進化が遅いのと、ITで食べてる人たちが色々と譲らないっていうね(笑)。もっとみんなで仲良くやってくれればいいと思うんですよ。だから、僕が担うとしたら、そういう調整の役目ですね。音楽的なスタイルはもう自分の中では変わらないと思うんで。 -確かに、色々な調整をする際に、小室哲哉って名前はでかいですね。 小室哲哉僕の名前をブランドとして提案していって、使っていったら良いと思うんです。それで、セカンド、サードジェネレーションの人たちが、そのインフラやシステムを使って、すごい作品を出してくれたらいいなと思います。まあ、日本だけに限らず、全世界の音楽業界が悩んでると思います。ドクタードレくらいですよ、一人勝ちしているのは(笑)。なので、そういった中で、挑戦をしていけると面白くなるかなと自分では考えています。 【3ヶ月連続】TM NETWORK 30周年&小室さん誕おめ 小室哲哉がヒット曲を生演奏・TM NETWORK聞くならドワンゴジェイピーへ