布袋寅泰、光と音による魔法のロックショー
ワールドワイドな活動を視野に入れイギリスに移住した布袋寅泰が、新作アルバム『New Beginnings』を引っさげ、全国18公演となる日本公演「TOMOYASU HOTEI JAPAN TOUR 2014 – Into the Light – 」で、オーディエンスを熱狂させた。 新作アルバム『New Beginnings』で、布袋はギタリストに徹することで歌唱せず、敬愛するロックスター、イギー・ポップをヴォーカル(2曲)に迎えたことが話題となった。今年の布袋は、ザ・ローリング・ストーンズ日本公演へのゲスト出演のサプライズはもちろん、「モントルー・ジャズ・フェスティバル」など、世界各地でのフェス出演を経験。これまでの活動とは一線を画する展開をみせている。 年の瀬も押し迫った、11月30日(日)。ツアー千秋楽となった東京NHKホールには、開演前から布袋コールが鳴り響いていた。 バンドメンバーは、デヴィッド・ボウイ・バンドのドラマーでもある、しなやかなドラミングが野生的なザッカリー・アルフォード。ベーシストは、上原ひろみグループとしても活躍していた、超絶テクニカルなトニー・グレイ。キーボーディストには、布袋寅泰のクリエイティヴ・ワークの右腕である岸利至が参加している。 オープニングは、まばゆい白い光とともに『Captain Rock』を、クールなリズムを軸にした意外性あるアブストラクトなアレンジで披露。布袋はファッショナブルな海外アーティストの雰囲気を感じさせる、サングラスにブラックレザーなファッション、ギターはホワイトファルコンというスタイル。コアな音楽好きな一面を持つ布袋の素顔が垣間見え、自然体で肩の力が抜けたステージングとなった今回のコンサート・ツアー。これぞ一番観たかった、布袋のステージと感じたことを告白しよう。 リリース当時、オンワード樫山のCMに起用されたエッジーなナンバー『Materials』は、25年前に生み出されたソロデビュー・アルバム『GUITARHYTHM』に収録された楽曲だが、今の時代でも輝きが増しているニューウェーヴィーかつダークなロックチューンとして、オーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいく。 レッド・ツェッペリンを彷彿とさせる骨太なロックンロール『SPHINX』。そして、間奏で快楽ポイントの高いダブステップなフレーズを響かせた『Circus』など、新旧音楽シーンの歴史を飛び交う音楽的チャレンジが布袋の懐の広さであり、実験的精神を恐れないフットワークの軽さを再認識させてくれた。 MCでは、オーディエンスへ向けて「今日は最新の布袋を、ビートと光で体験して欲しい。目をつむって聴き入ってくれてもいい。自由に楽しんで欲しい。でも、一番嬉しいのはいっしょに踊ってくれることかな!」。まさに自信と余裕が感じ取れる言葉だ。 中盤からは、映画のサントラのように想像力を刺激してくれる新作アルバム『New Beginnings』を中心に、ドイツで開発された新型照明システムとともに、誰も観たことが無いサウンドとライティングの融合による魔法のようなステージが繰り広げられていく。 かつて、少年時代の布袋が影響を受けてきたロックスターのコンサートでは、サウンドはもちろんライティングによって、非日常的なゾクゾクする感動を与えられたという。そんなエモーショナルな感情を21世紀のテクノロジーを駆使して、ヴァーチャルではない、リアル3Dな可変照明システムとして表現を試みたのが今回のステージ演出だ。 ライブでの生演奏によるイメージを、まるで生き物のように鳥や波、時には幾何学模様など、様々な表情で立体的に表現していく照明システム。サウンドが超一流で素晴らしいのは当たり前。それに加え、ライティングの活用の仕方も、これまで観てきたどんなアーティストのコンサートよりも美しく、音楽コンサートとは、一期一会を焼き付けて“体験する”刹那的なアートなんだということを布袋は教えてくれた。 作り込まれたショーとは裏腹に、MCではユーモアあふれる親しみやすいトークで会場をなごませてくれるのも魅力だ。 今年出演した、世界三大ジャズフェスティバルの一つといわれ、完全アウェーであった「モントルー・ジャズ・フェスティバル」では、深夜に近い時間帯での出演で、当初は300人ぐらいしかオーディエンスがいなかったが、映画「キル・ビル」でお馴染みの『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』をプレイした結果、最終的には1500人以上も集まってきたというエピソードをMCで披露。 しかし、ライブが終わった後に現地のスタッフやオーディエンスから「お前素晴らしいよ! とくに「キル・ビル」のカバー最高だったよ、と言われました(苦笑)。では、東京の皆さんにも「キル・ビル」の世界一のカバーを!」と、ジョークとともに世界に誇る日本の名曲『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』をプレイ。 その後は、布袋モデル・ギターとともに、ライブでお馴染みとなったBOØWY時代のファンクチューン『BAD FEELING』から、ロックンロールな『C’MON EVERYBODY』、感情をアップリフトしてくれる布袋アンセムな『GLORIOUS DAYS』を立て続けにぶちかますことで、オーディエンスの熱狂が最高潮へヒートアップしていく。 布袋寅泰は25年前、当時27歳で日本ロックシーンの頂点へとのぼり詰めたロックバンド、BOØWY解散後の1988年に、初のソロアルバム『GUITARHYTHM』をリリースした。海外デビューを目的に意欲的な制作であったが、時代的に早すぎたこともあり、マーケティングやプロモーションなどうまくいかなかった過去がある。まだインターネットもYouTubeもiPhoneも無かった時代の話だ。 しかし、その後、日本国内での爆発的なブレイクの裏で、ドイツやデンマークの老舗ロックフェス『ロスキルド』へのフェス出演、アトランタ・オリンピック閉会式でのギタリストとしての参加や、映画「キル・ビル」への楽曲起用など、海外への夢の切符を入手してきた幸運の持ち主だ。そんな布袋が、海外での成功を夢見た新たなる一歩が新作アルバム『New Beginnings』であり、今回の意欲的なツアー「TOMOYASU HOTEI JAPAN TOUR 2014 – Into the Light – 」だったのである。 本編をやりきった満足感で、笑みを浮かべる布袋は、アンコール1曲目で、ロマンティックなダンスナンバー『Dancing with the moonlight』や、ファンへの感謝のメッセージとともに“俺たちのテーマソング”として、ファンの間で人気なメッセージ性の強い『LONELY☆WILD』を、シルバーに輝くゼマティスのギターでプレゼント。そして、コンサートのラストでは、最新の布袋の成果であるギターインストによる『Departure』が、きらびやかに開放的に奏でられ、会場がまばゆい光に包まれていく……。 光と音による魔法のようにファンタスティックなロックショーは、ツアーラストを迎えたが、布袋寅泰の海外へ向けた新たな展開はここからはじまっていく。そんな力強い決意を感じた一夜だった。TEXT:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)/PHOTO:山本倫子 HOTEI名曲高音質!ドワンゴジェイピー